房総半島の最南端で触れた、100年を超える「皇室献上」のプライドと、7町村が織りなす「道の駅」の奇跡

南房総市(千葉県)ーー1718ニホン探索(52/1,718)

南房総市のブランド食品    「房州びわ」

「地方発!日本再生」を掲げ、全国1,718市町村を巡る私の旅。52箇所目の訪問地として足を運んだのは、千葉県房総半島の最南端に位置する南房総市です。

東京湾アクアラインを渡り、南へと車を走らせると、車窓の景色は徐々に爽快な美しい海岸線と、青々とした豊かな緑へと変わっていきます。東京からわずか1時間半ほどという距離でありながら、ここには全く異なる、穏やかで温かい時間が流れていました。

今回、お話を伺ったのは、南房総市役所の農林水産課と観光プロモーション課のご担当者様です。

私自身、かつてユーグレナ創業前にハイクロレラの営業として、車で全国の地方を津々浦々回っていた時期があります。その時に肌で感じた「地方の厳しい現実」と、そこに眠る「唯一無二の宝物」。南房総市で私を待っていたのは、まさにその両方であり、日本の地方が持つ底力を改めて確信する素晴らしい出会いとなりました。

訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。

朝もはよから 漁港が騒ぐ
乙浜、千倉の波を跨ぐ
白間津(しらまづ)の海風 彩るマイル
俺らの日常 これがオリジナルスタイル
「おめぇ、どこ行くべ?」って声が飛び交う
道の駅「とみうら」 枇杷(びわ)の香りに誘う
富山(とみさん)の緑 八犬伝のロマン
この街の魅力は 一切終わらん

夕暮れ、野島埼灯台のシルエット
波の音に重ねる 私のシークレット
「おんね(本当に)綺麗だっぺ?」って微笑む横顔
都会の喧騒忘れる ここがワンダーランド
和田浦のクジラ 歴史を噛み締め
大房岬(たいぶさみさき)から 明日を見つめ
潮風が髪を揺らす メロウな午後
ずっと変わらない 愛すべき居場所

南の房総 青に染まる大洋(オーシャン) 
心躍らせる この街のモーション 
「そうだっぺ?」って胸張って笑う 
「いんね(そうだね)」って未来へ舵を執る 
南房総・南風(まじ)の吹く街 あっちぇえ心の架け橋 
語り継ごうぜ 俺たちのこのストーリー

「べなぁ(~だなあ)」って呟く じいちゃんの背中
海と共に生きた 歴史はデカ(大)
伊勢海老、サザエ 海の恵みに感謝
地元の絆は 何よりも頑丈(タフ)だ
アクアライン抜けたらすぐのパラダイス
だけどここは譲れない 俺たちのベース
誇りを持って この地を踏みしめる
魂のライム ここに響かせる

きらめく青い海 どこまでも広がり
初夏の太陽が 迎える光
「寄ってきなよ」って 近所の温もり
不器用だけど 愛に溢れた街
海に沈む夕日が 明日へのエナジー
あなたと2人で 紡ぐこのシナジー
忘れないよ この波の音を
胸に抱いて 歩いていくよ

南の房総 青に染まる大洋(オーシャン) 
心躍らせる この街のモーション 
「そうだっぺ?」って胸張って笑う 
「いんね(そうだね)」って未来へ舵を執る 
南房総・南風(まじ)の吹く街 あっちぇえ心の架け橋 
語り継ごうぜ 俺たちのこのストーリー
 1718の輝き、ここが南房総 
どこにいたって、忘れないこの誇り 
「また来んべぇな」 
「待ってるっぺよ」 
潮風にのせて、Peace out...


栽培の北限で守り抜かれる、最高級「房州びわ」のプライド

南房総市の代名詞とも言えるのが、今まさにシーズン真っ只中を迎えている「房州びわ」です。

「びわは非常に寒害に弱い果物なんです。そのため、ここ南房総が栽培の北限とされています」

農林水産課のご担当者様がそう教えてくれました。南房総市は、長崎県に次いで全国2位の収穫量を誇る日本の二大産地の一つ。驚くべきは、その歴史と格式の高さです。なんと明治時代後期から現在に至るまで、毎年皇室への献上が続けられているといいます。

私自身、アメリカ留学時代に日本の食文化やものづくりの繊細さを外側から見て、その価値に感動した経験があります。この房州びわの栽培も、まさに職人技の結晶です。大房、田中、瑞穂、富房、希望といった品種があり、看板を掲げる大規模農園から小さな農家まで、100軒以上の生産者がプライドを持ってこの高級ブランドを支えています。

5月末から6月末までのわずか1ヶ月という限られたシーズンの間、現地では「びわ狩り」を求めて多くの観光客で賑わいます。私も現地でその美しく大粒な実を拝見しましたが、丁寧に袋がけされて育ったびわは、まるで芸術品のよう。一口かじれば、上品な甘みと溢れる果汁が口いっぱいに広がります。こうした「本物の価値」が地方には確かに存在しているのです。

