都会の利便性と豊かな自然が織りなす「調和の街」――千葉県袖ケ浦市で見た、選ばれる地方の解
袖ヶ浦市(千葉県)ーー1718ニホン探索(54/1,718)
JR内房線の「袖ヶ浦駅」
全国1,718の市町村を巡り、地域の首長や熱い想いを持った役所の方々を取材する「1718ニホン探索」。第54番目の訪問地として私が訪れたのは、千葉県の房総半島西部に位置する袖ケ浦(そでがうら)市です。
今回お話を伺ったのは、同市シティプロモーション推進課のご担当者様。生まれも育ちも袖ケ浦という、地元愛に満ちあふれた方です。かつて私がハイクロレラ時代に車一台で西日本全域を回り、地方の厳しい現実と可能性の双方を肌で感じた経験、そしてアメリカ留学時代に気づかされた「日本の価値」という視点を胸に、この街が持つ「人を惹きつける力」をじっくりと紐解いてきました。
訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。
Yeah... Ah... 東京湾の最前線、進化を止めない内房の牙 聞こえるか? 工場の鼓動と、新しい街の足音が ただのベッドタウンじゃねぇんだっぺ? 伝統と未来が交差する、ここがエネルギーの源泉(みなもと)だ! Come on!! コンビナートの煙突がそびえ立つ空 その麓(ふもと)、変わる景色、広がるグラウンド 袖ケ浦駅の海側、区画の整備 商業施設に住居、立ち並ぶ新世紀! 「人が増える、街が躍る」劇的な変化 だけど忘れてねぇ、おんらのプライドの着火 ガスのプラント、石油の精製、火力発電 日本の「エネルギー」背負って立つ最前線! 夜になれば輝く「工場夜景」のライン 絶やすんじゃねぇぞ、この命のライフライン! 新しい住民も、昔からのダチも 全員巻き込んで、火を灯すこの街に! 燃え上がれ 袖ケ浦の青い炎(Blue Flame) 進化する街から明日を動かせ(Change the game) 昔からの海と煙突、新しい街並み 今じゃすべてが俺たちの魂(Soul)の原点、結束! 「がんばんべぇ!」声合わせて叫ぶんだっぺ この熱い想い、誰にも消せやしねぇ Industrial Fire, 袖ケ浦 Pride! どこにいたって、俺らはここに帰るのさ! 工業地帯を抜ければ広がるGreen 「東京ドイツ村」のイルミネーション、まるでDream 袖ケ浦公園、春の桜と花菖蒲 自然の恵みが、市民の生活を豊かに変える そして語り継ぐ、30年の歴史 子供たちが挑む「わんぱくクエスト」のキセキ! 泥にまみれ、仲間と壁を乗り越え 大きく育つ、この街の未来の宝 だから選ばれる「子育てのセカンドステージ」 レタスに大根、落花生(ピーナッツ)噛み締め 「おめぇの子供も、ここで育てっべ?」って 胸を張って言える、この場所がフッド(地元)だべ! じいちゃんが建てた、この街の土台 親父が守った、産業の未来 そして俺たちが繋ぐ、新しい時代のステージ 冷めた世界に、熱い一撃をInject(注入)… Yeah, 袖ケ浦! 変化を恐れない、内房の誇り エネルギーも未来も、満タンだっぺ? 行くべぇ、どこまでも! ガスの炎のように、青く、熱く、気高く… 袖ケ浦 Pride... Never Die... Peace out!!
