桜がつなぐ郷土愛と、移動の壁を壊す「共助」の挑戦

河津町(静岡県)——1718ニホン探索(13/1,718)

静岡県河津町、大川良樹町長(左)

静岡県伊豆半島の東岸に位置する河津町。2月、私がこの地を訪れた時、町は「河津桜」の鮮やかなピンク色に包まれていました。早咲きの桜として全国的に知られるこの花を一目見ようと、平日にもかかわらず多くの観光客が川沿いを歩いています。

今回、私は2025年11月に就任されたばかりの大川良樹町長にお会いしました。大川町長は、町議会議員を2期7年務められ、地元で愛される鰻屋「大川屋」の主としての顔も持つ、まさに「河津の生き字引」のような方です。

訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。

Yo... 伊豆の南、早咲きの春。
どこよりも早く、俺らの心は色づく。
河津、この場所に根を張り、今日を歌う。
Check it, check it, Listen up...

冬の終わりを告げる ピンクのアーチ
川沿い歩けば 弾む足取り 行進(マーチ) 
一足先に咲く 河津桜
誰にも真似できん この美しさは 宝

天城の嶺から 湧き出る 清流   
わさびの辛味は 先人の 潮流
「泣きわさび」 食って 鼻に抜けるツンと
五感で感じる この町の ぐんと

「いいら?」 って笑い合う 昼下がりの土手 
都会の喧騒 忘れて どっけ 
歴史が息づく 峰温泉 
湯煙の向こうに 見える新幹線? いや、天城越えの線
歴史が息づく 峰温泉 
湯煙の向こうに 見える新幹線? いや、天城越えの線

さあ 踊ろうか 河津の風に吹かれ 
桜のトンネル 抜けて明日へ 
「ずら」 と 「だら」 で繋ぐ 地域の絆 
一生変わらねえ この町の 地図は

海を見りゃ 今井浜 白い砂浜 
夏はサーフィン 太陽が お仲間 
歴史を遡りゃ 伊豆踊子 
川端康成も 惚れたこの 光景(とこ)

カーネーション 揺れる ビニールハウス 
一本一本に 込めた情熱 マウス 
「いそがしい(=疲れた)」 なんて 言ってられん 
誇り高き産業 守るのが 使命
「おぞい(=悪い・粗末な)」 ことは しちゃあいけん
真っ直ぐに生きる これが河津の 流儀(いけん) 
夜になれば 満天の星と 
静かに寄り添う 河津の誇りよ

歴史が息づく 峰温泉 
湯煙の向こうに 見える新幹線? いや、天城越えの線
歴史が息づく 峰温泉 
湯煙の向こうに 見える新幹線? いや、天城越えの線

河津、いいとこ ずら? 

また来なよ。 俺らはここで、ずっと待ってる。 
Peace... (Fade out)

70年の歳月が育てた「町の誇り」

対談の冒頭、町長は誇らしげに河津桜の歴史を語ってくださいました。驚いたのは、今や全国に広まった河津桜の「原木」が、今もなお個人のお宅の庭にどっしりと根を張っているということです。

「70年前に偶然見つかった1本の苗木から、すべてが始まったんです。それを先輩方が手弁当で、30年かけて川沿いに植え続けてくれた。今の景色はその情熱の賜物なんですよ」

町長の言葉に、私は深く胸を打たれました。私がアメリカ留学から帰国し、ユーグレナの創業前に地方を回っていた頃に感じた「地域の底力」を、この850本の桜並木に見た気がしたからです。単なる観光資源ではない。そこには、自分たちの町を自分たちで彩ろうとした人々の意志が宿っています。

「17時でタクシーが消える」という現実への挑戦

しかし、華やかな桜祭りの裏側で、地方特有の深刻な課題も浮き彫りになっていました。それは「移動の空白」です。

観光地でありながら、河津町では夕方17時を過ぎるとタクシー含む公共交通機関が無くなり、移動の手段が無くなるのだそうです。これでは観光客は夜の街を楽しめず、地元の飲食店も活力を失ってしまいます。

ここで大川町長が見せたリーダーシップは、起業家である私の目にも非常にダイナミックに映りました。町長は議員時代から、規制の壁を乗り越えるべく「共助型ライドシェア」の実証実験を主導してきたのです。

