ゼロから立ち上がる「挑戦の聖地」へ。浪江町が描く2040年の未来と再生可能エネルギーの可能性
浪江町(福島県)ーー1718ニホン探索(84/1,718)
福島県浪江町 吉田栄光町長(右)
2027年春に完成予定の「国営追悼・祈念施設」
全国1,718すべての市町村を巡り、地域の最前線で戦うリーダーたちと対話する「1718ニホン探索」。84番目に訪れたのは、福島県双葉郡浪江町です。
2011年の東日本大震災と東京電力福島第一原発事故により、全町民が避難を余儀なくされ、町の営みが一度完全に「ゼロ」になった場所。原発からの距離や除染の進捗もあり、住民の帰還が始まったのは他の被災自治体よりも遅い時期でした。だからこそ浪江町は、震災・原発事故から15年が経過した今まさに、本格的な復興と新たなまちづくりが立ち上がっている現場です。
今回は町のホームページから対談をお願いしたところ、吉田栄光町長が快く迎えてくださいました。
訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。
浜通りに吹き抜ける風 請戸の海が見つめる夢 あの日止まった時計の針を いまオレたちの手で動かせ ゼロからのスタート ここが浪江町 大堀相馬焼 青ひびの誇り 熱々の焼きそば 極太の誇り あの日離れた故郷の土 1万2千の想いを背負い 「おめぇ、元気にしてたがい?」 交わす言葉 涙拭って見上げた空は まだ青いまんまだ 移住者も地元も関係ねぇべ 集まる仲間 新しい風をここで起こすんだ 立ち上がっぺ浪江 未来を灯せ 阿武隈の風が背中を押すぜ クリーンなエネルギー 水素の街へ ゼロから描く オレたちのStory 何回でも咲かす大輪の花 ここから始まるネクストステージ FH2R 創り出す水素 太陽の光を力に変えよう 風力発電 回るプロペラ 変わりゆく景色 恐れはしねぇから 「んだがらこそ」前を向くんだ 2500の鼓動 響くこの地で 懐かしい過去と最先端の交差点 オレたちが切り拓くフロンティア 立ち上がっぺ浪江 未来を灯せ 阿武隈の風が背中を押すぜ クリーンなエネルギー 水素の街へ ゼロから描く オレたちのStory 何回でも咲かす大輪の花 ここから始まるネクストステージ 忘れねぇ過去 紡ぎ出す明日 誰も置いていかねぇ この道を進む ただいま おかえり 響く浪江へ 光射す未来へ We keep moving on.
住民の4割が「新しい町民」。ゼロからの挑戦に集う人々
かつて約21,000人(震災直前は約14,000人)が暮らしていた浪江町。現在、町内に居住しているのは約2,500人です。その内訳を聞いて驚きました。なんと約4割弱が、震災後に町外から新しく移り住んできた新しい町民であり、その多くを若い世代が占めています。
吉田町長は「いずれこの比率は逆転し、町外出身者が多数派になるでしょう」と語ります。
一度すべてがリセットされた土地だからこそ、既存のしがらみにとらわれず、ゼロから新しい社会を創り出せる。そんな町の気概に惹かれ、起業家や研究者、新しい農業・産業に挑む挑戦者たちが集まってきています。
震災遺構 浪江町立 請戸小学校
津波が2階レベルに到達した請戸小学校の教室
国営追悼・祈念施設の献花台
浪江駅前開発(2030年頃完成予定)が、未来のこの町の復興シンボルになる
再エネ100%の街へ。世界最先端の水素拠点が拓く未来
車を走らせると、広大な阿武隈山系を背景に太陽光パネルや風力発電施設が広がります。浪江町は「再生可能エネルギー100%」を掲げ、太陽光・風力・水力、そして「水素」を組み合わせた先進的なエネルギー循環都市を目指しています。
