規制緩和と起業家精神で進化を続ける「地方都市の雄」福岡市。都市の成長と生活の質の好循環を肌で感じた一日

福岡市(福岡県)ーー1718ニホン探索(68/1,718)

天神ビッグバンにより盛り上がる「天神の街」

「博多コネクティッド」により再開発が進む「博多駅」周辺

夜の中洲

1,718ある全国の市町村を巡る私の旅も、今回で68番目の訪問地を迎えました。訪れたのは、現在「天神ビッグバン」をはじめとする大規模な再開発で凄まじい活気を見せ、地方都市の雄として日本全体を牽引している福岡県福岡市です。

これまでユーグレナの創業後の活動や愛媛時代の営業活動で何度も訪れた馴染み深い街ですが、現在の福岡市が放つエネルギーは、過去のそれとは明らかに異なっています。今回は「天神ビッグバンによる都市のアップデート」と「国家戦略特区を活かしたスタートアップ戦略」という、福岡市の成長を支える二大テーマについてお話を伺うため、福岡市役所を訪問しました。

今回お話を伺わせていただいたのは、都心創生部の天神ビッグバン担当課長と、創業推進部のスタートアップ担当課長のお二人です。その他、企画調整部で地方創生全体を管掌されている皆様にも同席していただき、官民連携がもたらす地方創生のリアルについて、非常に濃密で熱いディスカッションを行うことができました。

訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。

(Yeah, Check it out, Check it out)
最先端の特区、加速する街、FUKUOKA CITY
(すいとうよ、この街が)
準備はよかね? 時代の最前線、ここからぶち抜くバイ!
Let's go!

ビルは高くなり、未来は拓く「天神ビッグバン」のミラクル
国家戦略特区、スタートアップ、若き才能が仕掛けるサイクル
古い殻を「破(は)る」、進化を「図(は)る」
世界中がこの街に目を「張(は)る」
アジアの玄関口、飛び立つスカイ
「なんしよーと?」って迷っとる暇はなかバイ!
ビルの隙間から覗くブルー、限界超えてくニューウェーブ

空港から地下鉄、乗ればすぐそこ(博多駅!)
天神、中洲、回るサイクル、マジで近すぎん?(奇跡!)
ギュッと詰まったコンパクトシティ、ストレスゼロで歩く道
仕事終わりに「なしか?」って集まり、屋台の灯りに癒やされにいくと
ラーメン、もつ鍋、焼き鳥の皮、お腹いっぱいで「もう食べれんバイ」
でも別腹の明太子、この街の魅力、底なしっちゃんね!

勢いは止まらん、博多のソウル(Yeah!)
うちの心も、あんたにフォーカス(Ah!)
どんたく、山笠、滾(たぎ)る血潮、FUKUOKAナンバーワン!
「ちかっぱ」イケてるこの街のバイブス
「ばり」好きっちゃ、この胸のサイレン
どこにも負けん、輝く未来、この福岡(ここ)から始めよう!

中洲のネオンが川面に揺れる、大人たちのドラマが暮れる
那珂川(なかがわ)沿い、風が通り抜けてく、うちの気持ちも熱うなってく
地方都市の枠、とっくに超えた、俺たちが日本のトップランナー
離れられんっちゃん、この街がおるけん、うちらはどこまでも飛べるバイ!

勢いは止まらん、博多のソウル
うちの心も、あんたにフォーカス
どんたく、山笠、滾る血潮、FUKUOKAナンバーワン!
「ちかっぱ」イケてるこの街のバイブス
「ばり」好きっちゃ、この胸のサイレン
どこにも負けん、輝く未来、この福岡から始めよう!

福岡、ばり好いとーよ。
これが俺たちの街。Fuk City, Standard.
終わりなき進化、Next stageへ。

圧倒的な「コンパクトシティ」の優位性

市役所に到着し、まずは福岡市が持つ独自の立地特性について改めてレクチャーを受けました。 福岡市は東アジアの主要都市に極めて近く、東京や上海まで約1,000km圏内、大阪やソウルまでは約500km圏内という、古くから大陸との交易拠点として栄えた地理的優位性を持っています。現在も福岡空港には国際線25路線が就航(2025年8月時点)し、博多港と合わせて年間約2,900万人もの人々が往来しているとのこと。陸の玄関口である博多駅も1日46万人が利用しています。

何より素晴らしいのは、これら主要なインフラ(空港、港、鉄道)が、都心部の半径2.5km圏内にすべてコンパクトに集積している点です。博多駅から天神までは地下鉄でわずか数分、空港からも10分強でアクセスできる利便性は、世界中のどの主要都市と比較しても類を見ません。

