「ロマンと史実」が織りなす南国の風。千葉県館山市で見つけた地方創生のヒント
館山市(千葉県)ーー1718ニホン探索(51/1,718)
南国の雰囲気漂う館山の海岸線
全国1,718自治体を巡る「1718ニホン探索」の旅。51番目の訪問地として私が降り立ったのは、房総半島の最南端に位置する千葉県館山市です。
アクアラインを渡り、館山自動車道を南下して富浦インターチェンジを降りると、そこには都心の喧騒とは完全に切り離された別世界が広がっていました。海岸線に沿って美しく並ぶヤシの木、そして優しく吹き抜ける潮風。館山市役所の観光みなと課を訪ねると、ご担当者様が温かく迎え入れてくれました。
訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。
(Yeah, Check 1-2... 南房総の最先端) (青い海、吹き抜ける潮風、俺らのストリート) (館山、ぶち上げるぞ、行くべぇよ!) 東京からアクアラインぶっ飛ばし 気づけばヤシの木、南国の兆し 鏡ヶ浦(かがみがうら)に映る夕日、マジ綺麗 富士山をバックに、日々の悩みも消え 北条海岸、波とランデブー 城山公園(じょうやまこうえん)から見下ろすブルー 里見の歴史が息づくこの街 受け継ぐDNA、ブレない魂 あっち行けば「おんね(大層な)」美味いもん 地魚、伊勢海老、並ぶ市場 ピーナッツソフト片手にドライブ これが館山、最高なライフ 「あっちゃ(あそこ)」の海から「こっちゃ(ここ)」の街まで 響かすベース、途切れさせねぇ! ここは館山! 潮風がナビゲイト (海の向こうへ、夢をアップデート) 「だっぺ」じゃ終わらねぇ、俺らのプライド 常夏の風が背中を押すガイド (Come on!)「おめぇら(お前たち)」も一緒にステップ踏め この街の愛、決して絶やすんじゃねぇ! 夏だけじゃねぇ、一年中がシーズン 花菜(はこな)が咲き誇る、フラワーラインの自由 1月のマラソン、走るランナー 沿道の声援、温かいアンサー 昔ながらの「あんご(馬鹿)」な仲間と 夜になれば集まる、いつもの角(かど) 「〜けぇ(〜か?)」って問いかけ、飛び交う方言 「そうだっぺ!」って返す、いつもの光景 都会のスピードにゃ流されやしねぇ マイペースだけど、熱さは曲げねぇ 安房(あわ)のプライド、胸にガッチリ 韻を踏み散らし、決めるぜバッチリ! (Yeah... 祭りの夜、血が騒ぐ) やわたんまち(八幡の祭り)、神輿が揺れる あの熱気の中で、俺らは暮らす じいちゃんもばあちゃんも、若い奴らも 全員が繋がる、この場所、館山... ここは館山! 潮風がナビゲイト (海の向こうへ、夢をアップデート) 「だっぺ」じゃ終わらねぇ、俺らのプライド 常夏の風が背中を押すガイド (Come on!)「おめぇら」も一緒にステップ踏め この街の愛、決して絶やすんじゃねぇ! 「〜っしょ」じゃねぇ、これがリアルなライフ 館山(たてやま)の風、一生忘れない また明日もこの海が呼んでる (Yeah, Peace out... 房総の誇り) (館山、おっち(家)に帰るべぇよ)
夏の避暑地、そして冬の暖かさを誇る「南国リゾート」の謎
「東京よりも海風がある分、実は夏は涼しいんです。でも、行政として今一番推しているのは『冬の暖かさ』なんですよ」
ご担当者様が笑顔で教えてくれた館山の気候は、実に穏やかで豊かなものでした。私はアメリカでの4年間、多民族国家の多様な価値観に触れると同時に、日本の四季折々の自然や豊かな気候といった「日本の価値」に強い自信を持ちました。だからこそ、こうした地域の気候特性を活かしたアピールには、非常に強い関心があります。
