内向きの施策が育む「チーム吹田」の圧倒的な地元愛

吹田市(大阪府)ーー1718ニホン探索(44/1,718)

万博記念公園の象徴「太陽の塔」

Jリーグガンバ大阪のホームタウン。左は吹田くわいをモチーフにしたキャラクター「すいたん」

全国1,718市町村を巡る「1718ニホン探索」の旅。44番目の訪問地として足を運んだのは、大阪府吹田市です。今回ご対応いただいたのは、都市魅力部シティプロモーション推進室のご担当者様。

吹田市といえば、1970年の日本万国博覧会(大阪万博)の開催地であり、日本を代表するサッカクラブ「ガンバ大阪」の本拠地、さらには数々の名門大学を擁する学園都市としても知られています。

しかし、今回インタビューを進める中で、吹田市が描く「街の未来像」は、私がこれまで訪ねてきた多くの自治体とは決定的に異なる、非常にユニークで本質的なものであることに驚かされました。

訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。

Yeah... 吹田の街、歩くMy way
千里の風が通り抜ける Highway
どこにいたって、見上げればそこにいる
あの大きな背中が、今日もウチを見てる

神崎川のせせらぎ、朝の光
アサヒビール吹田工場、歴史の始まり
産業の街から、いまや緑のベッドタウン
江坂のオフィス街、ビルが立ち並ぶTown
吹田駅から吹田東
毎日が必死、でも忘れてへんよ誇り 
「これ、やっといて」って言われた仕事も 
「しゃあないなぁ」って笑ってこなす午後
千里ニュータウン、色褪せないメモリー 
坂道を上れば、広がるファミリー 
どこか上品で、でもやっぱり関西 
この街の空気、ウチはめっちゃ好きやねん

黄金の顔が見つめる未来 
太陽の塔の下で、手を伸ばしたい 
万博記念公園、緑が芽吹く 
ウチらの夢も、ここからまた動く 
「〜してはる」って言葉が響く街 
吹田で育った、この胸の価値 
ずっと、ずっと、変わらへん景色がある 
この街がウチの、誇れるHOME

週末のルーティン、何する?言うてみ?
パナソニックスタジアム、青と黒の海 
ガンバのチャントが響く、熱い夜 
ゴール揺らせ、胸の鼓動も踊る 
万博、間近に迫る次の時代 
2025超えても、熱意は冷めへんみたい 
「そやね」って頷き合う、カフェのテラス 
山田も千里山も、個性を照らす

おもちゃの街だった、エキスポランドの記憶 
いまやEXPOCITY、新しい魅力 
観覧車から見下ろす、街の夜景 
「綺麗やなぁ」って、言葉が零れちゃうね

たまに東京の友達が言うねん
「吹田(ふきた)ってどこ?」って、ちゃうわ、「すいた」やんか!
すいた、好いた、ウチの大好きな街
ここで生きてる、毎日が愛おしい

黄金の顔が見つめる未来 
太陽の塔の下で、手を伸ばしたい 
万博記念公園、緑が芽吹く 
ウチらの夢も、ここからまた動く 
「〜してはる」って言葉が響く街 
吹田で育った、この胸の価値 
ずっと、ずっと、変わらへん景色がある 
この街がウチの、誇れるHOME

紫金山(しきんざん)の緑、JRの線路
阪急電車が、今日も人を運ぶよ 
ウチの帰る場所、いつでもここにある 
SUITA CITY... 
「また来ぃや」って、太陽が笑ってる

「外から呼び込む」のではなく「今の住民の満足度」を極限まで高める

多くの地方自治体が人口減少に悩み、必死になって「移住促進」や「関係人口の拡大」といった外向けのプロモーションに予算を投じる中、吹田市は全く逆の、明確な「住民第一・内向き」のスタンスを取っています。

「吹田市は現在も人口が緩やかに増え続けている状態です。だからこそ、『どんどん来てください』と外へ発信していくよりも、今住んでいる市民の皆様の満足度向上や、市への愛着形成、つまり『定住促進』に力を入れています」

