湘南の西端、五感をひらくコンパクトな楽園

二宮町(神奈川県)——1718ニホン探索(14/1,718)

西湘のコンパクトタウン「二宮町」

「本当にここは東京から1時間の場所なのだろうか」

町に着き、吾妻山公園へと向かう階段を一歩ずつ登りながら、私はそんなことを考えていました。眼下に広がる相模湾の深い青、そして斜面を黄色く染め上げる菜の花の絨毯。鼻をくすぐる潮風の香りと、冬の陽光の温かさ。五感がいきなり全開になるような感覚。それが、神奈川県二宮町の第一印象でした。

今回、私が訪れたのは、神奈川県の西湘エリアに位置する「二宮町」です。面積わずか9平方キロメートル。車であれば端から端まであっという間に移動できてしまうこの小さな町には、実は「これからの日本の暮らし方」のヒントが詰まっていました。

訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。

Yo, 0463 Check.
相模湾の風に吹かれて、坂道を登る。
ここは「湘南の入り口」じゃねえ、
俺たちの「帰る場所」だべ。二宮、Let's go.

まずは吾妻山、300段の階段
登りきれば広がる、イエローの絨毯
富士と海が重なる 最高のView
この景色見れば 悩みもBrand new
早咲きの春、潮の香りがMix
川勾神社で 歴史をFix
相模国二之宮、古の記憶
今も街の鼓動、深く響く。

山があって 海があって 仲間がいる
二宮 Pride, 心に火を灯す
落花生の殻 剥くように 絆を深める
この街で生きてる、それが誇りだべ
(Oh, Ninomiya! 太陽の里)
(Oh, Ninomiya! 俺らの誇り)

一色から中里、山西をPass
オリーブの木々が 揺れるGreen grass
日本初の栽培、新たな特産
未来への種まき、止まらねえ挑戦
昼飯はしらす? それとも地魚?
地元の恵み、胃袋に響かな
「〜だべ」「〜じゃん」交わす言葉
飾らねえ素顔、ここが一番だ。

東海道、松並木を抜けて
変わらねえ景色と 変わってく時代
それでも変わらねえ、この土の匂い
子供たちの笑顔、守りてえ想い。

山があって 海があって 仲間がいる
二宮 Pride, 心に火を灯す
落花生の殻 剥くように 絆を深める
この街で生きてる、それが誇りだべ

夜になれば静かな 波の音
星が綺麗だべ?
おやすみ、二宮。
また明日、この街で会おう。
(Ninomiya City, Peace out...)

「転勤せずに、環境を変える」という贅沢

役場でお話を伺った企画政策課のお二人は、非常に実直にこの町の現状を語ってくださいました。二宮町の最大の強み、それは「圧倒的なアクセスの良さと、圧倒的な自然の近さの両立」です。

東海道線一本で、横浜まで約45分、東京まで約60〜70分。新幹線を使わずとも、都心へ十分通勤圏内です。 「移住を検討されている方には、『転勤しなくていいんですよ』とお伝えしているんです」という言葉に、私は深く膝を打ちました。

ユーグレナを創業後は、東京のど真ん中で戦ってきた私ですが、今の時代、必ずしも都会に「住む」必要はありません。平日は都会のエネルギーの中でビジネスに邁進し、夜や週末はこの穏やかな海と山に囲まれた町で自分を整える。このオンとオフの切り替えこそが、現代の起業家やクリエイティブな仕事に携わる人々に求められている「余白」ではないでしょうか。

吾妻山頂上からの眺め。駅から徒歩圏内にここがある贅沢。

地域全体を「家」と捉える暮らし

二宮町には、いわゆる巨大なショッピングモールや派手な商業施設はありません。しかし、お話を伺う中で気づいたのは、この町の住民は「町内で完結すること」に固執していない、という柔軟さです。

