街全体のサステナブル――木更津市が描く「オーガニックシティ」の未来
木更津市(千葉県)ーー1718ニホン探索(55/1,718)
生命の循環を感じれる「KURKKU FIELDS」
木更津はオーガニックシティを掲げて「サステナブル」な街づくりを目指している。
全国1,718 市町村を巡る「1718ニホン探索」の旅。今回私が訪れたのは、東京湾アクアラインを渡って房総半島に入った先にある玄関口の街、千葉県木更津市です。
実は、木更津市への訪問は今回の遠征の最終日ということもあり、私自身とても楽しみにしていました。なぜなら木更津市は、10年前の2016年から「オーガニックシティ木更津」を掲げて街づくりを進めているからです。私は2005年にユーグレナを創業し、20年間にわたり「人と地球を健康にする」という理念のもとでサステナブルな社会の実現を目指して走り続けてきました。だからこそ、行政がこれほど明確に「オーガニック」という旗印を掲げ、街全体をデザインしている取り組みには、並々ならぬ関心を抱いていたのです。
今回、木更津市役所のオーガニックシティ推進課をお尋ねし、ご担当者様にお話を伺うことができました。
訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。
アクアラインを抜けたら、そこは俺たちの Street. 懐かしい海の匂い、今夜もここで Meet. 東京湾をまたぐ赤い光の Bridge (アクアライン) 引き波に乗ってやってきたぜ、この Baseline 海ほたるで一息、缶コーヒー片手 見下ろす夜景はまるで宝石の仕掛け 太田山(おおたやま)のきみさらずタワーの上から 誓った愛は今も色褪せねえな 「何言ってんだっぺ」って笑うお前の声 木更津のストリート、今も走るぜ 赤い橋(中の島大橋)をおんぶして渡ったら 恋が叶うって噂、あんた知ってた? 潮干狩り、アサリ掘った 懐かしい日々 今はアウトレットでショッピング、お決まりのWeek 「そうんべ?」「だっぺ!」って言い合ってさ 都会の絵の具に染まんねえ、この純情 證誠寺(しょうじょうじ)の狸も踊り出すリズム うちらの歴史、ここに刻むイズム 恋の街、木更津! 潮風に吹かれて 変わる景色の中で、変わらないもの探して 遠くへ行ったって、戻る場所はここだっぺ! あんたの隣が、一番落ち着くっしょ! 夜空に弾ける(やっさいもっさい!) 魂の叫びを(これっきゃねえべ!) 港の灯りが照らす、うちらの Future Stage バーベキュー弁当(バー弁)かっこんでチャージ完了 チャーシュー弁当(チャー弁)も外せない、これが地元(ジモト)の王道! 祇園に清見台、岩根から太田 どこにいたって、繋がってるコール&レスポンス 「おめぇ、何してんだっぺ?」ってツレからのLINE 「今、駅西口、たぬきの前で Waiting time」 離れられるわけねぇべ、この街が Home town! 恋の街、木更津! 潮風に吹かれて 変わる景色の中で、変わらないもの探して 遠くへ行ったって、戻る場所はここだっぺ! あんたの隣が、一番落ち着くっしょ! 夜空に弾ける(やっさいもっさい!) 魂の叫びを(これっきゃねえべ!) 港の灯りが照らす、うちらの Future Stage 潮が引いても、うちらの愛は満ちたまま。 どこまでも続く、内房線のレールみたいに。 木更津、これからもずっと。Peace. (0438, Yeah...)
