鉄の魂と新エネルギーで描く、ものづくり都市の再生
室蘭市(北海道)ーー1718ニホン探索(30/1,718)
青山剛市長(左)、福本(中央)、千葉英也北海道議会議員(右)
てつの街「室蘭」を象徴する工場群
「1718ニホン探索」の旅も、ついに30番目の節目を迎えました。今回私が降り立ったのは、北海道の工業を支え続けてきた「てつの街」、室蘭市です。
今回の訪問をアテンドしてくださったのは、20年前の日本青年会議所出向時代からの先輩であり、現在は北海道議会議員として活躍されている千葉英也さん。旧知の仲である千葉さんの案内で、室蘭市役所の門をくぐりました。
まずお会いしたのは、青山剛市長です。対談の中で感じたのは、青山市長の室蘭に対する圧倒的な自負と、次世代エネルギーや新事業(洋上風力発電製造誘致)に対する並々ならぬ情熱でした。市長は、室蘭が歩んできた産業の歩みを振り返りつつ、いま最も力を入れている「水素エネルギー」の利活用、そして今後誘致を加速させる「洋上風力発電」の製造拠点化について、力強く語ってくださいました。
その後、市役所の企画課の責任者の方から、室蘭が抱える歴史的背景や現状の課題について、より詳細なお話を伺いました。そこから見えてきたのは、かつて私がアメリカ留学中に感じた「日本のものづくりの底力」と、ユーグレナ時代に直面した「構造改革の難しさ」が交差する、今の日本の縮図のような姿でした。
訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。
Yo, Check it. 北の空を焦がす 不夜城の灯 鉄の匂いと 潮風が混じる ここは室蘭 俺たちのHome Town 火を絶やすな その胸のBlast Furnace(高炉) 準備はいいか? ぶちかますぜ 明治から続く この街の「運命(さだめ)」 噴火湾を抱く 馬蹄形の「眺め」 日本製鉄、日鋼 日本の「土台」 汗と火花で 築いた「時代」 「なまら」厳しい 冬の寒風(かぜ)の中 測量山(そくりょうざん)から 見下ろす街並み 煙突から昇る 白煙の筋 それが俺たちの 誇りの証(あかし) 昔に比べりゃ 静かになった? 「わや」言うなよ 熱は冷茶い(ひやい)どころか 底でフツフツ 煮えたぎってる 鉄よりも固い 絆(キズナ)を握ってる 室蘭(むろらん) なまら熱いぜ Iron Heart 霧の向こうに 光る明日(あした)を 見据えてんだ 白鳥大橋 翼を広げ どこまでも 誇り胸に 「どんと」構えて ぶちかませ! 地球岬(ちきゅうみさき) 水平線は丸く 悩みなんて ちっぽけに見える 「あずましい」場所 探してトッカリショ 断崖絶壁 荒波が叩きつける 坂の多い街 一歩ずつ登る イタンキ浜の 鳴り砂が歌う 工場夜景は 宝石のパレード この景色 誰にも譲らねえ「グレード」 霧(ガス)がかかっても 迷いはしねえ この街の地図は 血に刻まれてる 歴史を背負って 今をサバイブ 室蘭プライド 枯れないライブ 腹が減ったら これだべさ? 「室蘭やきとり」 鶏じゃなく「豚(ポーク)」! 玉ねぎ挟んで 洋がらしをオン! タレの旨みで テンションをトーン(Up)! 締めにはこれだ 「カレーラーメン」 スパイシーなスープ 絡まる麺 汗かきべそかき 食らいつくソウル 心もお腹も 満タンに「コール」! じいちゃんが支えた この街の鉄 俺たちが繋ぐ 新しい節(メロディ) 「おしゃさんこ」気取って 歩く中島 大黒島(だいこくじま)が見守る 俺たちの島(テリトリー) 時代は変わる だが芯はブレねえ 「したっけ」またな なんて言わせねえ ずっとここに居る 根を張って生きる 鉄よりも強く 輝き続ける 室蘭(むろらん)の鼓動 聞こえるか? この火は絶対に 消させやしねえ 鋼の意志で 未来を拓け! 室蘭(むろらん) なまら熱いぜ Iron Heart 霧の向こうに 光る明日(あした)を 見据えてんだ 白鳥大橋 翼を広げ どこまでも 誇り胸に 「どんと」構えて ぶちかませ! そう、ここは鉄の街 優しさと強さが混ざり合う場所 愛してるぜ、室蘭 Peace... 室蘭 Pride.