「アクアライン経済圏」がもたらす圧倒的な近さと、移住者のリアル
対談の冒頭、私はまず袖ケ浦市の人口動向について尋ねました。日本全体が深刻な少子高齢化と地方の人口減少に直面する中、驚くべきことに袖ケ浦市の人口はここ十数年、右肩上がりで増加を続けています。特に近年の伸びは目を見張るものがあります。
「最大の要因は、アクアラインを通じた都内へのアクセスの良さ、そしてコロナ禍によるテレワークの普及です」
ご担当者様がそう語る通り、袖ケ浦バスターミナルを起点にすれば、なんと羽田空港までわずか22分でアクセスが可能です。都心の品川や新宿、横浜へも高速バスでダイレクトに繋がります。「都心で仕事を続けながら、地価の安い袖ケ浦に広い庭付きの一戸建てを構える」というライフスタイルが、現役世代のファミリー層にとって現実的かつ非常に魅力的なモデルケースになっているのです。
実際に、全国を飛び回るプロ野球選手や、車で多くの機材を運ぶビデオグラファーといったクリエイター層からも、「羽田や都心に圧倒的に近い拠点」として選ばれているといいます。私の元部下たちもそうですが、現在の現役世代は、フルテレワークを機に「住宅コストを抑えつつ、週末を豊かに過ごせる環境」をシビアに求めています。そのニーズに、袖ケ浦市は見事に合致しているのです。
袖ヶ浦駅海側の区画整理により、商業施設、住宅等が整備され生活利便性が高いエリアに成長。
海の工業、駅前の住宅地、内陸の酪農と自然。完璧な三位一体の調和
私が袖ケ浦市の地図を見て感銘を受けたのは、その卓越した「街の構造のバランス」です。
西側の海沿いには京浜工業地帯の一角が広がり、石油や電気といったエネルギー産業の巨大企業が立地しています。ここは都心の膨大なエネルギー需要を支える「経済の基盤」です。一方で、JR袖ケ浦駅や長浦駅周辺の居住エリアは、平成30年から令和元年前後にかけて急速に区画整理が進んだ新しい街並み。ご担当者様によると「以前は一面の田んぼで、うっそうとしていた場所」だそうですが、今では美しく洗練された住宅地が広がり、瞬く間に人が定着しました。
さらに一歩内陸へ進むと、広大な田園地帯や酪農地、美しいゴルフ場といった「日本の原風景」とも言える豊かな大自然が広がっています。
近隣の木更津市も含め、近年はアウトレットモールやコストコの影響、さらには企業の日本本社移転なども相次ぎ、一帯が完全に「アクアライン経済圏」として躍動しています。産業で財政を支え、計画的な住宅地で暮らしを担保し、豊かな自然で心を癒やす。この「調和の取れた街」の美しさは、まさに地方創生を目指す私が理想とする形の一つです。
関東のエネルギーを支える袖ヶ浦の工業地帯
内陸部は森林や田園など緑が広がっている
30年続く独自教育「わんぱくクエスト」に宿る、街のチカラ
袖ケ浦市の強みは、交通の利便性や産業といったハード面だけではありません。何より私が感銘を受けたのは、市教育委員会が主体となり、30年以上も継続している独自の体験型教育イベント「わんぱくクエスト」の存在です。
これは、市内の小学生が学年混合の5人1組で班を作り、南房総などの離れた土地に突如ポンと置かれ、1週間かけて自力で袖ケ浦まで帰ってくるという、現代では信じられないほどタフでダイナミックな事業です。
「宿泊場所のホテルなんてありませんから、自分たちで地元の民家に交渉して『庭にテントを張らせてください』とお願いするんです」
ご担当者様からその仕組みを聞いた時、私は鳥肌が立ちました。年齢の異なる仲間と協力し、見知らぬ大人に頭を下げ、知恵を絞って生き抜く。私の10代のアメリカ留学も、親からの仕送りが止まった極限状態からのスタートでしたが、あの時のハングリー精神こそが私の経営者としての原点になりました。子供のうちにこれほど泥臭く、逞しい経験ができる教育環境が行政主体で用意されている。これこそ究極の教育です。
