「歴史の重み」を未来への資産へ。1300年の時を刻む古都が抱える葛藤と挑戦

大宰府市(福岡県)ーー1718ニホン探索(23/1,718)

学問の神様「菅原道真公」を祀る「太宰府天満宮」

「学問の神様」として知られる菅原道真公を祀る太宰府天満宮。その門前町として賑わう太宰府市を訪れた。しかし、今回お話を伺う中で見えてきたのは、きらびやかな観光地の裏側にある、史跡の街ゆえの切実な葛藤と、それを突破しようとする新たな試みだった。

訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。

Yo, 筑紫の風、吹くこの街
歴史と未来が交差する場所
1300年の記憶、今、ビートに乗せて
We represent 太宰府 City!
都府楼(とふろう)の跡、広がる空
「西の都」の誇り、今もここにあら
政庁跡で風ば感じて、一歩踏み出す
昔の役人も見たっちゃろ?この展望ばい
観世音寺の鐘の音、心に沁みる
歴史の重み、バイブスで感じて行く
水城(みずき)の堤、守りの要(かなめ)
先人の知恵が、俺らの背中ば押すっちゃんね
梅ヶ枝餅(うめがえもち)の香ばしい匂い
食べて行かんね?熱々のうちに
天神様が見守る、この街で
ずっと語り継ぐ、太宰府の風
(Dazaifu Breeze, feel so good)
坂本八幡、令和の始まり
「初春の令月(れいげつ)、気淑(きよ)く風和(やわら)ぎ」
万葉の歌、今も息づいとうけん
古き良き心、守っていきたいっちゃん
参道ば歩けば、受験生の声
「合格ばして」って、牛ば撫でて願う
宝満山(ほうまんざん)登れば、四季折々の色
この街の景色、ばり素敵やろ?
九州国立博物館、青い屋根の向こう
新しい感性ば研ぎ澄まして
観光客も、地元の人も
みんな笑顔になれる場所やけん
ここが俺らの「ふるさと」、離れられんばい!
梅ヶ枝餅(うめがえもち)の香ばしい匂い
食べて行かんね?熱々のうちに
天神様が見守る、この街で
ずっと語り継ぐ、太宰府の風
学問の神様、感謝ばしとうよ
どこにおっても、心はこの街に
飛梅(とびうめ)のごとく、どこまでも
明日へ繋ぐ、太宰府ストーリー
Yeah, Dazaifu City...
また遊びに来んね!



「守ること」と「稼ぐこと」の狭間で

太宰府市を歩くと、至る所に「史跡」の看板が目に入る。市域の大きな割合を史跡が占め、大宰府政庁跡、水城跡、宝満山など、1300年前の息吹が今も色濃く残っている。

「史跡が多いことは最大の魅力ですが、同時に開発が厳しく制限されるということでもあります」

観光推進課の担当者(西鉄からの出向者)は、冷静に現状を語る。工場などの誘致が難しく、史跡の維持管理には多額の費用がかかる。歴史を「守る」ことが、行政としては税収面の課題に直結しているのだ。

私がこれまで見てきた多くの地方自治体でも、資源の保護と経済発展のバランスは常に議論の的だった。しかし、太宰府ほどの「歴史的制約」を抱えながら、年間1,000万人規模の参拝客を受け入れる街のプレッシャーは相当なものだろう。

「通過点」からの脱却:宿泊という新たな一手

太宰府の最大の課題は、観光客が「泊まらない」ことだ。 福岡市中心部から電車でわずか30分。多くの観光客は太宰府天満宮を参拝し、参道で梅ヶ枝餅を食べて、夜には博多や天神へ戻ってしまう。観光消費単価が上がりにくい「日帰り観光」の構造だ。

この流れを変える象徴的な取り組みが、古民家を活用した「ホテルカルティア太宰府」だ。 「宿泊数を稼ぐというより、古民家を保存し、太宰府に泊まるという『体験』の価値を高めるブランディングの意味合いが強いです」

