機能美と歴史が交差する「ザ・ベッドタウン」の誇り

春日市(福岡県)ーー1718ニホン探索(22/1,718)

市民の憩いの場。春日公園。

全国1,718市町村を巡る「1718ニホン探索」。22番目の訪問先として降り立ったのは、福岡県春日市です。

実は私にとって、福岡は非常に縁の深い土地でもあります。前職のユーグレナ時代、グループ会社のスタッフが福岡に一番多い関係で、毎月のようにこの地を訪れていました。車を走らせれば何度も通っていたはずの春日市。しかし、改めて「探索者」として向き合うと、そこには今まで見落としていたこの街独自の「設計思想」と「歴史の足跡」が凝縮されていました。

訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。

Yeah, Welcome to my hometown... K-A-S-U-G-A.
どこに居っても、結局ここに戻ってくるっちゃんね。
準備はいい? 春日の風、感じていこう!

朝の光 春日公園 ジョギングのStep
緑のトンネル抜ければ 心もReset
歴史のロマン 須玖岡本(すくおかもと)
弥生の記憶が 今も息づいとうと
奴国の丘で見つける 青銅の煌めき
春日神社で 手を合わせ祈る
藤の花が揺れる 季節を彩る
「お疲れ様」って 街が言いよる気がして
また明日も 頑張れるっちゃけん

We love KASUGA 笑顔が集まる場所
アクセス最高 JRに西鉄
どこへ行くと? 天神? 博多?
すぐそこやん 便利すぎっちゃが!
住めば都 春日は私の誇り
ずっとこの街で 夢を描いていくっちゃん
K-A-S-U-G-A, Everyday, Bloom!
ふれあい文化センター イベントも盛りだくさん
白水大池(しろうずおおいけ) 噴水がDance
お腹が空いたら 美味しいもん食べよう
ラーメンにうどん 地元の味で満たそう
「春日の婿押し(むこおし)」 伝統守るバイ
ユネスコの宝 みんなで繋ぐ将来(さき)
買い物なら アクロスモールに春日原
どこにおっても 人の温かさがあるっちゃんね
「あがたの道」を ゆっくり歩こう
We love KASUGA 笑顔が集まる場所
アクセス最高 JRに西鉄
どこへ行くと? 天神? 博多?
すぐそこやん 便利すぎっちゃが!
住めば都 春日は私の誇り
ずっとこの街で 夢を描いていくっちゃん
K-A-S-U-G-A, Everyday, Bloom!
春日市、よか街やろ?
みんなも遊びに来んね!
待っとるよー!
また明日ね。
春日市、よか街やろ?
みんなも遊びに来んね!
待っとるよー!
また明日ね。
大好き、春日!

コンパクトに凝縮された「過ごしやすさ」の正体

春日市を一言で表現するなら、まさに「ザ・ベッドタウン」。 市役所に一歩足を踏み入れ、秘書広報課の担当者様とお話ししてすぐに確信しました。市域面積は約14.15平方キロメートルと非常にコンパクトながら、そこに約11.1万人もの人々が暮らしています。

「住民の方からは『過ごしやすい街』として高い評価をいただいています」

担当者様が誇らしげに語る通り、この街には生活に必要な機能が驚くほど高密度に、かつ整然と配置されています。市役所の周辺を見渡せば、警察署や文化施設、そして広大な公園がすぐそこにあります。病院や商業施設も徒歩圏内に揃い、JRと西鉄のダブルアクセスで博多や天神までわずか10分台。

この「計画的な美しさ」はどこから来たのか。その答えは、この街が歩んできた激動の歴史にありました。

市民の憩いの場「春日公園」の桜

武器工場から「米軍ハウス」、そして希望の住宅地へ

意外だったのは、この整然とした街並みのルーツが戦時中の「武器工場」にあったことです。

かつてこの一帯には国の軍事施設が広大に広がっていました。戦後、その土地は米軍に接収され、いわゆる「米軍ハウス」が立ち並ぶエリアとなったのです。

米軍が撤収した後、そのまとまった広大な跡地があったからこそ、春日市は他の自治体には真似できないスピードと規模で、理想的な都市開発を進めることができました。市役所のすぐそばに航空自衛隊や陸上自衛隊の駐屯地があるのも、その歴史の名残です。

負の遺産ともなり得た軍事施設の跡地を、市民の生活を支えるインフラへと見事に転換させた先人たちの知恵。私がアメリカ留学時代に感じた「日本の底力」のようなものを、この街の区画整理一つからも感じずにはいられませんでした。

