官民が紡ぐ循環型社会の理想郷――「エコロジータウン」愛媛県内子町が示す解
内子町(愛媛県)ーー1718ニホン探索(71/1,718)
重要文化財「上芳我家住宅」
内子バイオマス発電所
地方の原風景と環境施策が交差する町へ
「1718ニホン探索」の旅も71番目の訪問地を迎えた。最初の訪問地であった地元・愛媛県新居浜市以来となる、我が故郷・愛媛県での探索である。今回訪れたのは、愛媛県の中南部に位置する「内子町(うちこちょう)」だ。
内子町は「きらりと光るエコロジータウン内子」というキャッチコピーを掲げ、環境保全と地域経済を両立させた先進的な町づくりで全国的に知られている。元々、江戸から明治期にかけて木蝋(もくろう)や和紙で栄えた歴史ある商家群の「町並み保存」で有名な観光地でもあるが、単なる景観保護にとどまらず、行政と民間が強力にタッグを組み、実効性の高い循環型社会を構築している点に、かねてより強い関心を抱いていた。
訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。
Yeah… 愛媛、内子 Town… 木蝋(もくろう)の灯火(ともしび)から繋ぐFuture Listen to this… Yo! 白壁の街並み 八日市・護国(ごこく) タイムスリップしたような風が吹き抜く 木蝋と製紙で栄えた歴史 先人の知恵が今も息づき 内子座の舞台 響く歌舞伎の意気地 古いからイイんじゃない 守り抜く意志! 歩く商いと暮らしの博物館 昔と未来を紡ぐこのクラフト感 小田川の清流 せせらぎがBGM ここで生まれ育った誇りがDM(Direct Message) よそ者も町民も みんな集まりんさい 温かい笑顔で「よう来たね」って迎えたい 緑豊かな ECOLOGY TOWN! 伝統と自然が交差する Town! 木漏れ日を浴びて 風に乗る Flow 内子のプライド どこまでも Go! 「来とうない(行きたくない)なら、一回来てみんかい!」 心に灯る明かり 消えやせんけん! 自然と共に生きる これがStyle 地球に優しく 未来へSmile 見ろよバイオマス発電のENERGY 地域の資源でつくるシナジー 町内全世帯の50%の電力 自給自足の精神で挑む全力! 持続可能な街 オレたちの誇り クリーンな風が払う 街の埃(ほこり) 腹が減ったら内子豚にじゃばら 旬のぶどうにナシ 頬張りな自慢の宝 道の駅「フレッシュパークからり」で乾杯 フレッシュな野菜と笑顔が満載! 美味いもん食うたら「がいに(すごく)」元気になるけん この街の愛はどこよりも深いけん 屋根付橋(田丸橋)を渡る夕暮れ 移り行く季節 心を委ね 古い街並みと 新しいエネルギー 守るべきものと 創るシナジー ずっと、ずっと、この先も変わらず… この街を愛し続けるけん。 緑豊かな ECOLOGY TOWN! 伝統と自然が交差する Town! 木漏れ日を浴びて 風に乗る Flow 内子のプライド どこまでも Go! 「来とうない(行きたくない)なら、一回来てみんかい!」 心に灯る明かり 消えやせんけん! エコロジーと歴史の街、内子… バイオマスから照らす未来… 古民家の温もり… ほっこりしていきんさい。 Peace… 内子Town, Forever.
昭和の「町並み保存」から始まった循環の思想
まず、内子町役場の環境政策室を訪ね、町の環境政策の真髄について室長にお話を伺った。
驚かされたのは、このエコロジータウンの原点が昭和50年代に始まった「町並み保存活動」にあるということだ。当時から「中心部の街が栄えるためには、それを取り巻く町並みや豊かな自然景観の維持が不可欠である」という思想が根底にあったという。景観保全と環境保護は一体であり、それがやがて農産物直売所「内子フレッシュパークからり」に代表される農業の六次産業化へとつながり、環境重視の姿勢が町全体に定着していった。
約20年前の市町村合併により、広大な森林を抱える小田地区などが加わると、町の面積の約8割が山林となった。これを受け、町は「バイオマスタウン構想」を策定。さらに、納豆菌や糖蜜などを原料とした環境浄化微生物「えひめAI-1(アイイチ)」を生ゴミの分別回収に導入し、悪臭防止や分解促進を図りながら、堆肥センターで高品質な有機堆肥として農地に還元する仕組みを整えた。
さらに特筆すべきは、教育と組織の仕組みだ。未就学児から大人まで切れ目なく環境意識を育む持続可能な教育(ESD)を20年近く継続し、自治体向け環境マネジメントシステム「RAS」を取り入れることで、一過性のブームに終わらせない持続可能な体制を築いている。
八日町護国の街並み保存地区
飛び込み訪問で触れた、民間主導バイオマス発電の衝撃