しかし、この圧倒的な利便性が、一方で大きな課題を生んでいました。需要が高まりすぎた結果、オフィスの空室率は一時1.2%まで低下し、「福岡に進出したくてもオフィスがない」という深刻な供給不足に陥っていたのです。さらにホテルの稼働率も約80%と高止まりし、築50年を超える旧耐震基準のビルの更新期が一斉に重なるという、都市の機能不全を招きかねない転換期を迎えていました。

空港が街の近くにある利便性の反面、ビルの高さ規定により大型ビルが建てられない事もあり、空室率が極限まで低くなり新たな入居が難しい状態に陥っていた天神周辺。

「天神ビッグバン」が証明した、リーダーシップと規制緩和の力

この状況を劇的に打破したのが、高島市長の強力なリーダーシップによる「国家戦略特区」を活用した規制緩和でした。

福岡市において、ビルの建て替えを阻む最大の障壁は「航空法による高さ制限」でした。空港が市街地に極めて近いため、天神明治通り地区ではこれまで約67mほどの高さしか許されていなかったのです。これでは建て替えても床面積が増えず、民間事業者は採算が合わないため、二の足を踏み続けていました。

行政側がエリア単位での緩和を国に働きかけ、天神明治通り地区では最大115mまでの高さを緩和できるようになりました。これに市独自の容積率緩和制度を組み合わせたことで、民間投資が一気に呼び込まれたのです。これが、2015年に始動した「天神ビッグバン」、そして2019年に始動した博多駅周辺の「博多コネクティッド」です。

天神明治通り地区では2026年末までに約90棟、博多地区でも2028年末までに約30棟のビルが竣工する見込みとなっています。単に高層ビルを建てるだけでなく、例えば大名ガーデンシティでは、ビルの足元には3,000平米規模の広場(オープンスペース)や緑化、パブリックアートを配置する等、誰もが憩える空間を設計している点が非常に合理的です。天神ビッグバンによる経済波及効果は、当初予想の8,500億円を大きく上回り、現在は1兆8,900億円と試算されていると聞き、鳥肌が立ちました。想定の2倍以上の経済効果を生み出すそのスピード感と規模感は、一つの「超優良企業」を見ているかのようです。

同席した職員の方が「自分が若い頃に見ていた風景が、毎日のように劇的に変わっていく。まちが生まれ変わっていることを肌で感じます」と笑顔で語ってくれたのが非常に印象的でした。これこそが、行政マンにとっても最高の醍醐味であり、街全体が前を向いている証拠だと強く感じました。

那珂川の向こうに見える中洲の街

天神駅すぐ近くにある警固神社

旧福岡県公会堂貴賓館

「支店経済からの脱却」を目指す、スタートアップ都市の覚悟

続いてお話を伺ったのが、福岡市のもう一つのエンジンである「スタートアップ戦略」です。

福岡市は2012年に「スタートアップ都市ふくおか宣言」を発表しました。当時、まだ日本ではなじみの薄かった「スタートアップ」という言葉をいち早く掲げ、米国シアトルをモデルに、若者の起業家精神を爆発させる仕掛けを作ってきたのです。

担当課長が熱を込めて語ってくれたのは、「支店経済からの脱却」という地方都市の本質的な課題でした。 「どれだけ大企業の支店を誘致しても、本社が東京や大阪にあれば、高度な人材や富は最終的に中央へ流れていってしまう。ゼロから地域で企業を生み出し、育てるエコシステムを作らなければ、地方の真の自立はない」

その象徴となる拠点が、今回取材後に案内していただいた官民共同働型施設「福岡グロースネクスト(FGN)」です。統廃合となった旧大名小学校の跡地を活用し、起業の相談窓口やインキュベーション機能を提供しています。この取り組みの結果、当初は年間約20社程度だった創業数が、直近では年間約250社(令和7年度見込み)へと10倍以上に急増したというから驚きです。

さらに2024年からの第3期では、「時価総額100億円の企業を10社生み出す」という極めて具体的かつ高いミッションを掲げ、選抜された10社に対して「ハイグロースプログラム」による集中支援を行っています。

旧大名小学校をリノベーションした「福岡グロースネクスト(fgn)」

FGNと福岡大名ガーデンシティの視察で見えた、コミュニティの価値

インタビューの後、実際にfgnと、隣接する「福岡大名ガーデンシティ」を視察しました。

fgnの建物内には、夜遅くまで起業家や投資家が集う「awabar」が併設されており、時には高島市長もフラッと現れて車座で議論を交わすことがあるそうです。この「距離の近さ」と「密度の濃いコミュニティ」こそが、東京の熾烈な競争環境にはない、福岡ならではの最大の強みです。