「夜にお酒を飲みたいけれど足がない。そんな声に応えるために、商工会や観光協会、そして町民を巻き込んで、自分たちで車を出す仕組みを作ったんです」

実費相当の料金を徴収するこの取り組みは、全国的にも珍しい共助モデルとして注目を集めています。町長自らもハンドルを握り、ヘッドレストにメッセージを添えて乗客をもてなすというエピソードを聞き、これこそが「ニホンノチカラ」なのだと確信しました。国がすべてを用意するのではなく、地域が主体となって課題を解決していく。このマインドこそが、日本再生の鍵となります。

河津七滝、峰温泉大噴湯公園等、観光名所が沢山

子供たちが「帰りたい」と思える町

対談の終盤、町長が語った言葉が最も印象に残っています。 「河津町の子供たちは、将来この町に戻ってきたいと言う子が、周辺地域の中でも特に多いんです」

それは、中学生が桜祭りでボランティア活動に参加し、観光客におもてなしをする中で、「自分の町が誰かを笑顔にしている」という誇りを肌で感じているからだと言います。

私が「株式会社ニホンノチカラ」を立ち上げたのは、まさにこうした地方の誇りを発掘し、次世代に繋げたかったからです。映画館があるか、都会に近いかといった利便性ではなく、「この町が好きだ」と胸を張れる大人がどれだけいるか。河津桜という共通の誇りを持つこの町には、過疎を跳ね返すだけの強いエネルギーが満ちていました。

夜間の交通網の整備や、大型宿泊施設の再開など、課題はまだ山積みかもしれません。しかし、大川町長のような現場を知り尽くしたリーダーと、町を愛する住民がいれば、河津町は「観光の町」から「世界に誇れる地方創生のモデル」へと進化していくはずです。

私もまた、この美しいピンク色の景色を次世代に残すため、微力ながら応援し続けたいと思います。

天城の水で育ったわさびはこのエリアの特産

今井浜海岸など、河津の海は「美しく」「力強い」

河津町の情報まとめ

静岡県伊豆半島の東部に位置する、人口約6,200人の町。早咲きで知られる「河津桜」の発祥の地であり、毎年2月から3月にかけて開催される「河津桜まつり」には全国から多くの観光客が訪れる。天城山系に抱かれ、豊かな水と山々に囲まれた自然美が特徴である。

産業: 主産業は観光業。河津桜や七滝(ななだる)を中心とした観光資源が町の経済を支える。農業では、豊富な湧水を利用した「わさび」の栽培が盛んであり、柑橘類やカーネーションの生産も行われている。

文化・観光: 2月上旬から開花する河津桜の並木道が最大の見どころ。また、7つの滝が連なる「河津七滝」では、ハイキングやキャニオニングなどのアクティビティが楽しめる。伊豆の踊子の舞台としても知られ、歴史的な風情と豊かな自然が共存している。

グルメ: 天城の清流で育った「わさび」が名物。特に、すりたてのわさびを贅沢に乗せた「わさび丼」は観光客に大人気。また、伊豆ならではの新鮮な金目鯛や、町長の実家でもある「鰻(うなぎ)」など、食の魅力も非常に高い。

今回対談したリーダーのプロフィール

河津町 大川 良樹(おおかわ よしき)町長 地元、河津町出身。老舗鰻店「大川屋」を経営する傍ら、河津町議会議員を2期7年務める。議員時代から地域交通の課題解決に奔走し、2025年11月に河津町長に就任。「観光のトップセールス」と「町民の暮らしを守る交通網の構築」を掲げ、現場主義の町政を推進している。

筆者プロフィール

株式会社ニホンノチカラ 代表取締役。1975年愛媛県生まれ。18歳で渡米し、異文化の中で「日本の価値」を再認識。帰国後、株式会社ユーグレナの創業に参画し、取締役として東証一部(現プライム)上場に貢献。「ミドリムシで地球を救う」活動に20年捧げた後、2025年、原点である地方創生を目指し「ニホンノチカラ」を創業。全国1,718市町村を巡り、地方の宝を発掘する「1718ニホン探索」を継続中。