北海道の心臓部を支える「ダブルポート」の誇り
苫小牧市(北海道)ーー1718ニホン探索(31/1,718)
苫小牧は、北海道の海の玄関
全国1,718市町村を巡る私の旅。31番目に訪れたのは、北海道の海の玄関口、苫小牧市だ。前日に訪れた室蘭市が「鉄の街」としての誇りを語っていたのに対し、この苫小牧は「紙(製紙)」「エネルギー」、そして圧倒的な「物流」の街としての顔を持っている。
市役所を訪ねると、今年4月に新設されたばかりのシティプロモーション課の方々が迎えてくれた。組織改編の慌ただしさの中、丁寧に対応してくださったことに、まずは感謝を伝えたい。
訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。
Yeah, check the Paper, feel the Power. 北海道の心臓、0144エリア。 止まらねぇ工場の煙、それが俺らの呼吸だべ。 Listen! 見上げりゃ空に伸びる 白煙のタワー 絶え間なく供給 北の大地のパワー 苫東の広野(こうや)に 火花が散る 俺らが動かさなきゃ この島が凍る 火力発電 情熱のボイラー 道内中の明かり 灯すエンプロイヤー 「なまらしんどい」? そんなの弱音だべ 不夜城の港 誇りを背負って立て PAPER & POWER この街の誇り 止まらない歯車 夢を積み込み PAPER & POWER 俺たちの誇り (だべさ! だべさ! 負ける気しねぇべさ!) 海から山まで 全てがステージ 苫小牧から 塗り替えるページ パルプの匂い それは街の香り 白い紙(ペーパー)に 綴る俺らの物語(ストーリー) 世界へ羽ばたく 王子に日本製紙 この街の質感が 歴史の定規 氷の上じゃ レッドイーグルスが舞う パックを追いかけ 歓声が突き刺さる ウトナイの静寂(しじま) 樽前の稜線 ハードな仕事の合間 癒しの導線 ハラが減ったら 大王のカレーラーメン 濃厚なスープ 啜りゃ全部晴れん 日本一のホッキ 噛みしめる旨味 「なんもだぁ」って笑う 仲間との深み 西から東 フェリーが着く港 日本を繋いでる ここが最前線(フロント) よそ者も包み込む 潮風の街 PAPER & POWER これが俺らの価値 PAPER & POWER この街の誇り 止まらない歯車 夢を積み込み PAPER & POWER 俺たちの誇り (だべさ! だべさ! 負ける気しねぇべさ!) 海から山まで 全てがステージ 苫小牧から 塗り替えるページ 紙(PAPER)に刻んだ 俺らの言葉。 力(POWER)に変えて 明日を回せ。 苫小牧、なんもだ、俺らがついてる。 Peace.
空と海が交差する「ダブルポート」の優位性
私がまず驚いたのは、苫小牧が持つ「物流拠点」としての凄まじいスペックだ。 「新千歳空港が目と鼻の先にあり、飛行機とフェリーの『ダブルポート』として機能しているんです」 担当者の方が語るその言葉通り、空路と海路がこれほど密接に連携している地域は全国でも珍しい。市民の感覚としては、千歳市との境界を意識することなく、空港も自分たちのインフラの一部として捉えている。
フェリー航路を地図で確認すると、仙台、名古屋、八戸、大洗、さらには秋田や新潟、敦賀まで網羅されている。「空輸できない重量物や危険物は海運が担う」という役割分担が明確だ。千歳市で耳にした「ラピダスの進出も、危険物処理などの関係で苫小牧との連携が不可欠」という話が、点と線でつながった瞬間だった。
札幌まで高速で約1時間。道内主要都市へのアクセスも抜群に良く、苫小牧はまさに「北海道バレー」構想の南の要石(かなめいし)として、この広大な土地の産業と生活を支えているのだ。
航路数の多さから苫小牧には西、東と二つのフェリーターミナルがある。
水とエネルギーが育む次世代産業
