悠久のアイヌ文化と極上の白老牛、そして「自宅に温泉」という豊かさ
白老町(北海道)ーー1718ニホン探索(28/1,718)
ポロト湖の湖畔から見る景色
地球の丸さを体感できる広大な海
札幌から車を走らせること約1時間20分。視界に飛び込んできたのは、水平線が永遠に広がる海と、平野、山、湖、川等大自然からなる北海道らしい風景の数々でした。
28番目の訪問地、北海道白老町(しらおいちょう)に足を踏み入れました。
車で踏切を横切る際、ふと左右を眺めて息を呑みました。線路が、見渡す限りの一直線なのです。担当者の方に聞けば、苫小牧から白老にかけては「日本一の直線線路」があるのだとか。その景色は、私がかつて夢を追いかけて過ごしたアメリカ・オクラホマ州の、どこまでも続く平原を思い出させました。異国情緒という言葉では片付けられない、北海道という土地が持つ圧倒的なスケールに、私の心は早くも高鳴っていました。
訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。
Yo, check it out. 北の大地、海と山に抱かれたTown. 白老(しらおい)、ここがウチらのRoots. 歴史を刻むポロトのほとり。 なまら熱いこの鼓動、聴いてけ。Shiraoi City! 朝もやに煙る 倶多楽(くったら)のカルデラ 神秘の蒼さに 飲み込まれるな アイヌの魂 息づくイオル(伝統的生活空間) 受け継ぐ文化 未来への扉 ウポポイの歌声 響く森の奥 先人の知恵が 俺たちのバックボーン 仙台藩の陣屋 守ったこの地 歴史の重み 背負って歩く道 「なまら」最高な 景色が広がる ポロトの風が 迷いを吹き払う ちょっと待って お腹空いたべ?(笑) 白老牛 焼ける音 堪んないっしょ サシの入った肉 口でとろける これ食べなきゃ 人生損してる 虎杖浜(こじょうはま)のタラコ 粒立ちキラリ ご飯が進む 箸が止まらない 海からの恵み 鮭(チェプ)の踊り お裾分け文化 ぬくもりを誇り 「したっけ」って笑う 近所のおじいちゃん 「あべ(おいで)」って呼ぶ 声に甘えちゃう 白老 誇り高き この場所で 時代を超えて 繋ぐ絆 白老 愛しき日々 この場所で めんこい笑顔 咲かせよう ポロトの水を 映した瞳で 明日を描こう どこまでも Shiraoi, keep it real. 離れても帰る場所 冬はしばれる(寒い) だけど心はHOT 温泉(ユ)に浸かれば 疲れも吹っ飛ぶ モール温泉 肌にツルツル 女子力アップ 自然の恵みクルクル しいたけ 卵 industryもタフ 支える背中 職人のグラフ 「あめはや(早く)」行こうよ 週末のイベント みんなが集まれば そこが最高地点(Point) 古い歴史と 新しい風 混ざり合って 描く虹の橋 寂しい夜は 波音を聞いて 白老の海が 抱きしめてくれる 俺たちの誇り 言葉じゃ足りない このリリックに 魂(Soul)を注ぎたい なまら好きだべ 白老! 白老 誇り高き この場所で 時代を超えて 繋ぐ絆 白老 愛しき日々 この場所で めんこい笑顔 咲かせよう ポロトの水を 映した瞳で 明日を描こう どこまでも Shiraoi, keep it real. 離れても帰る場所 また明日も この街で会おうね。 変わらない景色、変わりゆく未来。 したっけね(またね)。 Peace out, Shiraoi Town. One Love, One Community.
「通過型」から「滞在型」へ。白老の挑戦
役場の庁舎は失礼ながら年季が入ったものでしたが、そこで迎えてくださった産業経済課のご担当者様の話は、非常に情熱的で示唆に富むものでした。
白老町の人口は約1万4,000人。多くの地方自治体と同様、少子高齢化と若者の流出という課題に直面しています。札幌や千歳、登別といった有名観光地に囲まれているがゆえに、どうしても「通り過ぎられてしまう(通過型観光)」というジレンマ。しかし、今の白老には、その流れを堰き止めるだけの強力な「磁力」が生まれています。
その筆頭が、2020年に誕生した民族共生象徴空間「ウポポイ」です。
私も開館直後の時間にお邪魔しましたが、そこはまさに別世界でした。アイヌの歴史と文化が息づく、美しくも厳かな空間。インバウンドの観光客も右肩上がりで増えているといいます。役場の担当者様が「あそこだけは別世界のように立派なんです」と照れくさそうに笑っていたのが印象的でしたが、国の拠点施設があるということは、町にとって計り知れない資産です。
しかし、私が経営者としてより興味を惹かれたのは、その華やかな観光施設の裏側にある、白老独自の「産業の二面性」でした。
アイヌの民族共生象徴空間「ウポポイ」
白老牛の「山」と、虎杖浜の「海」
白老町の産業は、観光・漁業・畜産の三本柱。面白いのは、エリアによってその表情がガラリと変わることです。
町の中心部には、北海道が誇るブランド黒毛和牛「白老牛」の専門店が並びます。私もランチで伺った「牛の里」で、その味、品質の高さに唸りました。一方で、海側の「虎杖浜(こじょうはま)」エリアに移動すると、今度は全国的に有名なタラコをはじめとする豊かな海産物の世界が広がります。
「たっちゃん食堂」のような、地元の人に愛されるボリューム満点の海鮮の店。この「山(牛)」と「海(魚)」の両方を、これほど高いクオリティで併せ持つ町はそうありません。
北海道を代表する黒毛和牛ブランド「白老牛」
移住の鍵は「光熱費ゼロ」の床暖房?