「道の駅 枇杷倶楽部」から広がる、体験型観光の仕掛け

続いて、観光プロモーション課のご担当者様から、この特産品を活かした観光戦略について伺いました。

その中核を担っているのが、「道の駅とみうら 枇杷倶楽部」です。ここでは、びわの加工品販売はもちろん、大人気の「びわソフトクリーム」などが提供され、観光バスツアーの定番ルートとして圧倒的な集客力を誇っています。

ただ、南房総の魅力はびわだけにとどまりません。

原岡桟橋(岡本桟橋): 全国でも珍しい木製の桟橋で、天気が良ければ海の向こうに富士山を望む絶景スポット。ドラマや映画のロケ地としても有名で、SNSを通じて若い世代やドライブ客が殺到しています。

日本酪農の発祥地: 実は南房総は日本の酪農が始まった地でもあり、「酪農の里」などの歴史的施設もあります。

早春の花畑: 2月頃にはひと足早く春が訪れ、色鮮やかな花々が咲き誇ります。

東京から日帰り圏内というアクセスの良さは強みである一方、観光プロモーション課の皆様は「いかに宿泊につなげ、地域に深くお金を落としてもらうか」という、地方共通の課題にも真摯に向き合っていらっしゃいました。現在は円安の追い風もあり、インバウンドの目が地方へ向いています。この南房総の「絶景」と「食」を掛け合わせれば、さらに世界を惹きつけるコンテンツになると、私自身の胸も熱くなりました。

原岡桟橋(岡本桟橋)や野島崎灯台等、観光資源も豊富。

7町村の合併が生んだ「8つの道の駅」という、奇跡のグラデーション

取材の録音を終えた後、雑談の中で伺ったお話が、経営者として、そして地方創生を目指す者として非常に深く心に残りました。

南房総市は、平成の市町村合併によって「7つの町村」が一つになって誕生した街です。東京都23区の約3分の1という広大な面積を持っています。一般的に、大きな合併を行うと、相対的に小さな旧町村が衰退したり、地域の個性が薄れてしまったりする弊害が叫ばれがちです。しかし、南房総市は違いました。

なんと市内には、全国トップタイとなる「8つの道の駅」が存在するのです。

高速道路のインターチェンジがあり中心的な役割を果たす富浦地区、そして外房側の海産物を強みとするエリアなど、旧町村がそれぞれ持っていた独自の強みや文化を消すことなく、各道の駅が個性を尖らせて共存しています。今では、観光客がその個性の違いを楽しみながら「道の駅を巡る」こと自体が、南房総観光の大きな目玉になっているそうです。

行政の効率化を進めながらも、それぞれの地域が持つ「現場の良さ」と「市民サービス」を維持し続ける。地域の多様性をそのままエネルギーに変えている南房総市の街づくりには、日本再生への大きなヒントが隠されています。

南房総市には、全国トップタイの市内8つの道の駅が。

南房総市の情報まとめ

千葉県の房総半島最南端に位置する、人口約3万3千人の都市。太平洋と東京湾の二つの海に面し、黒潮の影響による温暖な気候に恵まれています。平成18年に7町村が合併して誕生し、広大な市域の中に多様な自然と文化が共存しています。

産業: 温暖な気候を活かした農業と水産業、そして観光業が基盤。特に「房州びわ」や「房州長菜」などの花卉栽培、沿岸漁業でのサザエやアワビ、伊勢海老の漁獲が盛んです。また、日本酪農の発祥地としても知られています。

文化・観光: 富士山を望む絶景スポット「原岡桟橋」や、白浜野島崎灯台が有名。全国トップタイの8つの道の駅を擁し、早春の花畑やびわ狩りなど、四季を通じて体験型観光を楽しめます。

グルメ: 明治から皇室に献上されている最高級「房州びわ」や、それを使ったスイーツが絶品。また、地魚を使った磯料理や網焼き、なめろう等の新鮮な海の幸も大きな魅力です。

今回お話を伺った方

南房総市役所 農林水産課 & 観光プロモーション課 ご担当者様 南房総市の二大産業である「第一次産業(農業・水産業)」と「観光業」の発展を現場で支えるエキスパート。同市が誇るブランド「房州びわ」の維持・皇室献上の伝統を守るための農協(JA安房)や農家への支援をはじめ、広大な市域に点在する8つの道の駅の特色を活かした観光ルートの開発、SNSやロケ地誘致を通じた若者・日帰り客のプロモーション活動に日々奔走されています。

筆者プロフィール

福本 拓元(ふくもと たくゆき) 株式会社ニホンノチカラ 代表取締役。1975年愛媛県生まれ。18歳で渡米し、異文化の中で「日本の価値」を再認識。帰国後、株式会社ユーグレナの創業に参画し、取締役として東証一部(現プライム)上場に貢献。「ミドリムシで地球を救う」活動に20年捧げた後、2025年、原点である地方創生を目指し「ニホンノチカラ」を創業。全国1,718市町村を巡り、地方の宝を発掘する「1718ニホン探索」を継続中。