伊豆の玄関口・函南町で見つけた「100年の酪農魂」

函南町(静岡県)ーー1718ニホン探索(2/1,718)

2番目の訪問地、静岡県函南町。

全国1,718市町村を巡り、日本の底力を再発見する旅「1718ニホン探索」。第2番目の訪問地として降り立ったのは、静岡県東部、伊豆半島の北端に位置する函南町(かんなみちょう)です。お話を伺ったのは観光振興課の担当者様。

熱海や三島といった全国区の観光地に隣接しながらも、独自の静謐さと熱量を併せ持つこの町。役場を訪れ、町の未来を担う方との対話を通じて見えてきたのは、単なる「通過点」ではない、伊豆の「GATEWAY(玄関口)」としての強烈な自負と、次なる一手を模索する実直な姿勢でした。

訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。

Yo... 1, 2. 静岡の東、伊豆の入り口。
素通りさせねぇぞ、ここが函南。
「いいところだら?」って、胸張って言える場所。
準備はいいか? 丹那の風を感じな。

箱根の南、富士を仰ぐこの大地 
まずは十国峠、360度の特等席 
相模湾から駿河湾、視界は良好 
函南原生林、歩けば心も開放

歴史を刻む丹那断層、大地の記憶 
かんなみ仏の里、静かに見守る至福 
阿弥陀如来に手を合わせ、願う平和 
この街の誇りは、今も昔も色褪せやしねぇわ

ここは函南、俺らのホーム
丹那の恵み、心にフォーム
「おぞい(悪い)」ことなんて忘れちまう空
「いいだら?」「そうだら?」って笑い合うから
GATEWAY KANNAMI、未来へのパス
この街のビート、鳴らし続ける。

腹が減ったら道の駅 ゲートウェイ 
函南スイカの甘さ、他とはレベルがちげぇ 
夏はシャキッと、冬はイチゴの誘惑 
オラッチェでソフトクリーム、これが最高のプラン

忘れちゃいけねぇ、青いパックの丹那牛乳 
給食の思い出、体中に流れる自由 
「しょっきだす(驚く)」ほどの濃厚なコク 
酪農王国のプライド、一滴に凝縮

「何やっとるずら?」って声かける近所
「おえー(すごい)」って驚く、子供たちの表情
よそ者も、地元民も、混ざり合う交差点
温けぇ(あたたけぇ)人情、それが一番の自慢。
ここは函南、俺らのホーム
丹那の恵み、心にフォーム
「おぞい」ことなんて忘れちまう空
「いいだら?」「そうだら?」って笑い合うから
GATEWAY KANNAMI、未来へのパス
この街のビート、鳴らし続ける。
Yeah... 函南町。
また来やぁね(またおいで)。
丹那の風が、いつでも待ってるから。
Peace.

「100年のプライド」を搾る、丹那の酪農

函南町に入ってまず驚かされたのは、その「酪農」への圧倒的な熱量です。「丹那(たんな)牛乳」というブランド名を聞いたことがある方も多いでしょう。ここでは、なんと100年以上も続く牛の品評会「畜産共進会」が開催されています。町レベルでの開催回数が、県よりも多いという事実に、この地に根付く「本気度」を感じました。

特に印象的だったのが「全国大会でセカンドベストアダー(全頭中2位の乳房の機能美)」を獲得したというエピソード。牛の乳房という一点に心血を注ぎ、北海道勢という強豪がひしめく中で全国2位に食い込む。この職人気質なこだわりこそ、地方創生の核となる「唯一無二の価値」ではないでしょうか。盆地に広がる「酪農王国オラッチェ」で味わう一杯の牛乳には、1世紀かけて守り抜いてきた函南の人々の誇りが凝縮されていました。

「新幹線」から「猫踊り」まで、濃すぎる地域資源

函南町は、知れば知るほど「語りどころ」の多い町です。まず、全国的にも珍しい「新幹線」という地名。駅があるわけではなく、かつて東海道新幹線のトンネル工事に従事した人々の熱意がそのまま地名として残ったのだそうです。この「名付け」に込められた未来へのワクワク感は、起業家精神そのものです。

