かいたブランドで描く、新しい時代のライフスタイル

海田町(広島県)ーー1718ニホン探索(94/1,718)

海田町(広島県)の現地取材写真

町制70周年の海田町。

海田町(広島県)の現地取材写真(2)

94番目の訪問地として足を運んだのは、広島県の中南部、広島市の東側に隣接するベッドタウン・海田町(かいたちょう)だ。これまで全国の様々な自治体を巡ってきたが、今回訪れた海田町は、これまでの地方自治体のイメージを大きく覆す、非常に洗練されたアプローチでまちづくりを進めている街であった。

広島市へのアクセスの良さから、周辺自治体との間で住宅地としての役割を担うことが多い同町であるが、彼らが選んだ道は「観光地としての生き残り」ではない。めまぐるしいスピードで変化する時代の中、あえて「暮らしやすさ」や「住み続けたいイメージ」に特化したブランディングを展開している。その中心にあるのは、全国的にも極めて珍しい「一級建築士」の資格を持つ町長の強いリーダーシップだ。

訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。

Yo, check this out.
広島の東、安芸郡からウェーブ。
派手さはねぇけど、ここが俺らのグラウンド。
カイタフルな日々、始めるよ!

瀬戸の潮風、ひたひた抜けるこの街 
日日(ひび)の暮らし、どこかおだやかな風情(ふぜい) 
「特になし」なんて武器に変えるセンス 
これがKaitaful Days、他にはないディメンション 
「〜じゃろ」「〜なんじゃけど」混ぜるネイティブフロウ 
あせらずにいこうや、自分らしくスロウ 
安芸の山並みと背中合わせのフラット 
チャリで漕ぎ出す、お気に入りのスポット

そうじゃね、気負わずいこう、ちょうどいい距離感
カキフライでも頬張りながら描く未来図
広島のベッドタウン、だけど人口は右肩上がり
ジモト愛、じんわりと心に灯る明かり
ホームページ開けば、思わず見とれるレイアウト
行政の枠超え、センスが跳ねるフロント
「あなたらしい、ちょうどいい暮らしを海田で」
その言葉通り、今日も歩み出す足元

まわる、まわる、海田のストーリー(70の足跡)
きょうも、あすも、この街で息づくストーリー
でっかい自慢はないけれど(それがどうした?)
ここにある温もりが、あたしのすべてじゃけん
かくれとる魅力、今こそブースト
鳴らせ、KAITAFUL FES. のビート!

歴史の足音、織田の軌跡に思い馳せ
変わる時代の中でも、残るものがあるぜ
繊維の街から、今の暮らしのライフライン
日日(ひび)の営みが作る、頑丈なマインド
スマホの画面から飛び出すフェスの熱気
町制70周年、お祝いのメッセージ
お好み焼きのヘラ、コツコツ鳴らす鉄板
この街のグルーヴ、誰にも止められんけん

ねえ、聞いてよ、この街の心地よさ
川面(かわも)に映る光、まるで絵の具のパレット
スーパーの帰り道、見上げる夕焼け空
「おかえり」の声が、一番やさしい音色じゃわ
みんなで作る未来、70年分の絆
これからのページ、私たちが刻む番
肩の力抜いて、深呼吸してごらん
ここが最高のホーム、海田町プラン!

派手じゃなくていい。
ちょうどいいが、一番いい。
過去から未来へ、バトンを繋ぐ。
せーのっ!

まわる、まわる、海田のストーリー(70の足跡)
きょうも、あすも、この街で息づくストーリー
でっかい自慢はないけれど(それがどうした?)
ここにある温もりが、あたしのすべてじゃけん
かくれとる魅力、今こそブースト
鳴らせ、KAITAFUL FES. のビート!

70周年、おめでとう海田!
これからも、ずっと一緒じゃけぇ。
Peace out.
バイバイじゃね!

デザインとクリエイティブで魅せる「Kaitaful Days.」の挑戦

町役場を訪れ、担当者の方にお話を伺う中で最も印象的だったのは、行政が発信する情報の圧倒的な美しさと細部へのこだわりだ。海田町は昨年、町の魅力を周知するためのブランドロゴとして「Kaitaful Days.」を策定した。町の公式ホームページやPRサイトでは、「あなたらしい、ちょうどいい暮らしを海田で。」というメッセージとともに、洗練されたライフスタイルメディアのような佇まいを見せている。

