四国の屋根に広がる大自然と「高原生活」の可能性
久万高原町(愛媛県)ーー1718ニホン探索(81/1,718)
四国カルスト「姫鶴平」
面河渓
全国1,718の市町村を自らの足と車で巡り、地域のリーダーや現場で汗を流す方々と対話しながら日本の未来を探る「1718ニホン探索」。81番目の訪問地として訪れたのは、私の故郷・愛媛県にある「四国の軽井沢」とも呼ばれる自然豊かな高原の町、久万高原町です。
松山市内から車を走らせること約1時間。緩やかな山道を抜けると、肌に触れる空気の温度が一気に変わるのが分かります。西日本最高峰の石鎚山を仰ぎ、四国カルストや面河渓谷といった圧倒的な景勝地を抱えるこの町は、標高差による冷涼な気候と豊かな森林資源、清らかな水に恵まれた素晴らしいロケーションを誇っています。
今回お話を伺ったのは、久万高原町役場 まちづくり戦略課のご担当者様です。町では「高原生活」という移住推進オウンドメディアを立ち上げ、都会では決して手に入らない暮らしの魅力を積極的に発信されています。
訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。
雲を抜けたら 広がるワンダー 天空の街へ ようこそ おいでなもし 澄んだ空気が 心を洗う ここが愛媛のてっぺん 久万高原 標高グッと上げていくルート 都会の喧騒 抜け出しシュート 四国カルスト 白い岩肌と放牧牛 風が吹き抜ける 天空の自由 エメラルドに輝く 面河渓の清流 癒やしのバイブス 永遠に巡る トマトにピーマン、瑞々しいりんご 清らかな水が育てるリンケージ 「がいな(すごい)」自然がここにある お山のごちそう 腹いっぱい食う おいでや 久万高原 高原生活 澄み渡る青空 心が洗われる 星降る夜空に 夢を描こう 「いんでこーわい」なんて言わせん街 暮らすほどに 好きになる場所 おいでなもし 我らの久万高原 お遍路さんが歩く 四国霊場 第44番・第45番 大宝寺に岩屋寺 歴史と自然が交差するステージ 古き良き町並み 繋ぐヘリテージ 「なんしよるん?」笑顔で交わす挨拶 人の温かさ 寒さも溶かす 移住も定住も 一歩踏み出せ 空き家もリノベで 新たな居場所へ 天体観測 満天のスターライト この街でなら 見つかるマイライフ おいでや 久万高原 高原生活 澄み渡る青空 心が洗われる 星降る夜空に 夢を描こう 「いんでこーわい」なんて言わせん街 暮らすほどに 好きになる場所 おいでなもし 我らの久万高原 春の桜、夏の避暑地 秋の紅葉、冬の銀世界 四季折々の風が吹く 久万高原で、待っとるけんね。
都会が喉から手が出るほど欲しい「絶対的資源」
対話の中で改めて強く感じたのは、久万高原町が持つ自然資源の絶対的なポテンシャルです。
近年、都市部の猛暑は命に関わるレベルに達しています。そんな中、久万高原町では夏場でも朝晩はエアコンが不要で、お盆を過ぎれば涼しさを通り越して肌寒さすら感じるほどです。蛇口をひねれば極上の天然水が流れ、近隣との助け合いや物々交換で新鮮な旬の作物が食卓に並ぶ——。お金だけに依存せず、自然のバイオリズムに合わせて心穏やかに暮らすライフスタイルは、都市生活に疲弊した人々にとって何物にも代えがたい価値を持っています。
町が運営する移住ポータルサイト「高原生活」というネーミングには、過疎化への危機感を前面に出すのではなく、「自然と調和した豊かな暮らし」をポジティブに提案する素晴らしい世界観が宿っています。
一方で、行政の現場が直面するリアルなジレンマも浮き彫りになりました。広大な町域に集落が点在する中、行政コストの観点からは生活インフラを効率化する「コンパクトシティ化」が理想とされますが、実際に移住を希望する方々は「森に囲まれた静かな一軒家で畑を作りたい」といった分散型の暮らしを望む傾向にあります。町では下水道未整備エリアに町営の合併浄化槽を導入するなどきめ細やかなインフラ維持に努めていますが、空き家の売買・賃貸におけるミスマッチや維持管理の労力など、乗り越えるべき課題は少なくありません。
四国カルスト。町内にこのような大自然を感じる景勝地が多いのも高原生活の魅力の一つ。
