維新の英傑たちが愛した地で、全国トップクラスの「行政DX」の最前線に触れる

鹿児島市(鹿児島県)ーー1718ニホン探索(69/1,718)

城山公園から望む「桜島」

新幹線の終点でもある「鹿児島中央駅」

名勝「仙厳園」

私の心の師であり、人生の憧れでもある坂本龍馬。彼がかつて夢見た「海外への挑戦」を胸に、私は10代でアメリカへと渡りました。そこで日本の価値を再認識し、帰国後に地方を巡る中で「地方発!日本再生」という志を抱くに至ったのです。今回、1,718 市町村を巡る旅の69番目の訪問地として訪れたのは、明治維新に多大なる貢献を果たした薩摩藩の拠点、鹿児島県鹿児島市です。

取材の前、私は維新の足跡が色濃く残る市内を探索しました。名勝「仙巌園」に足を運び、雄大な桜島を望みながら島津家が築いた歴史の重みを感じ、西郷隆盛翁や大久保利通翁の銅像を見上げ、維新ふるさと館で激動の時代に思いを馳せました。龍馬もまた、この地の空気を感じ、日本の未来を憂い、そして希望を抱いたのだろうと思うと、胸が熱くなるのを抑えきれませんでした。

しかし、現在の鹿児島市が誇るのは、そうした輝かしい歴史だけではありません。実は今、この街は全国の市区町村のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進度を可視化する「自治体ドックランキング2026」において、全国1,741市区町村の中で見事8位に輝いている、日本屈指の「DX先進都市」なのです。今回は、その変革を現場で力強く牽引されているデジタル戦略推進課のお三方にお話を伺いました。

訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。

わっぜ熱い血が滾(たぎ)る場所
ここが俺らの誇る街 鹿児島市!
桜島が上げる煙は合図
歴史を動かした男たちのプライド
チェスト!行け!恐れるな前へ
繋ぐぜ薩摩の未来の果てへ
(Say! 鹿児島市!)

始まりの鐘が鳴る 幕末の夜明け
この国を変えた 男たちの足跡
西郷隆盛(せごどん)の背中 今も見つめて
城山の風が 俺たちの背を押して
大久保、篤姫、五代友厚
明治維新の主役 ここで育つ
「議を言うな」の精神を胸に
不退転の覚悟 このリリックに乗せに

歴史だけじゃねえ 食えばわかる美味(うま)さ
黒豚のしゃぶしゃぶ とろける旨味の深さ
鶏刺しに芋焼酎(お湯割りで乾杯)
白くまの甘さが 心を満たしてく万歳!
「んまか!」って笑顔が溢れる街角
おやっとさぁ 今日も皆で集まろう
灰が降ったっちゃ へっちゃらな顔で
たくましく生きる これが俺らの流儀

わっぜ熱い血が滾る場所
ここが俺らの誇る街 鹿児島市!
桜島が上げる煙は合図
歴史を動かした男たちのプライド
チェスト!行け!恐れるな前へ
繋ぐぜ薩摩の未来の果てへ

錦江湾(きんこうわん)に映る 夕日の赤
よか男、よかおなご、集うこの街の宝
敬天愛人(けいてんあいじん) 天を敬い人を愛す
西郷どんの教え 時代を超えてデリバリーするサイズ
おまんたっの熱い鼓動を聴かせてくれ
この街の灯りは 絶対に消させやしねえ

もぜ(愛おしい)我が街、鹿児島市
ここが俺らのスタートラインでありゴール
歴史と食と 熱い魂(ソウル)
チェストーーーーー!!!

首長の強力なリーダーシップがもたらした「行政のパラダイムシフト」

鹿児島市の行政手続きオンライン化が本格的に加速したのは、コンサルティングファーム出身である下鶴市長の体制になってからのことだそうです。私はこれまで多くの自治体を回ってきましたが、地方の改革においてリーダーが先進的な発想を持ち、トップダウンで意識を変革していくことがどれほど重要かを痛感しています。

鹿児島市では、市長の強い意志のもとで「デジタル戦略推進課」が設置され、DX推進部制への移行など、デジタル化を迅速に進めるための強固な組織体制が整えられました。

「外部サービスやクラウドサービスを導入する際、個人情報を扱う機密性の高いものとそうでないもので、明確にセキュリティレベルを分けてルール化しています」

そう語る職員の方々の言葉からは、確かな自信が伺えました。小規模な自治体ではセキュリティの判断が難しく、国が認定した仕組みの登場を待つしかないケースも多い中、鹿児島市では独自に安全性を確保するルールを制定し、スピーディーに民間の最先端サービスを取り入れています。市長自らが「CIO(最高情報統括責任者)」として本部長を務める推進体制だからこそ、このスピード感が生まれるのだと確信しました。

西郷隆盛翁、大久保利通翁等、日本の歴史を動かした偉人達の銅像が街の至る所に。

住民の日常を変える「一気通貫」のオンラインサービス

具体的な事例を伺う中で、特に素晴らしいと感じたのが、住民サービスにおける「ワンストップ化」の徹底です。

例えば、公共施設の予約や粗大ごみの搬出申し込みにおいて、申請から決済までをデジタル上で一気通貫で行える仕組みが導入されています。私が住む東京も含め、多くの自治体ではいまだに「コンビニで処理手数料のシールを現金で購入し、それをゴミに貼る」というアナログな手続きが一般的です。