街を歩いていて、私が経営者・創業者としての直感から、どうしても気になったのが「館山駅前」や「鏡ケ浦通り」の景観です。南国情緒を醸し出すヤシの木の背景に、なぜかエキゾチックなスペイン風の洋風建築が美しく並んでいるのです。この歴史的背景や街づくりの由来について、ご担当者様も「ぜひ詳しく調べてみてください」とのこと。独自の景観を育んだ街の歴史に、私の中の探索者としての好奇心が激しく揺さぶられました。
昨日訪れた洲崎灯台や、広大な海を一望できる「館山城」など、館山には「海と歴史」が完璧に融合した独自の観光資源が揃っています。基本的には海産物を楽しみながら、美しい海の風景と歴史を巡る。これこそが、館山観光の王道ルートなのです。
洲崎灯台
館山城
館山から眺める富士山
「里見八犬伝」というロマンを一次産業のブランドへ昇華させる
館山の歴史を語る上で絶対に外せないのが、戦国大名「里見氏」と、それをモデルにした滝沢馬琴の不朽の名作『南総里見八犬伝』です。市役所を訪れた際、市と外部の実行委員会が長年にわたり、里見氏をNHK大河ドラマに誘致する活動を続けていることを知りました。
「史実としての武将・里見氏と、物語としての里見八犬伝。この『事実とロマン』の両方をセットで感じてもらえるよう、観光協会さんを中心に『里見のまちづくり事業』を展開しています」
街の至る所で関連するイラストやキャラクターを目にするのは、まさに地域が一丸となってこのロマンを大切にしている証拠です。
私がビジネスの視点から特に驚かされたのは、この「ストーリー」を一次産業のブランディングに実に見事に組み込んでいる点です。その代表例が、物語のヒロインにちなんで名付けられたブランド牛「里見伏姫牛(さとみふせひめぎゅう)」です。
一般的にブランド牛といえば、地名を冠するものが大半です。架空の物語の登場人物をモチーフにした一次産業ブランドは全国的にも極めて珍しい。この里見伏姫牛を贅沢に使った「里見伏姫バーガー」が海岸線沿いで提供されており、まさに「ここでしか味わえないロマンの味」として観光客を魅了しています。さらに、南房総エリア全体では「里見うなぎ」や「伏姫さんが焼き」といった民間主導の自然発生的なブランド展開も見られ、地域に根付いた物語のパワーを強く実感しました。かつて私がユーグレナを全国に広めるために奔走した際も、その背景にある「物語」を伝えることを何より大切にしました。館山の取り組みには、現代の消費者が求める「ストーリー消費」の原形があります。
課題を宝に変える「館山ジビエ」と、伝統の「さんが焼き」
食の話題はこれだけにとどまりません。近年、館山が力を入れているのが「館山ジビエ」の展開です。
豊かな自然が残る館山では、畑作農家を悩ませるイノシシなどの有害鳥獣被害が深刻な課題となっていました。しかし、館山市はこれを単に駆除するだけでなく、民間委託の加工場「館山ジビエセンター」を設立。生活の害となるものを、付加価値の高い「地域の宝」へと見事に逆転させたのです。
新しくオープンした体験型の道の駅「グリーンファーム」では、このイノシシ肉を使ったジビエバーガーや、里見伏姫牛の加工品が販売され、ふるさと納税の返礼品としても大人気を博しています。地方の課題をビジネスの力で解決する――これは私が「ニホンノチカラ」で目指している地方創生の姿そのものであり、深く感銘を受けました。
また、郷土料理であるアジの「なめろう」を香ばしく焼いた「さんが焼き」をご当地グルメとして強力に推進。市内の複数店舗で異なる味を楽しめる仕組みを作り、観光客の「街の周遊」を促す仕掛けも見事です。
里見氏が建てた「館山城」天守閣からの眺め
里見伏姫牛を使用した「伏姫バーガー」ショップ
「南房総」という広域連携、そして観光の「量より質」への挑戦
現在、館山を訪れる主要な客層は、国内のファミリー層やアクティブシニアです。市内の「森羅(しんら)」をはじめとする高級オーシャンリゾートホテルは、海と極上の食を求める人々で賑わっています。
