9つの奇跡が湧き出す地・登別。「通過型」から「滞在型」へ、観光大国の底力を探る。
登別市(北海道)ーー1718ニホン探索(29/1,718)
「登別地獄谷」は、登別温泉の象徴
「1718ニホン探索」の旅、第29番目の訪問地として降り立ったのは、北海道が世界に誇る名湯の地、登別市です。
新千歳空港からほど近く、アクセスも良好なこの街は、日本を代表する老舗温泉地としてその名を轟かせています。私がアメリカ留学を経て、客観的に「日本の価値」を見つめ直した際、最も大きなポテンシャルを感じたのが、こうした日本独自の自然資源と歴史が融合した場所でした。
今回、登別市観光振興グループの担当者お二方にお話を伺い、この街が持つ「圧倒的な資源力」と、それゆえに抱える「観光地としての次なる課題」が見えてきました。
訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。
Yo, Welcome to the Hell Valley. 北の大地、噴煙の向こう側。 湯の香りに誘われて、辿り着くこの街。 準備はいい? 登別の誇り、刻むよ。 まずは「地獄谷」 荒ぶる大地の息吹 もくもくと上がる煙は 街の生きる証 閻魔(えんま)大王 睨みを利かす三叉路 悪いことすりゃ ここで裁きを待つだろう? けど恐れるな この「湯」は優しさの塊 9つの泉質 身体(からだ)に染みるこだわり 鉄泉、硫黄、重曹 混ぜもん無しのReal 日々のストレス 根こそぎ奪い去るFeel ちょっと待ってよ 山だけじゃないって 「マリンパーク・ニクス」 お城が見える丘で ペンギンの散歩 眺めて心ほっこり 「クッタラ湖」の青さ 見れば悩みもさっぱり 透明度日本トップクラス 鏡のような水面(みなも) 自分を見つめ直す 贅沢な時間をも 「時代村」にトリップ 忍びの足音 江戸の風に吹かれ 忘れるわ 仕事。 なまら最高だべ 登別 湯気に巻かれて 溶ける境界線(ボーダーレス) 赤鬼 青鬼 踊り出す地獄祭(まつり) 心は「あずましい」 笑顔がまた混じり 100年先も 変わらぬこの熱 We rep the 登別 Smoke & Soul! 「クマ牧場」へGo ロープウェイで空を飛ぶ 「ヒトの檻」から見る 巨体はなまら迫力(パワー) エサを投げてアピール 「こっち向け!」って合図 アイヌの歴史「チキサニ」 魂のサイズ 厳しい冬も 「しばれる」夜も ここの温泉(ゆ)に入れば 凍えた指も 「わや」な寒ささえ 最高のスパイス 地元民の誇り 語る言葉はNice お腹が空いたら 「閻魔やきそば」でキマり ピリ辛のソース 箸が止まらない 独り占め 前浜の毛ガニ 贅沢に頬張って 地元の温かさ 「なんして?」って笑って 「ごまっぱする(転ぶ)」くらい 急ぎ足で来たって ここは帰る場所 いつだって待ってる 湯の華の街 潮風と硫黄の香り 一生忘れない この街の温もり 外は雪が舞って 白く染まる世界 けど心の中は 常に絶やさない火災(ひ) 懐かしい訛りが 響くこの坂道 伝統と革新 繋ぐこの足場(足並み) 登別 唯一無二の場所 誇り高く 叫べ! なまら最高だべ 登別 湯気に巻かれて 溶ける境界線(ボーダーレス) 赤鬼 青鬼 踊り出す地獄祭(まつり) 心は「あずましい」 笑顔がまた混じり 100年先も 変わらぬこの熱 We rep the 登別 Smoke & Soul! 大湯沼の足湯で ひとやすみ。 次はいつ来るの? 待ってるからね。 したっけ、またな。 登別で会おう。
圧倒的な自然のダイナミズムと「三大テーマパーク」の厚み
まず私が足を運んだのは、登別観光の象徴である「地獄谷」です。荒々しい岩肌から立ち上る真っ白な湯煙、そして漂う硫黄の香り。そこには、地球の鼓動をそのまま肌で感じるような生命力が溢れていました。
驚くべきは、この地獄谷周辺のわずかなエリアから、性質の異なる9つもの泉質が湧き出しているという事実です。「1箇所から9種類」というのは世界的に見ても極めて稀で、ブラタモリでも特集されたほどだと言います。実際、宿泊施設によっては湯船ごとに異なる泉質を楽しめる場所もあり、これは温泉好きにはたまらない「究極の贅沢」と言えるでしょう。
また、登別の強みは温泉だけではありません。「のぼりべつクマ牧場」「登別伊達時代村」「登別マリンパークニクス」という、ジャンルの異なる「三大テーマパーク」が揃っています。 「老若男女、誰が来ても楽しめるコンテンツがある」 担当者の方が語るその言葉通り、歴史好きから家族連れまでをカバーするこの層の厚さは、他の温泉地にはない登別独自の武器です。
登別マリンパークニクス
のぼりべつクマ牧場