対談の中で、私が最も驚いたのは、白老の移住施策でした。
「うちの町の特徴は、自宅で温泉が湧くエリアがあることなんです」
温泉付きの別荘地。それだけなら他にもありますが、白老の凄みはその「生活への密着度」です。町内会ごとに温泉管理組合があり、月々5,000円程度の管理費で、自宅のお風呂が温泉になる。さらに驚くべきは、その温泉熱を「床暖房」に活用している家庭が多いという点です。
北海道の厳しい冬において、ガスや灯油の光熱費は大きな負担です。しかし、温泉熱を活用すれば、冬場のコストを大幅に抑えられる。地区によってモール温泉(太古の植物由来の有機質を含む温泉)など泉質も異なり、まさに地球の恵みをダイレクトに生活インフラに組み込んでいるのです。
「石山地区などは本州からの移住者も多いんです」という話を聞き、単なる「憧れ」としての移住ではなく、「生活コストの最適化」という現実的な地方創生のヒントをここに見ました。
虎杖浜エリアには温泉旅館も
廃校を再生した「ナチュの森」に見る共生の形
登別へ向かう途中、担当者様に薦められて「ナチュの森」に立ち寄りました。ここは廃校を活用した化粧品工場と公園の複合施設です。(残念ながら取材当日は休館日でしたが)
白老にある倶多楽湖(くったらこ)は、日本有数の水質を誇る非常に透明度の高い湖です。その清らかな水を使った化粧品というものづくり。古い校舎が、子供たちの笑い声と洗練されたプロダクトが同居する空間に生まれ変わっている姿を想像し、私は確信しました。
地方の再生とは、新しいものを無理やり作ることではない。今ある「宝(水、温泉、文化、食)」を、現代の価値観で再編集し、世に解き放つことなのだと。
今回の訪問で、白老町が持つ「ニホンノチカラ」を強く実感しました。アイヌの言葉で「ポロト(大きな湖)」の畔に広がるこの町は、決して「通過点」ではありません。日本の精神性と、生活の豊かさが交差する、目的地となるべき場所でした。
白老牛の力強い味わいと、虎杖浜の潮風。そして、大地から湧き出る温かなお湯。そのすべてを胸に、私の探索は次の町へと続きます。
廃校をリノベーションした施設「ナチュの森」
白老町の情報まとめ
北海道の胆振地方に位置する、人口約1.4万人の町。アイヌ語で「白老(シラウオイ)」を語源とし、古くからアイヌ文化が息づく地として知られています。2020年には国立アイヌ民族博物館を含む「ウポポイ」が誕生し、文化伝承の世界的拠点となりました。
産業: 「観光・漁業・畜産」が基幹産業です。特に「白老牛」は北海道を代表する黒毛和牛ブランドとして知られ、高級食材として全国的に流通しています。また、虎杖浜(こじょうはま)地区を中心とした水産加工業も盛んで、タラコの生産量は日本屈指の規模を誇ります。
文化・観光: 民族共生象徴空間「ウポポイ」が最大の観光スポットです。また、日本一丸い湖とされる「倶多楽湖」やポロト湖周辺の豊かな自然、廃校を活用した体験型施設「ナチュの森」など、自然と歴史を活かした見どころが豊富です。
グルメ: とろけるような食感の「白老牛」のステーキやハンバーグが絶品。また、虎杖浜のタラコや新鮮な海鮮丼など、太平洋の恵みも存分に楽しめます。町内には温泉付きの飲食店も多く、食と癒やしを同時に堪能できるのが特徴です。
今回お話を伺った方
白老町 産業経済課 ご担当者様 白老町の魅力を内外に発信し、観光振興や移住促進、地域産業の活性化に奔走する。町の強みである白老牛や海産物だけでなく、インバウンド対応や、温泉付き住宅を活用したお試し暮らしの提案など、生活者視点での町づくりに情熱を注いでいる。
筆者プロフィール
福本 拓元(ふくもと たくゆき) 株式会社ニホンノチカラ 代表取締役。1975年愛媛県生まれ。18歳で渡米し、異文化の中で「日本の価値」を再認識。帰国後、株式会社ユーグレナの創業に参画し、取締役として東証一部(現プライム)上場に貢献。「ミドリムシで地球を救う」活動に20年捧げた後、2025年、原点である地方創生を目指し「ニホンノチカラ」を創業。全国1,718市町村を巡り、地方の宝を発掘する「1718ニホン探索」を継続中。