AI時代だからこそ輝く「生きる力」と教育の現場
対話は、これからの時代における教育や人材育成の話題へと広がりました。
町内唯一の高校である県立上浮穴高校では、少子化による存続の危機を乗り越えるべく「地域未来留学」制度を導入。現在では生徒の約半数が全国各地から集まっています。さらに、民間の中間支援組織「ユリラボ」と連携し、高校生自らが地域の課題を発見・解決するPBL(課題解決型学習)に取り組むなど、学校と地域が一体となった先進的な挑戦が始まっています。
生成AIが急速に進化し、従来の知識集約型ホワイトカラー業務が代替されつつある現代において、教育の価値基準は劇的に変化しています。大自然の中で五感を研ぎ澄まし、仲間と協働しながら身体を動かし、課題に立ち向かう経験——これによって培われる「体力」「人間力」「リーダーシップ」こそが、これからの激動の時代を生き抜く最大の武器になります。久万高原町という環境そのものが、次世代を担う子どもたちにとって唯一無二の学び舎になり得るのです。
石鎚山麓に広がる奇岩とエメラルドの清流が美しい「面河渓」
公民連携と外部の風が起こす化学反応を
四国カルストや面河渓谷といった圧倒的な観光資源も、昭和の観光ブーム期と比べると宿泊や消費の受け入れインフラにおいて転換期を迎えています。
しかし、これは決してネガティブな要素ではありません。松山市内から1時間圏内という立地を活かせば、完全移住だけでなく「週の半分を都市で働き、残りを高原で過ごす二拠点生活」や、企業のサテライトオフィス・データセンターの誘致など、多様な関係人口を呼び込む余地が十二分にあります。
地方創生の鍵を握るのは、行政が柔軟な枠組み(ルール)を整え、民間がアイデアと資本を投下して自走する「公民連携」の仕組みです。地元の方々にとっては見慣れた日常の風景であっても、外部の視点を取り入れることで、世界に通用するキラーコンテンツへと磨き上げることができます。
久万高原町が持つ「高原の涼しさ」「清流」「豊かな緑」という絶対的な自然価値は、人工的に作り出すことができない最大の強みです。この町に眠る宝を再編集し、新たなライフスタイルとして解き放っていく挑戦を、私も微力ながら応援していきたいと強く感じました。
町内に複数ある「道の駅」では、地元の清流が育んだ農産物や木工品等の特産品を購入する事が出来ます。
久万高原町の情報まとめ
愛媛県の中央部に位置し、四国山地の尾根に抱かれた人口約6,500人の町。四国カルストや面河渓、石鎚山といった西日本屈指の大自然を有し、夏は冷涼な気候から「四国の軽井沢」として親しまれている。
産業: 広大な森林資源を活かした林業・木材加工業が盛んなほか、冷涼な気候と清流水を活かした「久万高原清流米」や高原トマト、大根などの高冷地農業が発展している。
文化・観光: 西日本最高峰・石鎚山への登山口、国の名勝・面河渓、雄大なカルスト台地が広がる四国カルストなど屈指の自然観光地を誇る。また、四国霊場第44番札所大寶寺、第45番札所岩屋寺があり、お遍路文化が色濃く息づく。
グルメ: 昼夜の寒暖差と清流が育む「高原トマト」、ブランド米「久万高原清流米」、アマゴやアユなどの川魚料理、美川茶などが特産品として知られる。
今回お話を伺った方
久万高原町役場 まちづくり戦略課 ご担当者様 町の総合的な未来構想の策定をはじめ、地方創生関連事業、移住・定住の促進、官民連携プロジェクトの推進を担当。地域の豊かな自然と気候を強みとした移住ポータルサイト「高原生活」の運営や、地域運営協議会・中間支援組織と連携したコミュニティづくりに注力している。
筆者プロフィール
福本 拓元(ふくもと たくゆき) 株式会社ニホンノチカラ 代表取締役。1975年愛媛県生まれ。18歳で渡米し、異文化の中で「日本の価値」を再認識。帰国後、株式会社ユーグレナの創業に参画し、取締役として東証一部(現プライム)上場に貢献。「ミドリムシで地球を救う」活動に20年捧げた後、2025年、原点である地方創生を目指し「ニホンノチカラ」を創業。全国1,718市町村を巡り、地方の宝を発掘する「1718ニホン探索」を継続中。