また、福岡大名ガーデンシティの敷地内にある3,000平米の広大な人工芝広場では、平日の昼間にもかかわらず、近くのオフィスで働く人々や、学生、地域住民が心地よいビルの日陰に座って思い思いに過ごしていました。かつての小学校の校庭が、最先端のビジネスビルと融合し、市民全員に開放された豊かな空間へと生まれ変わっている。都市の成長が、確実に「市民の生活の質の向上」へと還元されている現場を、この目でしっかりと確かめることができました。

fgnの隣にある大名ガーデンシティ

大名からほど近い場所にある「大濠公園」

地方創生の未来:福岡をロールモデルに、全国の地域へ

もちろん、福岡市ほどの勢いがある街でも課題はあります。ユニコーン企業(時価総額1,000億円以上の未上場企業)の多くが依然として東京に一極集中している現状があり、地方における大規模な資金調達や、CSO(最高戦略責任者)などの高度経営人材の確保にはまだ壁があるとのこと。

だからこそ、私たちニホンノチカラが推進する「Local Unicorn(ローカルユニコーン)」や「KAKEHASHI」のビジネスモデル、そして私が培ってきたベンチャー経営の知見を、この福岡の熱いエコシステムと掛け合わせることで、何か大きな化学反応を起こせるのではないかと、強い手応えを感じました。10月に福岡で開催されるスタートアップイベント「ラーメンテック(RAMEN TECH)」へも是非参加してみたいと思いました。

地方創生において、リーダーの存在がいかに決定的な違いを生むか。そして、明確なビジョンに基づいた規制緩和とコミュニティ作りが、どれほど街を強くするか。福岡市が体現しているこの素晴らしいロールモデルを日本全国の1,718自治体へと波及させ、連鎖させていくこと。それこそが、私たちが目指す「地方発!日本再生」への確かな道筋であると確信した、極めて有意義な訪問となりました。

中洲の屋台

福岡の街が熱くなる「博多祇園山笠」

福岡市の情報まとめ

福岡県の西部に位置する、人口約167万人の政令指定都市。九州の政治・経済・文化・ファッションの中心地であり、東アジアの主要都市に近い地理的優位性を活かして、古くから交易の拠点として発展を遂げてきた。近年は大規模な再開発プロジェクト「天神ビッグバン」や「博多コネクティッド」、積極的なスタートアップ支援により、日本国内で最も活気のある地方都市として高い注目を集めている。

産業: 卸売業・小売業、サービス業などの第三次産業が約9割を占める商業都市。近年は、IT・クリエイティブ分野のベンチャー企業やスタートアップの創出、高付加価値なオフィスの整備による企業誘致に注力している。

文化・観光: 日本最古の博多織や博多人形などの伝統工芸、日本三大祇園祭の一つに数えられる「博多祇園山笠」などの熱い祭りが息づく。若者が集う大名エリアや、水辺の賑わいを見せるウォーターフロントなど、新旧の魅力が融合する。

グルメ: 全国的な知名度を誇る「博多ラーメン(とんこつラーメン)」をはじめ、濃厚な「もつ鍋」、「水炊き」、新鮮な玄界灘の海の幸が楽しめる。天神や中洲、長浜などに並ぶ、独特の「屋台文化」は観光客に絶大な人気を誇る。

今回お話を伺った方

都心創生部・創業推進部の皆様 今回お話を伺ったのは、福岡市の心臓部とも言える「都市の成長」を最前線で牽引する二つの重要部門の責任者の方々です。都心創生部の天神ビッグバン担当課長は、航空法や容積率の規制緩和を武器に、民間投資を呼び込みながら安全で魅力的な先進的ビルへの建て替えをワンストップで誘導する街づくりのスペシャリスト。創業推進部のスタートアップ担当課長は、「スタートアップ都市福岡」の拠点である「福岡グロースネクスト(fgn)」を軸に、年間創業数を10倍に成長させ、現在は「時価総額100億円企業を10社創出する」という高い目標に向けて地場エコシステムを指揮する起業支援のフロントランナーです。行政の枠にとらわれず、熱意を持って民間と伴走する姿勢が、福岡市の躍進を支えています。

筆者プロフィール

福本 拓元(ふくもと たくゆき) 株式会社ニホンノチカラ 代表取締役。1975年愛媛県生まれ。18歳で渡米し、異文化の中で「日本の価値」を再認識。帰国後、株式会社ユーグレナの創業に参画し、取締役として東証一部(現プライム)上場に貢献。「ミドリムシで地球を救う」活動に20年捧げた後、2025年、原点である地方創生を目指し「ニホンノチカラ」を創業。全国1,718市町村を巡り、地方の宝を発掘する「1718ニホン探索」を継続中。