「日常の買い物は町内で、専門的なものは隣の小田原や近隣都市へ。車社会だからこそ、周辺地域と連携して生活が成り立っている」

この感覚、実はとても豊かだと思うのです。9平方キロメートルのコンパクトな町だからこそ、役場も駅も、そしてシンボルの吾妻山も徒歩圏内。まるでお気に入りの「自分の庭」のように町を使いこなし、足りないものは少し足を伸ばして隣町へ借りに行く。この軽やかさが、二宮町の住みやすさの根源にあると感じました。

吾妻山中腹から見る二宮市街地。海と山に恵まれたコンパクトな街。

新たな息吹、二宮の「湘南オリーブ」

インタビューの中で特に興味深かったのが、近年始まった「オリーブ」の栽培です。かつて私の故郷・四国の小豆島がオリーブで有名になったように、この二宮の温暖な気候と水はけの良い丘陵地も、オリーブにとって最高の環境なのだといいます。

まだ新しい産業ではありますが、「湘南オリーブ」としてブランド化が進んでおり、町の新たな誇りになりつつあります。私は、こうした「新しく種をまく姿勢」に、地方再生の希望を感じます。伝統を守るだけでなく、その土地の風土に合った新しい価値を自分たちの手で作り出す。まさに「ニホンノチカラ」を体現する取り組みです。

オリーブ園

訪問を終えて

吾妻山の頂上で、元気に走り回る保育園の子どもたちを見かけました。 海が見えて、標高136メートル。津波のリスクからも程よく距離を置けるこの高台は、親御さんにとっても安心の場所なのでしょう。

二宮町は、何か特別な「飛び道具」がある街ではないかもしれません。しかし、そこには確かに「豊かな日常」が流れていました。 都心へのアクセスという「利便性」を捨てずに、海と山という「感性」を取り戻す。 「1718ニホン探索」の旅、二宮の地で私はこの町の持つ「ちょうど良さ」という豊かさを強く胸に刻みました。

川勾神社は相模国の二之宮で、この地の地名の由来になっている。

二宮町の情報まとめ

神奈川県の南西部に位置する、人口約2万7千人の町。相模湾に面し、温暖な気候と豊かな自然に恵まれている。面積は約9平方キロメートルと県内でも非常にコンパクトだが、JR東海道線が通り、都心まで約1時間という利便性からベッドタウンとして発展。明治時代には別荘地としての歴史も持ち、現在も静かな住環境が維持されている。

産業: 小売・サービス業が中心。大規模な工業団地は少なく、近隣都市へ通勤する「職住分離」のスタイルが一般的。2012年頃から始まったオリーブ栽培が新産業として注目を集めている。

文化・観光: 町のシンボル「吾妻山公園」は、富士山と相模湾を一望できる絶景スポット。1月から2月にかけて咲き誇る早咲きの菜の花は、全国的な人気を誇る。また、相模国二之宮である「川勾神社」など歴史ある寺社も多い。

グルメ: 「湘南オリーブ」から搾られるオリーブオイルや加工品が特産。漁港はないものの、湘南エリア共通の味覚である「しらす」や、近隣の小田原から届く新鮮な海産物、地元産の野菜などが食卓を彩る。

今回お話を伺った方

二宮町役場 企画政策課のお二人 二宮町の未来を担う政策立案や移住促進を担当。町のコンパクトさを活かした顔の見える行政を目指し、転入超過の維持や子育て世代の支援に奔走している。地元の魅力である吾妻山の自然や、新産業のオリーブを通じた町おこしに情熱を注ぐ、実直な方々でした。

筆者プロフィール

株式会社ニホンノチカラ 代表取締役。1975年愛媛県生まれ。18歳で渡米し、異文化の中で「日本の価値」を再認識。帰国後、株式会社ユーグレナの創業に参画し、取締役として東証一部(現プライム)上場に貢献。「ミドリムシで地球を救う」活動に20年捧げた後、2025年、原点である地方創生を目指し「ニホンノチカラ」を創業。全国1,718市町村を巡り、地方の宝を発掘する「1718ニホン探索」を継続中。