登別伊達時代村
「国立公園内」という誇りと、開発制限のジレンマ
しかし、この豊かな自然は、同時に開発における高いハードルでもあります。 登別温泉街の多くは国立公園内に位置しており、景観保護のための国の規制が厳格です。新しいホテルの建設や、観光客を受け入れるための駐車場整備一つとっても、容易ではありません。
私がユーグレナ時代に経験したビジネスの現場でも、制約があるからこそ生まれる創意工夫がありました。登別においても、土地を広げる「拡大」の戦略ではなく、今ある資源をいかに深く、濃く編集し直して「価値を高めるか」が、これからの鍵になるはずです。
現在、宿泊客の約4割をインバウンドが占めています。台湾、韓国、香港、中国といった東アジア勢がその8割ですが、最近では欧米からの旅行者も増えているとのこと。彼らは日本の「本物」を求めてやってきます。150年続く温泉文化という「ストーリー」を、いかに現代のグローバルな感性に響かせるか。そこに「ニホンノチカラ」を発揮する余地があると感じました。
大規模な老舗旅館が立ち並ぶ「登別温泉」
「通過型」から「滞在型」へ。駅リニューアルと食の挑戦
現在、登別が抱える最大の課題は、観光客が1泊で他の地域(札幌や函館)へ移動してしまう「通過型観光」である点です。 「うちに滞在してもらうために、今は市が主体となって、観光事業者等と連携した全体計画を作っています」
その拠点の一つとなるのが、今年リニューアルされたばかりのJR登別駅と、隣接する観光交流センター「ヌプル」です。清潔感があり、温かみのあるこの玄関口から、駅前の商店街をどう活性化させていくか。ここが「滞在型」への転換点になるでしょう。
そして、滞在を楽しくさせるのは何より「食」です。 登別が誇るご当地グルメ「登別閻魔(えんま)焼きそば」についても話を伺いました。地獄谷の閻魔大王にちなんだピリ辛の味付け、そして「北海道産小麦の使用」などの厳しいルールを設けたブランド化。こうした地域一丸となった取り組みこそが、旅行者の思い出を彩ります。
リニューアルされた「登別駅」
地獄谷の赤鬼、青鬼は登別のシンボル
探索を終えて:自然の恵みを「文化」として次世代へ
インタビューの最後、担当者の方が教えてくれた「さぎり湯」というリーズナブルな日帰り温泉の話や、川そのものが足湯になっている大湯沼川の景色。そこには、観光パンフレットの数字だけでは測れない、地域の人たちが愛する「登別の素顔」がありました。
今回の訪問で確信したのは、登別には世界を魅了する「一級品の素材」が揃っているということです。この素晴らしい恵みを、単なる「消費される観光地」で終わらせてはならない。 地方発の日本再生を志す私として、この9つの泉質のように、多様な個性が共生し、新しい価値を噴出させ続ける登別の未来を、これからも応援し続けたいと思います。
登別市の情報まとめ
北海道の胆振地方に位置する、人口約4万人の都市。150年以上の歴史を誇る「登別温泉」は、1箇所から9種類もの泉質が湧き出す世界でも稀有な温泉地として知られ、「温泉のデパート」とも称される。地獄谷や大湯沼といった火山活動の遺構が、圧倒的な景観美を創り出している。
産業:観光業が基幹産業であり、年間多くの観光客が訪れる。また、室蘭市に隣接する立地から、製造業や住宅都市としての側面も併せ持つ。
文化・観光:「登別温泉」を中心に、のぼりべつクマ牧場、登別伊達時代村、登別マリンパークニクスの「三大テーマパーク」が人気。また、カルルス温泉やスキー場など、四季を通じて楽しめるアクティビティが充実している。
グルメ:北海道産小麦にこだわった「登別閻魔やきそば」がご当地グルメとして人気。ピリ辛の特製タレと地域の食材を活かした味が特徴。
今回お話を伺った方
登別市 観光振興グループ 担当者様 登別市の観光施策を担う中心部署。本庁舎を離れ、地域事業者との連携がしやすい商業施設「アーニス」内に拠点を構える。現在は「通過型観光」からの脱却を目指し、観光・商工・農林が一体となった新たな観光計画の策定や、駅前商店街の活性化、インバウンド対応の強化に奔走している。
筆者プロフィール
福本 拓元(ふくもと たくゆき) 株式会社ニホンノチカラ 代表取締役。1975年愛媛県生まれ。18歳で渡米し、異文化の中で「日本の価値」を再認識。帰国後、株式会社ユーグレナの創業に参画し、取締役として東証一部(現プライム)上場に貢献。「ミドリムシで地球を救う」活動に20年捧げた後、2025年、原点である地方創生を目指し「ニホンノチカラ」を創業。全国1,718市町村を巡り、地方の宝を発掘する「1718ニホン探索」を継続中。