単なる有機農業に留まらない、サステナブルな街づくりのセンス
お話を伺って最初に感銘を受けたのは、木更津市が定義する「オーガニック」の概念の広さとそのセンスです。
「ここで言うオーガニックとは、単なる有機農業という意味に留まりません。人、自然、文化、歴史が調和し、無理なく発展していく『サステナブル(持続可能)』に近い概念として、街全体に掛け合わせているのです」
ご担当者様がそう語る通り、現代において「サステナブル」や「SDGs」という言葉はどこかありふれた、耳慣れたものになりつつあります。しかし、あえてそこに「オーガニック」というワーディングを応用し、街全体のライフスタイルやビジョンとして再編集した渡辺市長の施政方針には、経営者としても非常に高いセンスを感じます。
かつて私がアメリカに留学していた10代の頃、多民族社会の中で客観的に「日本の価値」を考えさせられました。四季折々の豊かな自然、心温かい人々、そして繊細なものづくりや食文化。日本には世界に誇るべき宝がたくさんあります。しかし、東京のような大都市で生活していると、自然のなさや人混みにどこか窮屈さを感じてしまうのも事実です。
木更津市は、アクアラインを使えば都心からすぐという抜群の立地を活かしつつ、ビルを乱立させるような無理な開発ではなく、自然と人間が調和した「無理のない繁栄」を目指しています。これが、都心の窮屈さから離れて豊かな生活を求める若い世代への強力なブランディングとなり、全国的な人口減少に反して、木更津市の人口は微増傾向にあるといいます。
海ほたる
三井アウトレットパーク木更津
コストコ日本本社
地域循環共生圏を描く、5つの柱と具体的なアクション
木更津市の取り組みは、決して言葉だけのスローガンではありません。2024年度から始まった新たな4年間の行動計画(アクションプラン)では、環境省が提唱する「地域循環共生圏」の考え方を導入し、5つの柱に紐づく18の具体的な取り組みを実践しています。
特に印象的だったのが「食(有機農業の推進)」の分野です。木更津市では学校給食において、市内で生産された有機米の提供100%を目指して取り組んでいます。有機米の導入は当然コスト(原価)が高くなりますが、その財政的負担を市民に負わせるのではなく、市がしっかりと予算を組んでサポートしているのです。子供たちの未来の健康に直結する食を、行政が主体となって支える姿勢には、深く共感させられました。
また、「再生可能エネルギーの活用」においては、2050年までの「ゼロカーボンシティ」実現に向けて、公共施設への太陽光パネル設置や市民への補助金制度を拡充しています。「里海の活用」として、埋め立てが進んだ東京湾において極めて貴重な東京湾最大級の自然干潟「盤洲(ばんず)干潟」の保全にも力を入れています。さらに、防災面でも「ファーストミッションボックス」という避難所開設指示書を配置し、市民同士が助け合える「共助」の仕組みを整えるなど、まさに街全体の営みをオーガニックに繋げています。
私が歩んできたユーグレナでも、2005年の創業当時は「ミドリムシで地球を救う」と言っても、周囲からは頭がおかしいのではないかと冷ややかな目を向けられたものでした。しかし、私たちはブレずに旗を立て続け、今ではマレーシアで大規模なバイオ燃料生産拠点を構築するまでに至っています。行政の仕事も全く同じです。首長が明確なコンセプトを立て、旗を掲げることで、そこに共感する民間企業や人々が集まり、新しい経済と文化が循環し始めるのです。
日本最大級の自然干潟「盤洲干潟」
道の駅 木更津うまくたの里
KURKKU FIELDSでは駆除した野獣を食す事が出来る
生命と自然の循環を肌で感じる、木更津の現場を歩く
インタビューを終えた後、私はこの「オーガニックシティ」のコンセプトがどのように具現化されているかを確かめるため、市内の3つのスポット――「kurkku fields(クルックフィールズ)」「道の駅 木更津うまくたの里」「盤洲干潟」へと足を運びました。
なかでも、音楽プロデューサーの小林武史氏が手がけるサステナブルファーム&パーク「kurkku fields」は、言葉を失うほど素晴らしい施設でした。