ご担当者様が語ったこの言葉に、私は思わず膝を打ちました。 アメリカ留学時代、多民族国家の中で「日本の価値や魅力とは何か」を客観的に見つめ直した私ですが、ビジネスの本質も地域の魅力も、すべては「身近にある足元の宝をいかに大切にするか」から始まります。吹田市は、外を向いて着飾るのではなく、中にいる市民が「この街に住み続けたい」と心から思えるコミュニティ作りに経営資源を集中させているのです。

市民が「この街は最高だ」と感じていれば、その魅力は自然と外へと溢れ出し、結果として市外の人をも惹きつける。この「インサイド・アウト(内から外へ)」のアプローチは、非常に理にかなっています。人口約35万人という、地方であれば県庁所在地クラスの規模を持つ吹田市だからこそできる、贅沢かつ本質的な地方創生のモデルと言えるでしょう。

ガンバ大阪のホームスタジアム「パナソニックスタジアム吹田」

EXPOCITY

平和のバラ園

市民の寄付で建てられたスタジアム。「吹田モデル」が象徴する自治の精神

その市民の「地域への愛着」が目に見える形となった象徴的なエピソードがあります。それが、ガンバ大阪のホームスタジアムである「パナソニック スタジアム 吹田」の建設経緯です。

驚くべきことに、この巨大なスタジアムは行政の公金によって建てられたものではなく、市民や企業からの企業寄付や募金、国からの助成金など、民間主導の「寄付金」をベースに約140億円を集めて整備されました。当時の言葉で「吹田方式(吹田モデル)」と呼ばれたこの手法は、日本のスポーツビジネスやまちづくりの歴史において、まさに先駆的な快挙でした。竣工後は市に寄贈され、現在はガンバ大阪が指定管理者として運営しています。

「自分たちの街のスタジアムを、自分たちの手で作った」

この強烈な原体験があるからこそ、市民のスタジアムやチームに対する愛着は他とは一線を画しています。まさに行政と市民、そして民間企業が三位一体となった、理想的なまちづくりの具現化です。

「吹田クロス」が繋ぐ、横の連帯感と「チーム吹田」の精神

さらに現在、市が主導して進めている非常に面白い取り組みが、「吹田クロス」というロゴを活用したブランディングです。

これは、吹田市を盛り上げたいと願う市民、団体、組織、企業を「チーム吹田」として結集させるための共通のシンボルマーク。社会運動で特定のカラーを身に付けるように、このロゴを掲げることで「自分たちは吹田を愛するチームの一員だ」という意思表示になり、目に見える連帯感が生まれます。

単に市がイベントを企画して市民を呼ぶのではなく、市民や地元企業が主体となって行う活動(まちび)にこのロゴをクロス(コラボレーション)させることで、縦割りではない「横のつながり」を爆発的に増やしていく。

私がニホンノチカラを立ち上げたのも、地方に埋もれた素晴らしい技術や熱い想いを持つ人々を繋ぎ、現代の消費者に届く形に再編集したいと考えたからです。「吹田クロス」の根底にある「個々の力を掛け合わせて地域を耕す」という思想には、経営者としても深く共感せざるを得ませんでした。

万博記念公園は今も吹田市民の「誇り」となっている。

圧倒的な利便性と豊かな自然が同居する「住みやすさ」の正体

インタビューの翌日、私はご担当者様に勧めていただいたスポットを実際にいくつか回ってみました。

南の方へ足を伸ばせば、アサヒビール発祥の地としての歴史を伝える「アサヒビール吹田工場」があり、岸部周辺には「旧中村家住宅」をはじめとする風情ある古い庄屋さんの街並みが残っています。その一方で、1970年代から80年代にかけて造成された千里ニュータウンエリアは、現在、大規模改修や最新のマンション建設が進むなど、時代に合わせた新陳代謝を繰り返しています。