太宰府は今、単なる参拝の場所から「歴史に溶け込む滞在の場」へと、その価値を再定義しようとしている。近年は民泊も増えているが、フロントがないことによる住民とのトラブルも課題だという。観光と住民生活の共生——。これは「地方創生」を語る上で避けては通れないテーマだ。

古民家を活用した「ホテルカルティア大宰府」

観光客のマナーと「誇り」の共生

インタビューの中で印象的だったのが、マナーの問題だ。 「年末年始のゴミの散乱など、実は日本人側の課題も目立ちます。マナー啓発は、玄関口である福岡空港や交通機関とも連携して発信していく必要があります」

ゴミ問題や渋滞。それでも住民が観光を「誇り」として感じ続けられるためには、過度な負担を抑える仕組みが不可欠だ。私は、この「誇り」こそが地域再生の源泉だと信じている。

マナー問題は外国人だけでなく、日本人も含む観光地の課題

編集後記:アートが繋ぐ1300年の物語

インタビュー後、私は初めて太宰府天満宮を参拝した。そこで驚いたのは、伝統の中に息づく「現代アート」の存在だ。ライアン・ガンダーなどのアーティストとコラボレーションした「太宰府天満宮アートプログラム」は、歴史を固定された過去としてではなく、現在進行形の文化として提示している。

さらに、紹介いただいた「観世音寺(かんぜおんじ)」の宝物殿へも足を運んだ。5メートルを超える巨大な仏像が並ぶ様は圧巻で、天満宮の喧騒とは対照的な、静謐な時間が流れていた。

太宰府は、過去の遺産で食いつなぐ街ではない。1300年の歴史という重厚なベースの上に、現代の感性を重ね、次の1000年を創ろうとしている。そのエネルギーに触れ、私自身の「ニホンノチカラ」を発掘する旅も、より一層熱を帯びていくのを感じた。

大宰府政庁跡地

観世音寺

九州国立博物館

太宰府市の情報まとめ

福岡県の中西部に位置する、人口約7万人の都市。古代九州を統括した「大宰府」が置かれ、大陸との外交・防衛の拠点として栄えた歴史を持つ。市内には太宰府天満宮をはじめ、大宰府政庁跡、水城跡などの国指定史跡が数多く点在し、街全体が「屋根のない博物館」とも称される。

産業:観光業が中心。特に門前町の商業が活発。農業では「梅」の生産が有名で、加工品開発も盛ん。

文化・観光:全国約12,000社の天満宮の総本宮「太宰府天満宮」が最大の観光拠点。近年は「鬼滅の刃」の聖地として竈門神社も脚光を浴びた。九州国立博物館ではアジアとの交流史を学べる。

グルメ:名物は「梅ヶ枝餅(うめがえもち)」。菅原道真公にまつわる伝統的な餅菓子で、参道には多くの専門店が並ぶ。また、太宰府発祥の合格ラーメンなども人気。

今回お話を伺った方

太宰府市 観光推進課 責任者 西日本鉄道株式会社(西鉄)より太宰府市役所へ出向。民間企業の視点を活かし、観光地のブランディング、地域交通と連携したマナー啓発活動などに尽力。観光客の回遊性向上と地域住民の生活維持の両立を目指して活動中。

筆者プロフィール

福本 拓元(ふくもと たくゆき) 株式会社ニホンノチカラ 代表取締役。1975年愛媛県生まれ。18歳で渡米し、異文化の中で「日本の価値」を再認識。帰国後、株式会社ユーグレナの創業に参画し、取締役として東証一部(現プライム)上場に貢献。「ミドリムシで地球を救う」活動に20年捧げた後、2025年、原点である地方創生を目指し「ニホンノチカラ」を創業。全国1,718市町村を巡り、地方の宝を発掘する「1718ニホン探索」を継続中。

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