レンガの温もりと小麦の香りに誘われて

江別市(北海道)ーー1718ニホン探索(27/1,718)

レンガ工場跡地を活用した商業施設「EBRI」

「EBRI」には「こだわりフード」と「くらしもの」が沢山

北海道の空はどこまでも高く、4月になっても路傍には名残雪が白く光っています。1,718市町村を巡る私の旅「1718ニホン探索」。今回訪れたのは、札幌市の東隣に位置する江別市です。

札幌からJRでわずか20分。車を走らせれば、景色は都市の喧騒から一変し、広大な農地と、どこか懐かしさを感じさせる赤レンガの建物が目に入ってきます。正直に言えば、訪れる前までは「札幌のベッドタウン」というイメージが先行していました。しかし、広報広聴課の担当者様とお話し、街を歩くうちに、その認識がいかに表面的なものであったかを痛感させられました。

訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。

Yo, 12号線をなぞるタイヤの音
石狩川の霧が晴れたら、そこがMy home
小麦の穂が風に踊る 午後3時
レンガの壁に、新しい物語(リリック)を刻もう

赤茶けた土の記憶 胸に刻み込む 
野幌の街並み 深く踏み込む 
塔が消えた空 少し寂しいけど 
変わらないこの空気 俺たちの鼓動

冬になれば なまらしばれる朝 
白い息吐き出し 歩き出すいざ 
EBRI(エブリ)の煙突 見上げて深呼吸 
わや熱い情熱 心に直結

「あずましく」過ごそう この場所が一番だべ

Ebetsu My Roots, Scarlet Sky 
1175℃(せんひゃくななじゅうごど) 消えない熱い想い 
石狩の流れ 明日へ続いてく 
「ハルユタカ」が揺れる 黄金(こがね)の波 
なまら好きだべ この街が 
江別の空は 昨日より高く見える

「文教のまち」 ノート広げるカフェテリア 
夢の種をまく このエリア 
焼きたてのパン 小麦の香る幸せ 
この街の恵み みんなにお裾分け

町村農場のソフト とろけるSweetness 
トンデンファームで 語り合うHappiness 
大麻(おおあさ)の並木道 夕日に染まれば 
帰りたくなくなる 不思議な魔法だ

「このチーズ、わや美味しいね!ついつい食べささるわ」
「だべ?したっけ、お土産も買ってくべ」

厳しい冬を越えて 強くなる雑草(草)のように
レンガを積み重ねて 歴史を創る私たち
「わや降ったね」って雪かきしながら
結局この街の 優しさに甘えてんだわ

Ebetsu My Roots, Scarlet Sky 
1175℃ 消えない熱い想い 
石狩の流れ 明日へ続いてく 
「ハルユタカ」が揺れる 黄金の波 
なまら好きだべ この街が 
江別の空は 昨日より高く見える

明日もいい日になるといいね。
ああ、またここで会おう。
江別、緋色に染まる故郷。 
したっけねー!


歴史を焼き固めた「赤レンガ」の矜持

江別の街を彩る赤レンガ。驚いたことに、現在でも日本のレンガ生産の約20%を江別が占めているといいます。かつてはもっと多くの窯元があったそうですが、今は「米澤煉瓦」と「昭和窯業」の2社がその伝統を繋いでいます。

「今は建材というより、装飾やインテリアとしての需要が主ですね」

担当者の方はそう謙遜されますが、明治15年、石炭を運ぶために鉄道が敷かれ、良質な粘土が取れるこの地に駅ができたことで発展したという歴史を聞き、私は胸が熱くなりました。そこには、「その土地にしかない価値」が凝縮されていたからです。

かつて私がユーグレナの創業期、石垣島でミドリムシの屋外培養に成功した時も、決め手となったのは「豊かな太陽と水」というその土地の利でした。江別にとっての粘土と鉄道も同じです。街中に何気なく存在する赤レンガの商店や倉庫は、単なる古い建物ではなく、この街のアイデンティティを焼き固めた、誇りの象徴なのです。