また、10月に行われる「猫踊り」祭り。人語を話す猫が踊り狂ったという民話から生まれたこの祭りは、参加者が猫メイクを施して踊るという、かなり攻めたイベントです。近年は夏の酷暑を避けて10月に開催時期を移したそうですが、これが大正解。秋の花火が珍しいこともあり、多くの人を惹きつけています。さらに、国宝級の仏像24体が集結する「かんなみ仏の里美術館」や、河津より都心に近く混雑を避けて楽しめる「河津桜の穴場」など、磨けば光る原石がゴロゴロと転がっています。

行政の限界を「民間の熱」で突破するべき

対談の後半、話題は町が直面するシビアな現実に及びました。函南町は国道沿いに「めんたいパーク伊豆」などの人気スポットを抱えていますが、それらは主に「立ち寄り」であり、法人税収という面では課題が残ります。また、高齢化に伴う公共交通の維持や、アクセスの難しさから旅館が減少している「畑毛温泉」の再生など、行政の力だけでは解決しきれない問題が山積しています。

ここで私が強く感じたのは、「行政が旗を振る時代の終わりと、民間のリーダーシップの必要性」です。

対談でも名前が挙がった、三島市の「加和太建設」さんのように、一企業がまちづくりに熱を持ち、ビジネスとして地域を牽引していく。そんな「カリスマ的な民間リーダー」がこの函南からも現れるか、あるいは広域で連携していくことが、この「ゲートウェイ」を本当の意味での「目的地」に変える鍵になるはずです。

函南の「余白」を、どうデザインするか

函南町は今、伊豆縦貫道の整備により、まさに「地面にタッチする地点(ゲートウェイ)」としての物理的なハブ機能を備えつつあります。ふるさと納税返礼品のプロジェクトチームを市の職員自らが立ち上げ、新商品開発に挑んでいるという話も伺いました。行政が「伴走者」となり、民間の「熱」を拾い上げる。その土壌は確実に耕されています。

100年の歴史を持つ酪農、唯一無二の地名、そして奇祭。これだけの材料が揃っていて、面白くならないはずがありません。私もこの「1718ニホン探索」を通じて、各地の熱い人材をここ函南へ繋ぎ、化学反応を起こしていけるのではないか――。そう感じる訪問となりました。

訪問日:2026年2月3日(火)

函南町の情報まとめ

静岡県の伊豆半島北端に位置する、人口約3.5万人の町。神奈川県箱根町と隣接し、古くから伊豆の「玄関口」としての役割を担ってきた。富士山を望む豊かな自然環境に恵まれ、酪農の歴史が深い丹那盆地や、国指定重要文化財の仏像群など、歴史・文化的遺産を多く有する。近年は伊豆縦貫道の開通に伴い、道の駅「伊豆ゲートウェイ函南」を拠点とした観光振興に力を入れている。

  • 産業: 140年以上の歴史を誇る酪農が基幹産業。「丹那牛乳」は高い知名度を持つ。また、スイカやトマトなどの農業も盛んで、特に「函南スイカ」は糖度が高く市場で評価されている。

  • 文化・観光: 鎌倉時代の仏像を展示する「かんなみ仏の里美術館」や、富士山と駿河湾を一望できる「十国峠」が有名。2月の「桜まつり」や10月の奇祭「かんなみ猫おどり」も人気。

  • グルメ: 丹那の牛乳をふんだんに使ったソフトクリームや「函南ミルキーコロッケ」。地元のトマトを使った加工品など、地産地消のグルメが豊富。

今回お話を伺った方

函南町役場 担当者様(産業振興) 函南町の観光・産業振興を担い、現場視点でのまちづくりを推進しています。伝統ある酪農の維持だけでなく、ふるさと納税を通じた新商品開発や、民間企業と連携した農泊事業、観光イベントのアップデートに奔走されてている。行政の枠を超え、いかにして町に「民間主導の熱量」を呼び込むかを常に追求する、情熱的な町の旗振り役であると感じさせる素敵な方でした。

筆者プロフィール

福本 拓元(ふくもと たくゆき) 株式会社ニホンノチカラ代表取締役。愛媛県新居浜市出身。株式会社ユーグレナ共同創業者として東証プライム上場を果たす。2026年より地方創生を目指す起業家として、「1718ニホン探索」プロジェクトを開始。全国1,718市町村を自ら回り、地域のリーダーとの対談を通じて、日本の可能性と課題を世界に発信している。