日本の防衛の原点と、新たな複合防衛拠点への挑戦
呉市(広島県)ーー1718ニホン探索(97/1,718)
大和ミュージアムの「10分の1戦艦大和」
「とびしま海道」から眺める瀬戸内の島々
私たちが暮らす日本という国は、長い歴史の中で幾多の困難を乗り越えてきました。そして今、地政学的なリスクが高まる中で、改めて「国を守るとはどういうことか」「地域が持つ本来の強さとは何か」を深く問い直す時期にきています。
1,718の市町村を巡る「1718ニホン探索」の旅。第97番目の訪問地として選んだのは、広島県呉市です。第二次世界大戦まで日本最大級の軍港として戦艦大和などを生み出し、戦後は日本の防衛の最前線を担い続けてきたこの街で、私はこれからの日本再生に向けた大きなヒントと、揺るぎない覚悟を見出しました。
訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。
Yeah... 呉、瀬戸の海風 錆びない魂、響かすぜ ドックの鼓動、今も胸に 聞けよ、この街のBGM... 呉線に乗って抜け出すトンネル 車窓に広がる青、エメラルドの海原 男たち汗流した 呉鎮守府のプライド 大和の背中が今も背中を押すシャウト 海軍カレーの隠し味、珈琲の香り 坂の上のポッチから見下ろす港の灯り アレイからすこじま潜水艦の影 日常に潜む圧倒的なマテリアル、構え 揺れる瀬戸内、グレーの鉄(てつ)と青(ブルー) 戦艦(やまと)の血潮(ちしお)を受け継ぐこの街からFly 歴史(ルーツ)を背負って 未来(あす)へ漕ぎ出すクルー 日本製鉄(にっせいてつ)の跡地、新たな防衛のステージ 守り抜く矜持(きんじ)、呉じゃけぇ、これが俺らの生き様(スタイル)! ヤマトミュージアム 1/10の巨体 映す歴史の重み、涙こぼす未来(きょう) 音戸の瀬戸、ぐるり渦巻く潮流 歴史の重力、まるで映画のワンシーン 観光客が群がる アレイからすこじま でもローカルの日常はもっといぶし銀じゃけぇ メバルに呉冷麺、すする音(サウンド) 歴史と未来交差する、この街がマイクのグラウンド 揺れる瀬戸内、グレーの鉄(てつ)と青(ブルー) 戦艦(やまと)の血潮(ちしお)を受け継ぐこの街からFly 歴史(ルーツ)を背負って 未来(あす)へ漕ぎ出すクルー 日本製鉄(にっせいてつ)の跡地、新たな防衛のステージ 守り抜く矜持(きんじ)、呉じゃけぇ、これが俺らの生き様(スタイル)! 防衛省が買う、次世代のブルーの未来 受け入れるDNA、この港にはある 時代の波がどう変わろうとも この街の「鉄の意志」は、決して錆びんのじゃ! あぁ、えっと素晴らしい街じゃろ? 音戸の風に吹かれて、また歌うよ 呉から世界へ、響けこのビート Peace out...
日本最大の軍港から、未来の「複合防衛拠点」へ
呉市といえば、やはり旧海軍の本拠地であり、戦艦大和の故郷としてその名を知られています。戦争の歴史の中では幾多の空襲にさらされ、甚大な被害を受けた悲劇の街でもあります。しかし、この街を歩いて最も強く感じるのは、過去の傷跡に囚われているのではなく、それを乗り越えて現在の日本の平和と安全を支えているという強い誇りと遺伝子です。
今回、私が呉市役所の商工振興課で話を伺ったのは、大きな注目を集めている「日本製鉄跡地活用のプロジェクト」についてです。
日本製鉄がかつて製鉄所として使用していた約130ヘクタールもの広大な敷地。ここを防衛省が買い取り、海上自衛隊の施設増強を含む「複合防衛拠点」として整備する方針が進められています。総面積のうち約110ヘクタールが防衛省の関連施設として活用され、残りの約20ヘクタールが企業誘致エリアとして割り当てられています。すでに一部のエリアは更地化され、市民向けの運動場や開放エリアの整備と合わせ、具体的な工事がスタートしています。
防衛省が主導するこの巨大プロジェクトに対し、前向きにとらえる意見も多く、地域社会全体が大きな期待を寄せています。特筆すべきは、これだけの防衛関連施設や産業集積地でありながら、市民の間に「防衛に対する抵抗感」がほとんどないという点です。防衛省の関係者からも「こんな街は他にない」と言われるほど、自衛隊や防衛産業が文化として地域に深く根付いているのです。
近隣にはジャパンマリンユナイテッド(今治造船の子会社)やIHIといった日本を代表する大規模な造船・海事の製造拠点が並び、さらに近年では郷原地区に半導体関連企業であるディスコの工場が建設されるなど、海軍の歴史を背景にした確固たる産業基盤も出来つつあります。人口は昨年20万人を割り込んだものの、確固たる産業基盤と旺盛な活力がこの街には息づいています。