「石炭」から「鉄」へ、そして「平和」への願い
室蘭の発展の起点は、明治後半。天然の良港である「内港」を活かした石炭の積み出しから始まりました。その後、製鉄・鉄鋼業がこの街の背骨となり、戦時中は日本製鋼所などを中心とした軍需産業の重要拠点となりました。
しかし、その重要性ゆえに、室蘭は激しい空襲と艦砲射撃の標的となった悲しい過去も持ち合わせています。北九州と同じく、「工業・軍需拠点」としての使命を背負わされた街。責任者の方の言葉の端々に、鉄とともに生き、鉄とともに苦難を乗り越えてきた街のプライドが滲んでいました。
現在は、日本製鉄を中心に、主に自動車部品向けの高級鋼材を供給しています。ここで作られた鉄が、海上輸送を経て日本中、そして世界中の車に姿を変えているのです。室蘭港の強みは、その圧倒的な「水深」と、内港ゆえに波や風の影響を受けにくい「使いやすさ」にあります。大型船がスムーズに入港でき、荒天時には避難港としても機能する。この港のポテンシャルが、今もなお室蘭を北海道の工業拠点たらしめているのです。
明治後期以降日本の製造業を支えてきた室蘭の内海
「建てる」より「作る」。ものづくりのプライドを次世代へ
私が特に興味を引かれたのは、青山市長が推進する新エネルギーへの挑戦です。室蘭では10年以上前から水素利活用の実証実験が続けられてきましたが、まだビジネスモデルとして確立するには至っていません。それでも歩みを止めないのは、それが「ものづくりの街」の生き残る道だと確信しているからでしょう。
現在、国が進める「洋上風力発電」の拠点港指定を巡り、室蘭は手挙げを続けています。しかし、企画課の方はこう冷静に分析していました。
「指定の有無に関わらず、室蘭の真の強みは『製造技術の集積』にあります。風車を建てる場所を争うのではなく、風車そのものを製造し、積み出す総合拠点を目指すべきではないか」
室蘭には、日本製鋼所をはじめとする世界的にも稀有な大型鋳鍛造の技術があります。地球岬に代表される美しい景観を守るためにも、海を風車で埋め尽くすのではなく、世界に通用する風車を「作る」ことで外資メーカーを誘致し、雇用を生む。この「作る」ことにこだわる姿勢こそ、私がニホンノチカラを通じて発掘したい「日本の誇り」そのものです。
室蘭には工業都市とは思えない壮大な自然が溢れています。
「住み続けられる」ための、現実的かつ温かな変革
一方で、室蘭も深刻な人口減少と若者の流出に直面しています。20代から40代の若年層が、求職ニーズとのミスマッチによって街を離れていく。高齢化率は38%に迫り、バス路線の縮小や医療・福祉の担い手不足が市民生活を脅かしています。
青山市長の公約である「住み続けたい町、室蘭」を実現するために、市が取り組んでいるのは非常に具体的で血の通った施策でした。例えば、男性中心だった製造現場に女性を呼び込むため、女子トイレや更衣室の整備を市が補助する制度。これまでの「男社会の鉄の街」という殻を破り、多様な人材が働ける環境を基盤から整えようとしています。
また、外国人材との「共生」についても深い議論になりました。製造や建設、福祉の現場では東南アジアからの技能実習生が欠かせない存在となっていますが、彼らを単なる労働力としてではなく、同じ地域住民としてどう迎え入れるか。文化や宗教の違いを越えたコミュニティづくりが急務です。同時に、軍需産業を抱える街ゆえの「防衛機密と外国人雇用の境界線」という、室蘭ならではの難しい課題にも向き合っておられました。
道の駅 カナスチールみたら室蘭
市立室蘭水族館
カレーラーメンは、室蘭のソウルフード
取材を終えて:再興への確信
今回の訪問で確信したのは、室蘭は決して「過去の街」ではないということです。 かつて私がアメリカに渡った時、日本の国力が欧米に遅れをとっていることに強い悔しさを感じました。しかし、室蘭のような街が持つ、100年以上積み上げられてきた「技術の重層」こそが、再び世界と渡り合うための武器になります。
「古い工業都市」というイメージを脱ぎ捨て、水素や洋上風力といったクリーンエネルギーの「マザー工場」へと進化を遂げようとする室蘭。その挑戦を、私は株式会社ニホンノチカラの代表として、そして一人の日本人として、全力で応援していきたい。
千葉さん、青山市長、それから企画課の担当者様。鉄のように熱く、そして強固な意志を感じさせてくれた室蘭の皆様に、心からの敬意を表します。
室蘭市の情報まとめ
北海道の胆振地方に位置する、人口約7.7万人の都市。明治時代に「炭鉄港(石炭・鉄・港)」の一角として発展し、天然の良港を活かした重化学工業都市として日本の近代化を支えてきた。三方を海に囲まれ、工場夜景の聖地としても知られるほか、ダイナミックな断崖絶壁が続く「地球岬」など、雄大な自然景観も併せ持つ。
産業:鉄鋼業、造船業、産業機械製造業などが集積する「ものづくりの街」。現在は、水素エネルギーの利活用や洋上風力発電関連産業の誘致など、脱炭素社会に向けた新産業の育成に注力している。
文化・観光:白鳥大橋を望む「工場夜景」は日本トップクラスの美しさを誇る。「地球岬」は元旦の初日の出スポットとしても有名。また、ボルトやナットで作られた人形「ボルタ」は、鉄の街ならではの工芸品として親しまれている。
グルメ:豚肉と玉ねぎを串に刺し、洋がらしで食べる「室蘭やきとり」や、スパイシーな「室蘭カレーラーメン」が二大ご当地グルメ。また、噴火湾で獲れる新鮮なホタテやクロソイなどの海産物も絶品である。
今回お話を伺った方
青山 剛(あおやま たけし)氏 室蘭市長。現在は4期目を務める。「住み続けたい町、室蘭」を掲げ、基幹産業である製造業の活性化と共に、水素エネルギーや洋上風力発電といった次世代エネルギーの拠点化を推進し、カーボンニュートラルな街づくりを牽引している。
企画課 御担当者様 企画課の責任者として、そして市長を支える参謀の一人として、室蘭の未来のために日々尽力されています。
筆者プロフィール
福本 拓元(ふくもと たくゆき) 株式会社ニホンノチカラ 代表取締役。1975年愛媛県生まれ。18歳で渡米し、異文化の中で「日本の価値」を再認識。帰国後、株式会社ユーグレナの創業に参画し、取締役として東証一部(現プライム)上場に貢献。「ミドリムシで地球を救う」活動に20年捧げた後、2025年、原点である地方創生を目指し「ニホンノチカラ」を創業。全国1,718市町村を巡り、地方の宝を発掘する「1718ニホン探索」を継続中。