町内にある世界最大級の水素製造拠点「FH2R(福島水素エネルギー研究フィールド)」は、実証段階を経て、東京都営バスなどへの供給をはじめとする実用化フェーズに入りました。さらに、当初2030年を目標としていた公共施設電力の再エネ100%化を、大幅に前倒しして今年達成。駅周辺の再開発地区では、生活インフラそのものに水素を取り入れた次世代型のスマートタウン整備が進んでいます。
エネルギーだけではありません。2,000頭以上の牛をAIで一元管理する国内最大級の先進酪農牧場や、東北一の規模を誇る集成材工場の稼働など、国の手厚い支援制度も後押しとなり、大規模な実証・産業拠点が続々と生まれています。
福島水素エネルギー研究フィールド
阿武隈風力発電所
浪江町中南部一帯に広がる太陽光発電パネル
「帰還の強要」ではなく、自然と惹きつけられる森を育てる
町外で避難生活を続ける約12,000人の町民に対しては、広報誌の全戸送付や避難先での町政懇談会を通じて丁寧に対話を続けています。15年という歳月は、避難先で新しいコミュニティや生活基盤を築くには十分すぎる時間です。高齢化も進む中、「帰ってきてほしい」と無理に促すことは非常に繊細な問題です。
吉田町長は静かに語ってくださいました。
「今私がやっている復興は、生きている間に完成形を見ることはできないかもしれない。でも、2040年以降の本格的な人口減少社会を見据え、次の世代が生き残れる町にするための木を、今植えているんです」
浪江町単体で囲い込むのではなく、近隣の市町村と広域で連携し、それぞれが異なる色を持つ「大きな森」のような地域社会をつくる。町が挑戦の場として輝きを取り戻せば、水が自然と湧き出るように、いつか戻りたい人や新しく関わりたい人が集まってくるはずです。
伝統工芸「大堀相馬焼」の窯元も町内での再興を果たし、歴史の継承と最先端のイノベーションが交差する浪江町。ゼロからの再起にかけるこの熱量は、日本全体の未来を照らす確かな光だと確信しました。
大堀相馬焼
浪江の日本酒
なみえ焼きそば
町の中心部にある「道の駅なみえ」。ポケモンのラッキー公園も。
浪江町の情報まとめ
福島県浜通り地方の北部に位置する、人口約2,500人(居住人口)の町。東は太平洋、西は阿武隈高地に囲まれ、豊かな自然と長い歴史を有します。東日本大震災と原発事故による全町避難を経て、現在は世界最大級の水素製造拠点「FH2R」を中心とした再生可能エネルギー都市、および先進産業の実証拠点として力強い復興を進めています。
産業: 一次産業(水稲を中心とする農業・請戸ものに代表される漁業など)、水素・再エネ関連産業、AIを活用した大規模酪農、木材加工・集成材製造、先端技術の実証実験など。
文化・観光: 国の伝統的工芸品である「大堀相馬焼」、請戸川のリバーライン(桜並木)、請戸漁港、道の駅なみえ。
グルメ: 極太麺と濃厚ソース、豚肉とモヤシが特徴のご当地グルメ「なみえ焼そば」、請戸漁港水揚げの新鮮な魚介類。
今回お話を伺った方
浪江町長 吉田 栄光(よしだ えいこう)氏 福島県双葉郡浪江町長。福島県議会議員を経て、2022年に浪江町長に就任。大震災と原発事故からの本格的な復興の指揮を執り、再生可能エネルギー100%のまちづくりや水素社会の実現、先端産業・スタートアップの誘致、駅周辺再開発など、次世代を見据えた挑戦的な町政運営を推進している。
筆者プロフィール
福本 拓元(ふくもと たくゆき) 株式会社ニホンノチカラ 代表取締役。1975年愛媛県生まれ。18歳で渡米し、異文化の中で「日本の価値」を再認識。帰国後、株式会社ユーグレナの創業に参画し、取締役として東証一部(現プライム)上場に貢献。「ミドリムシで地球を救う」活動に20年捧げた後、2025年、原点である地方創生を目指し「ニホンノチカラ」を創業。全国1,718市町村を巡り、地方の宝を発掘する「1718ニホン探索」を継続中。






