役場での取材中、特に私の起業家魂を揺さぶったのが、町内の林業廃材を活用した「内子バイオマス発電所」の存在だった。なんと、町内2箇所のバイオマス発電所で、町全体の全世帯の約50%に相当する電力を生み出しているというのだ。しかも、行政からの出資を一切受けず、100%民間資本で運営されているという。
いても立ってもいられなくなった私は、役場での取材後にその発電所へ直接飛び込み訪問を行った。
幸運にも、運営元である有限会社内藤鋼業の代表・内藤昌典社長がオフィスにおられ、突撃取材にもかかわらず温かく迎え入れてくださった。内藤社長直々に事務所にて工場についてご説明いただき、そのダイナミックな仕組みに圧倒された。
隣接するペレット工場で、町内の林業で発生する間伐材などの未利用材(全体の約25%)を乾燥・加工してペレット化し、それを燃やしたガスで発電する。さらに、発電の過程で生じた「炭」すら無駄にせず、土壌の微生物環境を整える農地用資材(堆肥への混合)として再利用しているという。
「山を肥やし、地域でエネルギーを回し、最後に土へ返す」――まさにエコロジータウン内子を象徴する、完璧な地域循環型モデルがそこにあった。
内子バイオマス発電所に隣接する内藤鋼業のペレット工場(左)と、廃材の加工過程で出来る物質(右)。電力を作る過程で最終的に出てくる灰も農地の土壌改良として有効活用している。
「日本の宝」を世界へ解き放つために
私はかつてアメリカへ留学した際、多民族社会の中で日本が誇る美しい自然、繊細な技術、人々の温かさという「日本の価値」を強く再認識した。同時に、ユーグレナというバイオマス企業での20年間を通じて、サステナブルな資源がいかに人々と地球を救うかを追求してきた。
内子町で目撃したのは、豊かな森林資源と歴史的景観という「地域の宝」を、行政の理念と民間の力強い事業化能力によって、見事なエネルギー循環・経済循環へと昇華させた姿だ。
地方には、まだまだ世界に誇るべき潜在能力が眠っている。内子町のような官民連携の知恵と熱量こそが、これからの日本を再生する原動力になると確信した。お忙しい中、貴重なお話を聞かせてくださった内子町環境政策室室長、そして飛び込み訪問を快く受け入れてくださった内藤昌典社長に、心より感謝申し上げます。
現在改修工事中の「内子座」*2028年完成予定
内子・歴史民俗資料館「商いと暮らし博物館」
石畳清流園の水車
「内子フレッシュパークからり」の横を流れる小田川
内子町の情報まとめ
愛媛県の中南部に位置する、人口約1万4000人の町。江戸から明治期にかけて木蝋や和紙の生産で栄え、白壁の町並みが今も残る。2005年に旧内子町、五十崎町、小田町が合併し、広大な森林資源を有する自然豊かな地域となった。昭和50年代からの景観保全を原点に、バイオマスエネルギーの活用や環境教育を推進する「エコロジータウン」として全国的に知られている。
産業:林業、農業(ブドウ・ナシ・柿などの果樹栽培や野菜)、観光業、木材加工・エネルギー事業が盛ん。
文化・観光:「八日市・護国町並み保存地区」、木造2階建ての歌舞伎劇場「内子座」、道の駅「内子フレッシュパークからり」、小田深山渓谷。
グルメ:柔らかい手打ち麺を甘じょっぱい出汁で食べる郷土料理「小田のたらいうどん」、ブランド豚「内子豚」、新鮮な地元農産物や果物。
今回お話を伺った方
内藤 昌典(ないとう まさのり)氏 有限会社内藤鋼業 代表取締役 / 内子バイオマス発電所 代表。 地元内子町の林業廃材・未利用材に着目し、100%民間資本によるバイオマス発電事業および木質ペレット製造事業を立ち上げる。地域の森林資源をエネルギーへと変換し、発生した炭を農地に還元させる資源循環型ビジネスを確立。内子町のエコロジータウン施策を民間から力強く牽引している。
内子町役場 環境政策室長 内子町の環境行政を推進するキーマン。「きらりと光るエコロジータウン内子」のキャッチコピーのもと、伝統的な「町並み保存」の歴史を背景とした景観保全、環境浄化微生物「えひめAI-1」を活用した生ゴミ堆肥化、自治体環境マネジメント「RAS」、20年にわたるESD(持続可能な開発のための教育)など、官民連携・住民参加型の環境施策の取りまとめを担う。
筆者プロフィール
福本 拓元(ふくもと たくゆき) 株式会社ニホンノチカラ 代表取締役。1975年愛媛県生まれ。18歳で渡米し、異文化の中で「日本の価値」を再認識。帰国後、株式会社ユーグレナの創業に参画し、取締役として東証一部(現プライム)上場に貢献。「ミドリムシで地球を救う」活動に20年捧げた後、2025年、原点である地方創生を目指し「ニホンノチカラ」を創業。全国1,718市町村を巡り、地方の宝を発掘する「1718ニホン探索」を継続中。