広大な敷地の中に広がる有機農場、微生物の力を使った水質浄化システム、太陽光発電、そしてアートと食の融合。そこには、まさに木更津市が目指す「自然と人間の調和」が完璧な形で表現されていました。
これまでは、子供を連れて千葉へ遊びに来る際も、テーマパークやアウトレットといった場所を選びがちで、日帰りで直帰してしまうことが多く、この素晴らしい取り組みに気づけなかった自分を少し反省しました。kurkku fieldsは、私の娘もぜひ連れてきて、本当の意味での「生命」「循環」「自然」を一緒に五感で考えたいと思える場所です。
行政が立てた「オーガニックシティ」という美しい旗のもとに、民間企業が呼応し、市民が一体となってサステナブルな未来を紡いでいる木更津市。
地方には、まだまだ世に知られるべき「隠れた宝」と、それを活かす大きな可能性が眠っています。木更津市が見せてくれた無理のない繁栄の姿は、これからの「地方発!日本再生」において、極めて重要なヒントになるに違いありません。私も「ニホンノチカラ」の新しい旅を通じて、こうした地域の輝きをさらに国内外へと発信し、日本が再び誇りを取り戻す原動力に変えていきます。
KURKKU FIELDSは、生命の循環を肌で感じれる体験型の施設で、宿泊施設も飲食店もあるため家族で泊まりがけで楽しめる施設になっています。
木更津市の情報まとめ
千葉県の中西部に位置する、人口約13.6万人の都市。東京湾アクアラインの着岸地であり、東京都心や羽田空港からのアクセスが抜群な房総半島の玄関口です。かつては木更津港を中心とした京葉工業地帯の一角として発展しましたが、近年は「オーガニックシティ木更津」を掲げ、人と自然が調和した持続可能な街づくりを推進しています。全国的な人口減少に反して人口が微増しており、都市の利便性と豊かな自然が融合した住みやすい街として若い世代からも注目を集めています。
産業:臨海部の工業地帯による製造業が盛んな一方、内陸部では温暖な気候を活かした農業が展開されています。また、大型アウトレットモールをはじめとする商業施設が集積し、房総観光の拠点としての商業・サービス業も発展しています。
文化・観光:東京湾内では極めて貴重な、日本最大級・東京湾最大の自然干潟である「盤洲干潟」が広がっています。また、小林武史氏がプロデュースするサステナブルファーム&パーク「kurkku fields」など、最先端の環境循環型観光スポットが整備されています。
グルメ:東京湾の恵みを受けた江戸前のアサリやハマグリなどの貝類、海苔の養殖が有名です。農業面では、ブランド米や、近年生産に力を入れている学校給食用の有機米、そして特産品のブルーベリーなどが広く知られています。
今回お話を伺った方
木更津市役所 オーガニックシティ推進課 木更津市が目指す「人と自然が調和した持続可能なまち(オーガニックシティ木更津)」の実現に向け、2016年(平成28年)の施策スタートとともに中心的な役割を担う専門部署。環境省が提唱する「地域循環共生圏」の考え方を取り入れたアクションプラン(行動計画)の策定をはじめ、毎年約3万人を動員する「オーガニックシティフェスティバル」の企画運営、学校給食への有機米100%導入推進、2050年までの「ゼロカーボンシティ」実現に向けた再生可能エネルギーの普及など、行政の枠を超えて市民や民間企業と連携しながら、街全体のサステナブルなブランディングと施策の実践を横断的に統括しています。
筆者プロフィール
福本 拓元(ふくもと たくゆき) 株式会社ニホンノチカラ 代表取締役。1975年愛媛県生まれ。18歳で渡米し、異文化の中で「日本の価値」を再認識。帰国後、株式会社ユーグレナの創業に参画し、取締役として東証一部(現プライム)上場に貢献。「ミドリムシで地球を救う」活動に20年捧げた後、2025年、原点である地方創生を目指し「ニホンノチカラ」を創業。全国1,718市町村を巡り、地方の宝を発掘する「1718ニホン探索」を継続中。

