このデザインの背景には、北海道の「写真の町」として知られる東川町のホームページを強くモチーフにしたストーリーがあるという。一級建築士である町長のもと、広報紙や総合計画、チラシ一枚に至るまで、誰が作るものであれ「洗練されたものでなければならない」という美学が貫かれている。東京で実績を積んだ地元のデザイナー事務所の力も借りながら、外から来た人にとっても、地元に住む人にとっても誇らしく思えるクリエイティブが構築されている。

海田町(広島県)の現地取材写真:デザインとクリエイティブで魅せる「Kaitaful Days.」の挑戦

町制70周年を記念して「Kaitaful Fes.」が開催される。

海田町(広島県)の現地取材写真:デザインとクリエイティブで魅せる「Kaitaful Days.」の挑戦(2)

日本人初のオリンピック金メダリスト織田幹雄氏の功績等を展示している「織田幹雄スクエア」

人口が増加する街の理由と、未来へ向けたコミュニティづくり

数字を見れば、その取り組みの成果は歴然としている。海田町は、広島県内で数少ない「人口が伸びている自治体」の一つだ。高齢化率は県内で最も低く、なんと広島市よりも低い水準を維持している。定住意向や愛着度は85%を超え、徒歩圏内の人口カバー率の高さなど、生活利便性の高さが子育て世代の移住や定住を強く引き付けている。

特筆すべきは、単に「便利なベッドタウン」に留まらない、豊かなコミュニティの存在だ。多国籍の住民も多数暮らされており、日常の中に自然な国際性が溶け込んでいている。また、今年は町制70周年の節目であり、11月には「Kaitaful Fes.」という住民参加型の新しいお祭りが行われる予定だという。行政主導の堅苦しいシンポジウムではなく、住民と一緒に作り上げるフェス形式を取り入れ、次年度以降仮に規模が縮小したとしても「あの時期に帰れば仲間や友人に会える」という帰省のきっかけになるイベントを生み出そうとしている。単発で終わらせず、文化として定着させていく姿勢に、地方の未来の形を見た思いがした。

都市近郊という利便性を持ちながらも、住民のシビックプライドを醸成し、自分らしい暮らしをデザインできる街――。海田町が示す「ちょうどいい暮らし」の価値は、これからの日本が地方から再生していくための、一つの鮮やかな道標となるに違いない。

海田町(広島県)の現地取材写真:人口が増加する街の理由と、未来へ向けたコミュニティづくり

旧千葉家住宅

海田町(広島県)の現地取材写真:人口が増加する街の理由と、未来へ向けたコミュニティづくり(2)

薬師禅寺の「ひまわり観音」

海田町の情報まとめ

広島県の南西部、安芸郡に位置する、人口約3万人の町で、広島市のベッドタウンとして発展を遂げている。コンパクトな面積の中に生活インフラが高度に集約されており、県内で最も高齢化率が低く、子育て世代に選ばれるまちとして、定住人口を増やしている活気ある都市である。

産業:広島市中心部への抜群のアクセスの良さを活かした通勤・通学者が多く、近隣の巨大企業城下町であるマツダ関連の産業を支えるベッドタウンとしての側面を持つ。また、近年はデザインやクリエイティブを活用した地域ブランディングに力を入れている。

文化・観光:観光地としての派手さはないものの、日本初のオリンピック金メダリストである織田幹雄氏の出身地として知られる。現在は「Kaitaful Days.」を掲げ、洗練された広報戦略や住民参加型の「Kaitaful Fes.」など、新しいシビックプライドを醸成する独自の文化づくりに注力している。

グルメ:広島市や近隣の瀬戸内エリアの豊かな海の幸・山の幸に恵まれており、地元住民の日常の食卓を彩るローカルな味覚が根付いている。瀬戸内的温暖な気候が育んだみずみずしい食材が人々の暮らしを支えている。

今回お話を伺った方

海田町役場 かいたブランド課 ご担当者様 海田町の魅力発信やブランド戦略の最前線を担う。町制70周年記念事業である「Kaitaful Fes.」の企画運営や、新しいライフスタイルブランド「Kaitaful Days.」の展開を通じて、町の定住促進やシビックプライドの醸成に尽力している。

筆者プロフィール

福本 拓元(ふくもと たくゆき) 株式会社ニホンノチカラ 代表取締役。1975年愛媛県生まれ。18歳で渡米し、異文化の中で「日本の価値」を再認識。帰国後、株式会社ユーグレナの創業に参画し、取締役として東証一部(現プライム)上場に貢献。「ミドリムシで地球を救う」活動に20年捧げた後、2025年、原点である地方創生を目指し「ニホンノチカラ」を創業。全国1,718市町村を巡り、地方の宝を発掘する「1718ニホン探索」を継続中。

福本拓元(株式会社ニホンノチカラ代表)