実際、この教育方針に惚れ込んで近隣から移住してくる世帯も多く、この過酷な旅を生き抜いた子供たちが大人になり、「今度は自分がこの街を支えたい」とUターンして市職員になるケースも少なくないそうです。教育が、街の持続可能なサイクルを生み出している素晴らしい事例です。
私も大好きな「東京ドイツ村」と、次なる探索への期待
対談中、お互いの共通の話題として最も盛り上がったのが、内陸部にある有名スポット「東京ドイツ村」でした。実は、私の娘が「じいじの森」やモノづくり体験、パットゴルフが大好きで、豊洲の自宅からアクアラインを渡って2〜3ヶ月に一回は通うほどの「超ヘビーユーザー」なのです。
世間ではイルミネーションの印象が強いドイツ村ですが、市民の皆さんは5,000円の年間パスポートを活用し、四季折々の花々を愛で、日常的に子供をのびのびと遊ばせる「最高の庭」として活用しています。
対談後、私はご担当者様からおすすめいただいた2つの宿題を実行に移しました。まずは、市内の酪農文化から生まれたご当地グルメ、牛乳を使った白いスープの「ホワイトガウラーメン」を実食。まろやかなコクがありながらも、驚くほど箸が進むその奥深い味わいに、地域の食文化が持つ「再編集の可能性」のヒントを得ました。
続いて訪れたのは、梅雨の風情が美しく広がる「袖ケ浦公園」。ちょうどシーズンを迎えた鮮やかな「花菖蒲」が、紫や白のグラデーションで園内を彩り、県外からの観光客や福祉施設のバスで賑わっていました。
都会のスピード感をすぐそばに感じながら、子供たちが泥だらけになって逞しく育ち、大人は四季の美しさに癒やされる。袖ケ浦市には、これからの日本が目指すべき「豊かな地方の解」が、確かに存在していました。
東京ドイツ村、袖ヶ浦公園等、緑や花が溢れる憩いの場が沢山あるのも袖ヶ浦の魅力の一つ
袖ケ浦市の情報まとめ
千葉県の中西部に位置する、人口約6.5万人の都市。東京湾に面した西側の臨海部には京浜工業地帯のエネルギー産業が発展し、経済と雇用を支える一方、内陸部には広大な田園や酪農地帯、名門ゴルフ場が広がる「自然と産業、居住が調和した街」である。東京湾アクアラインを介した都心や羽田空港への圧倒的なアクセスの良さと、官民一体となった手厚い子育て・教育環境が評価され、近年のコロナ禍以降も現役ファミリー層を中心に人口増加が続いている。
産業: 臨海部には、電気や石油などの都内への供給を担うエネルギー関連企業が多数立地。内陸部では農業のほか、県内トップクラスの規模を誇る酪農が盛んに行われている。
文化・観光: 四季折々の花やイルミネーション、広大な芝生広場で知られ、市民の憩いの場でもある「東京ドイツ村」や、梅雨期に美しい花しょうぶが咲き誇る「袖ケ浦公園」が有名。
グルメ: 盛んな酪農を背景に、スープに牛乳を使用した独自の白いご当地ラーメン「ホワイトガウラーメン」があり、市内の中華料理店等を中心に広く愛されている。
今回お話を伺った方
袖ケ浦市役所 シティプロモーション推進課 ご担当者様 千葉県袖ケ浦市生まれ、袖ケ浦市育ち。地元の小・中学校、そして市内唯一の高校である袖ケ浦高校を卒業。生粋の「袖ケ浦っ子」として育ったからこその深い地域愛と、自身のリアルな育児・生活経験をもとに、街の魅力をソフト・ハードの両面から国内外へ発信するシティープロモーション業務に情熱を注いでいる。
筆者プロフィール
福本 拓元(ふくもと たくゆき) 株式会社ニホンノチカラ 代表取締役。1975年愛媛県生まれ。18歳で渡米し、異文化の中で「日本の価値」を再認識。帰国後、株式会社ユーグレナの創業に参画し、取締役として東証一部(現プライム)上場に貢献。「ミドリムシで地球を救う」活動に20年捧げた後、2025年、原点である地方創生を目指し「ニホンノチカラ」を創業。全国1,718市町村を巡り、地方の宝を発掘する「1718ニホン探索」を継続中。