ここで面白いのが、館山市、南房総市、鋸南町、鴨川市などが「南房総観光連盟」として広域で連携している点です。観光客にとっては市境など関係ありません。鋸山を登り、保田小学校の道の駅に立ち寄り、館山の高級ホテルに泊まる。この「市境を意識させない広域プロモーション」は、これからの地方観光のあるべき姿だと確信しました。
一方で、これほど魅力的な資源がありながら、外国人観光客は年間1,000〜2,000人程度と、インバウンド市場はまだ未開拓の状態です。しかし、館山市の戦略は極めて冷静かつスマートでした。
「ホテルの収容キャパシティには上限があります。だからこそ、全方位に発信するのではなく、まずは文化交流のある台湾などにターゲットを絞り、何度も足を運んでくれる『ロイヤルカスタマー(リピーター)』を獲得する質重視の戦略を進めています」
これは、私がかつてユーグレナで未開拓の市場を切り拓いてきた経験、そして「地方発!日本再生」を目指す現在の視点からも完全に合致する「勝つためのターゲティング」です。海、城、歴史ロマン、そして富士山を望む絶景。日本独特のグルメ要素がこれだけ揃っている館山が、本気で観光の網を絞り込んだとき、一体どれほどの化学反応が起きるのか。今後の展開が本当に楽しみでなりません。
館山海沿いに複数あるリゾートホテル
漁船直結の「漁港食堂だいぼ」
渚の駅たてやま
館山市の情報まとめ
千葉県の房総半島最南端に位置する、人口約4万3,000人の都市。黒潮の影響による温暖な海洋性気候に恵まれ、「冬でも暖かい街」として知られる。戦国大名・里見氏の城下町であり、名作『南総里見八犬伝』の舞台としても名高い。鏡ヶ浦と呼ばれる穏やかな館山湾を望み、南国情緒豊かなヤシの木の並木や洋風の駅舎など、独特のリゾート空間が広がる歴史と海の街である。
産業:温暖な気候を活かした花の栽培(ポピー、菜の花など)やレタスなどの農業が盛ん。また、豊かな漁場を持つ定置網漁などの水産業、海岸線を活かした観光・宿泊業が基観産業となっている。近年は有害鳥獣を資源化する「館山ジビエ」のブランド化にも注力している。
文化・観光:里見氏の歴史を伝える「館山城(八犬伝博物館)」や「館山市博物館」、日本の白砂青松100選に選ばれた「鏡ヶ浦」、一般社団法人により運営される複合施設「渚の駅たてやま」などがある。また、里見氏の大河ドラマ誘致活動など、歴史ロマンを活かした街づくりが展開されている。
グルメ:新鮮な地魚を叩いた郷土料理「なめろう」と、それを焼いたご当地グルメ「さんが焼き」。地元漁協が運営する食事処で味わう定置網の海鮮。さらに、『里見八犬伝』にちなんだ希少なブランド牛「里見伏姫牛」を使用した「伏姫バーガー」や、地元のイノシシ肉を使った「ジビエバーガー」が人気を集めている。
今回お話を伺った方
館山市役所 観光みなと課 ご担当者様 館山市の観光振興およびみなとオアシスなどを活用した地域活性化を担う。史実である「里見氏」の歴史と、物語である「里見八犬伝」を融合させた「里見のまちづくり事業」の推進や、地域の課題である有害鳥獣を資源へと変える「館山ジビエ」のブランド化、郷土料理「さんが焼き」を活かした周遊型観光の仕掛けなど、地元の民間事業者や近隣自治体と密に連携しながら、地域に深く根ざした「質重視」の観光戦略を実践している。
筆者プロフィール
福本 拓元(ふくもと たくゆき) 株式会社ニホンノチカラ 代表取締役。1975年愛媛県生まれ。18歳で渡米し、異文化の中で「日本の価値」を再認識。帰国後、株式会社ユーグレナの創業に参画し、取締役として東証一部(現プライム)上場に貢献。「ミドリムシで地球を救う」活動に20年捧げた後、2025年、原点である地方創生を目指し「ニホンノチカラ」を創業。全国1,718市町村を巡り、地方の宝を発掘する「1718ニホン探索」を継続中。