しかし、鹿児島市ではPayPayなどのオンライン決済がすでに導入されています。決済が完了した後は、支払番号を自宅にある不要な紙に書いてゴミに貼るだけで済むのだそうです。これには驚きました。わざわざコンビニへ買いに行く手間が省けるだけでなく、専用のシールを印刷・流通させるコストも不要になる。住民の利便性向上と、究極のエコを同時に実現している極めて先進的な取り組みです。

また、現在は国が定める法律の壁(対面確認ルール)があるため、転入届の際には来庁が必要であるものの、転出届に関してはすでに完全にデジタル化が完了しているとのこと。やれるところから徹底的に市民の負担を減らしていく姿勢には、深い感銘を受けました。

名勝「仙厳園」は国内外の観光客で溢れていました。

業務効率化の先に広がる、人間らしい付加価値への挑戦

デジタル化の恩恵は、市民だけでなく役所の内側、つまり職員の方々の働き方にも劇的な変化をもたらしていました。

定型業務を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入により、なんと年間で約13,000時間もの職員の作業時間を削減することに成功したといいます。これを時給換算すれば、莫大な行政コストの効率化です。そして何より重要なのは、削減された時間が単なる「楽なサボり時間」ではなく、時間外勤務の短縮や、人間にしかできない「より付加価値の高い新しい住民サービス」へと充当されている点です。

さらに、職員の事務補助として「Microsoft Copilot」を導入し、挨拶文の作成やアイデア出し、検索の補助などに活用しているほか、市立高校や小中学校の教員の負担軽減に向けたAI活用の研究開発も進められています。

重要文化財 旧集成館機械工場

桜島フェリー

史跡 鶴丸城跡

地方の未来を救う「産官学金連携」と移動の課題

インタビューの終盤、話題はこれからの地域課題へと及びました。鹿児島市では現在、産学官金の連携協議会を設立し、人口減少社会を見据えた地域の課題解決プロジェクトを推進しています。その中には、高齢化が進むエリアでの移動手段の確保や、自動運転技術の導入に関する検討も含まれています。

地方におけるドライバー不足や公共交通機関の維持は極めて深刻です。実証実験後の運用コストや国の補助率低下といった財政的な壁、レベル4(完全無人運転)に向けた法規制など、自治体単体では解決しがたい課題も山積しています。しかし、だからこそテクノロジーを正しくガバナンスし、時代の変化に適応しながら切り込んでいく鹿児島市のような存在が、これからの日本全体の希望になるはずです。

かつて若き薩摩の英傑たちが日本の夜明けを信じて駆け抜けたこの地で、今度はデジタルという武器を手に、新しい時代の地方創生が始まっています。「ニホンノチカラ」の証明に向け、私もより頑張っていかねばと強く思わされる、実り多き探索となりました。

薩摩切子

屋久杉の山王

鹿児島ラーメン 豚とろ

鹿児島市の情報まとめ

鹿児島県の薩摩地方に位置する、人口約58万人(2026年現在)の主要都市であり、同県の県庁所在地。古くから島津氏の城下町として栄え、明治維新を牽引した多くの偉人を排出した歴史的背景を持つ。シンボルである活火山「桜島」を擁し、錦江湾に面した美しい景観から「東洋のナポリ」とも称される。

産業: 第三次産業が中心の商業都市である一方、シラス台地を活かした農業や、広大な森林資源を背景とする林業・木材産業も盛ん。

文化・観光: 世界文化遺産の「仙巌園」をはじめ、西郷隆盛・大久保利通らの史跡、維新ふるさと館など歴史観光資源が豊富。名湯・指宿や霧島への玄関口でもある。

グルメ: 黒豚しゃぶしゃぶ、鹿児島ラーメン、さつま揚げ、地鶏刺し、そして伝統的な和菓子「軽羹(かるかん)」や、かき氷「白熊」など独自の食文化を誇る。本格焼酎の聖地としても名高い。

今回お話を伺った方

鹿児島市デジタル戦略推進課のご担当者様 コンサルティングファーム出身の下鶴市長の強力なリーダーシップのもと、2021年に新設されたデジタル戦略推進課。自治体の枠にとらわれない柔軟な発想と徹底したセキュリティ管理のルール化により、各種行政手続きのオンライン化やワンストップ決済を次々と実現。「自治体ドックランキング2026」において全国8位というトップクラスの評価を獲得し、RPAや生成AI(Copilot)の活用、産学官金連携による地域課題解決など、日本の行政DXを最前線で牽引している。

筆者プロフィール

福本 拓元(ふくもと たくゆき) 株式会社ニホンノチカラ 代表取締役。1975年愛媛県生まれ。18歳で渡米し、異文化の中で「日本の価値」を再認識。帰国後、株式会社ユーグレナの創業に参画し、取締役として東証一部(現プライム)上場に貢献。「ミドリムシで地球を救う」活動に20年捧げた後、2025年、原点である地方創生を目指し「ニホンノチカラ」を創業。全国1,718市町村を巡り、地方の宝を発掘する「1718ニホン探索」を継続中。