「アレイからすこじま」から見る海上自衛隊の潜水艦
呉の湾岸に並ぶ造船工場
海上自衛隊呉資料館(くじら館)
過去の歴史に向き合い、世界から人が集まる観光都市へ
呉市の魅力は、最先端の防衛や工業だけにとどまりません。その象徴が、年間約100万人の来館者を誇る「大和ミュージアム」と、隣接する「海上自衛隊呉資料館(くじら館)」です。
実際に足を運んで驚いたのは、来館者のなかに占める欧米系観光客の割合の高さです。広島市内の原爆ドームや宮島を訪れた海外の方々が、戦争の歴史や日本の海事技術の真髄を学ぶために、真剣な眼差しで展示に見入っている姿が印象的でした。英語の解説パネルを一つひとつ丁寧に読み込む彼らの姿からは、単なる物見遊山ではなく、歴史と真摯に向き合おうとする姿勢が伝わってきます。
また、少し足を延ばして訪れた「呉市豊町御手洗重要伝統的建造物群保存地区」では、瀬戸内の島々が織りなす美しい原風景と歴史的建造物が美しく保たれており、日本の原風景の豊かさを改めて実感しました。防衛という硬質な側面と、瀬戸内の豊かな自然、歴史文化が絶妙に融合していることこそが、呉市という街の奥深さなのです。
「大和ミュージアム」「海上自衛隊呉資料館」は隣接しており、国内外から多くの観光客が訪れます。退役した潜水艦「あきしお」の中を見学する事も出来ます。
地方から強い日本を再構築する
私が「株式会社ニホンノチカラ」を立ち上げ、「地方発!日本再生」を掲げて全国を巡っているのは、まさにこうした地方都市が持つ「隠れた宝」と「本物の気概」を世の中に広く知ってほしいからです。
大都市圏だけを見ていると、どうしても表面的な経済指標やトレンドばかりに目が向きがちになります。しかし、日本の地方には、国を守る確固たる覚悟を持った人々が暮らし、世界に誇る技術や歴史が脈々と受け継がれています。呉市のように、自らの歴史を背負いながら、次世代に向けて新しい産業基盤を自らの手で切り拓こうとする姿勢に触れるたび、私の胸は熱くなります。
私たちが目指すのは、単なる観光地の紹介やモノの売買ではありません。それぞれの地域が持つストーリーや誇りを発掘し、国内外に発信していくこと。そして、日本の未来を創造するパートナーとして、地域の人々と共に歩み続けることです。
今回の呉市での出会いと気づきは、私のこれからの挑戦にとって、計り知れない力となりました。日本の誇りと底力がここにある――その確信を胸に、私の「1718ニホン探索」の旅は、次なる場所へと続いていきます。
「呉市豊町御手洗重要伝統的建造物群保存地区」には、日本の原風景が今もそのまま残っています。
呉市の情報まとめ
広島県の南西部、瀬戸内海に面した中核市で、人口約20万人の都市。第二次世界大戦まで日本最大級の軍港として発展し、戦艦大和を建造した街として知られる。戦後はその歴史的背景を受け継ぎ、海上自衛隊の拠点や国内有数の造船・海事産業が集積する防衛・工業都市として日本の安全保障と経済を支えている。
産業:ジャパンマリンユナイテッドやIHIなどの大規模な造船・海事拠点が集積するほか、近年では半導体関連企業(ディスコ等)の増設・拡張など、産業の多様化が進む。さらに、日本製鉄跡地を活用した「複合防衛拠点」の整備が進められており、防衛産業の新たな集積地としても大きな期待を集めている。
文化・観光:大和ミュージアム(呉市海事歴史科学館)や海上自衛隊呉資料館(くじら館)など、軍港としての歴史や自衛隊に触れられる施設が充実しており、国内外から多くの観光客が訪れる。また、御手洗重要伝統的建造物群保存地区をはじめとする瀬戸内の美しい島々の景観も大きな魅力である。
グルメ:新鮮な瀬戸内の魚介類はもちろん、かつて海軍の艦艇で食べられていたレシピをベースにした「呉海自カレー」や、独特の食感が楽しめる「呉冷麺」など、港町ならではの独自の食文化が根付いている。
今回お話を伺った方
呉市 商工振興課 ご担当者様 日本製鉄の製鉄所跡地活用事業において、防衛省や事業者、関係行政機関との窓口として重要な役割を担う。街の歴史と産業の未来を見据えながら、防衛拠点化や新たな企業誘致を通じて地域の活性化に奔走している。
筆者プロフィール
福本 拓元(ふくもと たくゆき) 株式会社ニホンノチカラ 代表取締役。1975年愛媛県生まれ。18歳で渡米し、異文化の中で「日本の価値」を再認識。帰国後、株式会社ユーグレナの創業に参画し、取締役として東証一部(現プライム)上場に貢献。「ミドリムシで地球を救う」活動に20年捧げた後、2025年、原点である地方創生を目指し「ニホンノチカラ」を創業。全国1,718市町村を巡り、地方の宝を発掘する「1718ニホン探索」を継続中。