米澤煉瓦の本社工場

希少小麦「ハルユタカ」が紡ぐ、食のエコシステム

江別のもう一つの顔が「小麦」です。特に、一時は栽培の難しさから絶滅の危機に瀕した希少な小麦「ハルユタカ」の栽培方法を確立したのは、ここ江別の人々でした。

興味深いのは、単に小麦を生産しているだけではないという点です。「製粉業者があり、製麺業者があり、そしてパン屋がある。そのすべてのプロセスが江別の中で完結しているんです」というお話には、地方創生の大きなヒントが隠されていました。

近年、江別には個性的で魅力的なパン屋が急増しているといいます。札幌に比べて土地代が安く、それでいて11万人を超える人口という確かな市場がある。飲食店にとって、江別は「挑戦しやすい土壌」なのです。リスクを負って新しい価値を生み出そうとするパン職人たちが、この街を選び、小麦の香りで街を彩っている。その循環こそが、街に活力を与えています。

市内の土地の約半分は農地

町村農場。濃厚なミルクを使用したソフトクリームが有名。

「学園都市」としての静かな知性

江別の風景をさらに特徴づけているのが、4つの大学が集まる「学園都市」としての側面です。広大なキャンパスを持つ酪農学園大学をはじめ、街の標識には大学の名前が整然と並んでいます。

札幌という大都市の利便性を享受しながらも、一歩引いた場所で落ち着いて学び、暮らしを営む。特に一戸建てを求めて移り住む若い世代が多いという事実は、この街が「教育環境の良さ」という目に見えない価値を提供できている証拠です。

江別には、レンガの歴史、小麦の物語、そして学園都市の知性が、絶妙なバランスで共存しています。

取材の日、私はレンガ工場をリノベーションした商業施設「EBRI(エブリ)」を訪れました。そこには観光客向けの派手な演出ではなく、地元の人々が日常を慈しむ、穏やかで上質な時間が流れていました。

派手な観光地ではないかもしれない。しかし、そこには確かに、日本が誇るべき「暮らしの力」が根付いていました。江別の可能性は、この「日常の磨き上げ」の中にこそある。そう確信し、私は次なる目的地へと車を走らせました。

4つの大学が集中する「学園都市」としての機能も魅力の一つ

江別市 陶芸の里「セラミックアートセンター」

「蔦屋書店江別店」煉瓦造りで人気の商業施設

江別市の情報まとめ

北海道の石狩地方に位置する、人口約11万7千人の都市。明治期より、石狩川の舟運と鉄道の結節点として発展し、現在は札幌市のベッドタウンとして道内7位の人口規模を誇る。良質な粘土層に恵まれたことからレンガ製造が盛んになり、現在も日本有数のシェアを持つ「レンガの街」として知られている。また、4つの大学を有する文教都市としての顔も持ち、若い世代の定住も進んでいる。

産業: レンガ製造業が歴史的に有名。農業では小麦の生産が盛んで、特に希少種「ハルユタカ」の主産地として知られる。市内には製粉・製麺工場も集積し、食のサプライチェーンが確立されている。

文化・観光: 「江別市ガラス工芸館」やレンガ工場を改装した「EBRI(エブリ)」など、歴史的建造物を活かしたスポットが人気。毎年夏に開催される「焼き物市」は、多くのファンが集まる一大イベントとなっている。

グルメ: 「江別小麦」を使用したパンやラーメン、パスタが絶品。また、歴史ある「町村農場」をはじめとする酪農製品や、地元産の新鮮な野菜も豊富に揃う。

今回お話を伺った方

江別市 企画政策部 広報広聴課 ご担当者様 江別市の魅力を広く発信する。歴史的なレンガ文化から、近年のパン屋の集積まで、江別の「現在地」を客観的かつ情熱的に語ってくださいました。江別を「観光地というより日常の街」と捉え、移住者が満足できる文化的な街づくりを模索されています。

筆者プロフィール

福本 拓元(ふくもと たくゆき) 株式会社ニホンノチカラ 代表取締役。1975年愛媛県生まれ。18歳で渡米し、異文化の中で「日本の価値」を再認識。帰国後、株式会社ユーグレナの創業に参画し、取締役として東証一部(現プライム)上場に貢献。「ミドリムシで地球を救う」活動に20年捧げた後、2025年、原点である地方創生を目指し「ニホンノチカラ」を創業。全国1,718市町村を巡り、地方の宝を発掘する「1718ニホン探索」を継続中。