白水大池公園展望台から見る眺め

都市に調和する「水と緑」

住宅密集地でありながら、春日市には息苦しさがありません。それを支えているのが、豊かな緑地と水辺です。

今回、特に印象に残ったのが「白水大池公園」です。筑前三大池の一つに数えられる巨大な溜池を囲むこの公園は、単なる憩いの場を超え、街のシンボルのような存在感を放っています。かつて農業用水として地域を潤した水面が、今は市民のウォーキングコースや子供たちの遊び場として愛されている。

また、市役所隣の「県営春日公園」も圧巻の広さです。訪問時はちょうど桜のシーズン直前でしたが、満開の時期にはどれほど多くの家族連れの笑顔が溢れることか。機能一辺倒ではない、「心の豊かさ」が設計に組み込まれているのです。

アクロスモールやフォレストシティ等商業施設も充実

「住宅都市」ゆえの葛藤と挑戦

しかし、経営者としての視点で見ると、春日市が抱える課題も見えてきました。 一つは、あまりの利便性ゆえの「交通渋滞」です。県道31号線などの主要道路の混雑は、住民の切実な悩みとなっています。また、新規に開発できる土地がほぼ残されていないため、今後は「春日原駅」周辺のような既成市街地の再開発が鍵を握ります。

そして、最も考えさせられたのが「ふるさと納税」の課題です。 春日市は純粋な住宅都市であり、目立った特産品や大規模な工場が少ない構造にあります。そのため、住民税が安定している自治体ほど、ふるさと納税制度によって税収が他自治体へ流出してしまうという「逆転現象」に直面していました。

「西日本で唯一、5〜6年連続で税収が減少した時期もありました」という担当者様の言葉には、制度の歪みに対する現場の苦悩が滲んでいました。

特産品がないなら、どう付加価値を作るか。最近では、市内の人気スーパー「ロピア」などと連携し、新たな取り組みを模索しているそうです。これは日本中のベッドタウンが直面する共通の課題であり、我々「ニホンノチカラ」としても解決のヒントを探るべき重要なテーマだと感じました。

地名の由来にもなっている「春日神社」

探索を終えて

春日市は、派手な観光地があるわけではありません。しかし、そこには歴史を乗り越え、人の営みを最優先に考え抜かれた「住まいの理想形」がありました。

「地方再生」とは、単に過疎地を救うことだけではありません。春日のような成熟した住宅都市が、いかにして持続可能な活力を維持し続けるか。地方創生にも色々な形がある事を改めて学ばされた訪問となりました。

春日市の情報まとめ

福岡県の中央部に位置する、人口約11.1万人の都市。福岡市の南側に隣接し、JRと西鉄の両路線が利用可能な極めて利便性の高い「ザ・ベッドタウン」として発展してきました。戦時中の武器工場跡地や米軍接収地の跡地を利用した計画的な都市開発が行われ、コンパクトな市域に公共施設、住宅、商業地が機能的に集積しています。

産業: 製造業や一次産業は少なく、第3次産業が中心の「住宅都市」構造。近年は、市内で最後に開発された「フォレストシティ」エリアに大型商業施設(ロピア、ミスターマックス等)が集積し、周辺自治体からも集客する商業拠点となっています。

文化・観光: 日本最大級の新幹線車両基地を一望できる「新幹線の見える丘」や、筑前三大池の一つを整備した「白水大池公園」が有名。また、奴国の中心地であった歴史を持ち、国指定史跡の「須玖岡本遺跡」など、古代史の宝庫としての側面も持ち合わせています。

グルメ: 住宅街の中に実力派のパン屋やカフェ、地域密着型の飲食店が点在。近年は大型商業施設内のグルメスポットも充実しており、福岡市内のベッドタウンらしい多様な食文化が楽しめます。

今回お話を伺った方

春日市役所 秘書広報課 広報広聴担当者様 春日市の魅力を市内外に発信し、住民の声を行政に届けるパイプ役を担う。今回の取材では、街の成り立ちから自衛隊との歴史的背景、さらにはふるさと納税における税流出の課題まで、現場のリアルな視点を包み隠さず共有していただきました。住民の「過ごしやすさ」を維持するための情熱と、都市再開発に向けた冷静な分析力を持つ。

筆者プロフィール

福本 拓元(ふくもと たくゆき) 株式会社ニホンノチカラ 代表取締役。1975年愛媛県生まれ。18歳で渡米し、異文化の中で「日本の価値」を再認識。帰国後、株式会社ユーグレナの創業に参画し、取締役として東証一部(現プライム)上場に貢献。「ミドリムシで地球を救う」活動に20年捧げた後、2025年、原点である地方創生を目指し「ニホンノチカラ」を創業。全国1,718市町村を巡り、地方の宝を発掘する「1718ニホン探索」を継続中。