苫小牧の歴史は、明治時代から続く製紙業(王子製紙)と共に歩んできた。しかし、今の苫小牧はそこにとどまらない。 広大な「苫東(苫小牧東)地域」には、トヨタ自動車のエンジン部品工場があり、ここで作られた「心臓部」が世界中へと送り出されている。さらに近年では、ソフトバンクが巨大なデータセンターを立地させた。
意外だったのは「水」の豊かさだ。 「樽前山(たるまえさん)が濾過してくれた綺麗な水が豊富にあるんです。ウイスキーの『イチローズモルト』さんも、この水を評価して工場を建てられました」 工業地帯のイメージが強かった私にとって、水道水すら美味しいという話は新鮮な驚きだった。実際、市が販売している「とまチョップ水」を口にすると、その透明感に驚かされる。
苫小牧の製造業を支えてきた王子製紙
苫小牧市公式キャラクター「とまチョップ」
「日本一食べづらい」という愛のカタチ
インタビューの終盤、話題は苫小牧のソウルフードへと移った。 水揚げ量25年連続日本一を誇る「ホッキ貝」。それを惜しみなく使った「ホッキカレー」や「カレーラーメン」など、苫小牧は実は「カレーの街」でもある。
そして、外せないのが銘菓「よいとまけ」だ。「日本一食べづらいお菓子」という自虐的かつ愛のあるキャッチコピーで知られるこのロールカステラ。ハスカップジャムが表面に塗られており、切る時に手がベタベタになる。 「ヨイトマケ」という言葉の由来は、製紙工場の木場で丸太を上げ下ろしする際の掛け声だという。かつてこの街を支えた力強い労働の記憶が、今もなお甘いお菓子の中に生き続けていることに、私は深い感銘を受けた。
道の駅 ウトナイ湖
地方発!日本再生への確信
今回の訪問で感じたのは、苫小牧という街が持つ「機能」の強さだ。物流があり、水があり、広大な土地がある。ここには、日本が再び世界と戦うための「基礎体力」が備わっている。
人口減少という課題はあるものの、産業を支える雇用がある限り、この街の未来は明るい。アメリカで日本の価値を再認識した私にとって、苫小牧のような「世界と直結する物流・産業の要所」こそが、これからの日本再生の大きな鍵になると確信した。
ウトナイ湖で、ラムサール条約に認定された静謐な自然を眺めながら、私はこの街のポテンシャルの深さを改めて噛み締めた。
ウトナイ湖
年間約270種類の野鳥が観察される
苫小牧市の情報まとめ
北海道の道央地方に位置する、人口約16.7万人の港湾都市。明治期の製紙業進出から「紙の街」として発展。現在は、世界屈指の掘込港湾である苫小牧港と、隣接する新千歳空港を併せ持つ「ダブルポート」の利便性を活かし、日本を代表する臨海工業地帯を形成している。
産業: 製紙業(王子製紙)、自動車産業(トヨタ自動車北海道)、石油備蓄、火力発電に加え、近年はデータセンターや次世代産業の誘致も盛んである。
文化・観光: 日本初のバードサンクチュアリである「ウトナイ湖」はラムサール条約登録湿地。活火山の「樽前山」は市のシンボルである。
グルメ: 水揚げ量日本一の「ホッキ貝」が名物。ホッキカレー、カレーラーメンの「ダブルカレー」のほか、銘菓「よいとまけ」が有名。
今回お話を伺った方
苫小牧市 シティプロモーション課 ご担当者様 2026年4月、苫小牧市の魅力を内外に発信し、交流人口・関係人口の拡大を図るために新設された専門部署。組織改編直後の多忙な時期でありながら、物流・産業から食文化に至るまで、苫小牧の多面的な価値を情熱的に語ってくださった、地域の広報・戦略を担うプロフェッショナルの方々。
筆者プロフィール
福本 拓元(ふくもと たくゆき) 株式会社ニホンノチカラ 代表取締役。1975年愛媛県生まれ。18歳で渡米し、異文化の中で「日本の価値」を再認識。帰国後、株式会社ユーグレナの創業に参画し、取締役として東証一部(現プライム)上場に貢献。「ミドリムシで地球を救う」活動に20年捧げた後、2025年、原点である地方創生を目指し「ニホンノチカラ」を創業。全国1,718市町村を巡り、地方の宝を発掘する「1718ニホン探索」を継続中。