そして何より、吹田市の強みは「バランスの良さ」にあります。 主要な鉄道路線を使えば、大阪の中心地である梅田や大阪駅まで乗り換えなしで一本。この抜群の利便性を誇りながら、街を開墾すれば広大な万博記念公園をはじめとする緑豊かな公園が点在し、大阪大学や関西大学といったキャンパス周辺の美しい景観が広がっています。

「利便性」と「豊かな自然環境」、そして学園都市がもたらす「知性と活気」。これらが絶妙なバランスで融合しているからこそ、吹田市は多くの人に「一生モノの住処」として選ばれ続けているのです。

今回の訪問を通じて、地方創生の本質とは、単に観光客の数を競うことではなく、その土地に暮らす人々が誇りを持って笑顔で生きられる土壌を作ることなのだと、吹田市から改めて教えられた気がします。この「チーム吹田」の圧倒的なエネルギーを肌で感じられたことは、私のこれからの旅にとっても大きな糧となりました。

吹田はアサヒビールの発祥の地でもある。

吹田市の情報まとめ

大阪府の北摂地域に位置する、人口約39万人の特令都市。1970年の日本万国博覧会(大阪万博)の開催地として全国的にその名を知られ、広大な「万博記念公園」や、日本初の本格的な大規模ニュータウンである「千里ニュータウン」が整備されたことで、都市としての基盤を大きく発展させました。主要沿線から大阪市内へのアクセスが抜群に良い一方で、緑豊かな公園や名門大学が数多く点在する学園都市でもあり、「利便性と自然の調和」がとれた非常に住み心地の良いベッドタウンとして、現在も人口が緩やかに増加し続けています。

産業: ビール醸造の歴史が深く、アサヒビール発祥の地として「アサヒビール吹田工場」が稼働しています。また、日本の生活インフラを支えるダスキンの発祥地でもあり、本社が置かれています。南部を中心にサービス業や自営業が盛んなほか、大阪大学や関西大学などの研究機関が集積しています。

文化・観光: 太陽の塔がそびえ立つ「万博記念公園」が最大の観光拠点であり、隣接する大型複合商業施設「EXPOCITY」や生きているミュージアム「NIFREL」、市民の寄付で建てられた「パナソニック スタジアム 吹田」が多くの来訪者を集めます。また、ミスドミュージアムを併設した「ダスキンミュージアム」や、歴史的建造物である「旧中村家住宅」など、多彩な文化・観光資源を有しています。

グルメ: 吹田の伝統野菜として知られる「なにわの伝統野菜」の一つ、「吹田くわい」が有名です。一般的な芋くわいに比べて小ぶりで甘みがあり、古くから縁起物として親しまれてきました。また、アサヒビール発祥の地にちなんだ出来立てのビールや、地元密着型の個性豊かな飲食店・カフェ文化が学生やファミリー層に愛されています。

今回お話を伺った方

吹田市 都市魅力部 シティプロモーション推進室 ご担当者様 吹田市の持つ「万博関連資源」や「ガンバ大阪」といった強力な地域資産を活かし、対外的な観光誘致だけでなく、市民の地域に対する愛着形成(シビックプライドの醸成)や満足度向上を目指すインサイド・アウト型のプロモーションを牽引。「チーム吹田」として地域住民や企業が一丸となるためのシンボル「吹田クロス」の普及や、市民参加型の住みやすい街づくり・定住促進の施策に日々取り組まれています。

筆者プロフィール

福本 拓元(ふくもと たくゆき) 株式会社ニホンノチカラ 代表取締役。1975年愛媛県生まれ。18歳で渡米し、異文化の中で「日本の価値」を再認識。帰国後、株式会社ユーグレナの創業に参画し、取締役として東証一部(現プライム)上場に貢献。「ミドリムシで地球を救う」活動に20年捧げた後、2025年、原点である地方創生を目指し「ニホンノチカラ」を創業。全国1,718市町村を巡り、地方の宝を発掘する「1718ニホン探索」を継続中。