ロボットと挑戦が響き合う街、南相馬。被災の地から「ものづくり日本」の再生を確信した日。
南相馬市(福島県)ーー1718ニホン探索(43/1,718)
福島ロボットテストフィールド
「ぷくぷく醸造」立川哲之代表
「1718ニホン探索」の43番目の訪問地として、福島県南相馬市を訪れました。ここは、かつて東日本大震災と原発事故という、想像を絶する困難に直面した場所です。しかし、今日私がこの街で目にしたのは、深い傷跡ではなく、最先端テクノロジーと若き熱量が混ざり合い、新しい時代の産声を上げようとしている力強い姿でした。
かつて私がアメリカに渡った時、日本の精密なものづくりや精神性が世界に誇れる宝だと再認識しました。一方で、国力で遅れをとる現状に悔しさも感じてきました。ここ南相馬には、その「悔しさ」を「希望」に変えるヒントが詰まっています。
訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。
Yeah... 6国(ろっこく)を北へ 波の音と、馬の嘶き 伝統と革新が交差するこの場所 南相馬、Ready go. 始まりを告げる 螺(ほら)の音響く 一千有余年 侍の意地 語り継ぐ 小高、原町、鹿島が一つに 野馬追(のまおい)の旗印 誇り高き道 「おらほの町」って胸張って言いたい たとえ離れても 心は離さない 「おんつぁま」「あんつぁま」皆が仲間だ 「ま、お茶でも飲め」って笑う 昼下がり 震災の泥 振り払った足跡 悲しみだけじゃ終わらせない明日を 浜通りの風が 涙を乾かした 俺らが生きてる 証を刻むんだ 南相馬 ここは再会の場所 過去と未来 繋ぐ 希望の架け橋 「わっぜ、おもしぇな」って笑い合いたい 青雲(せいうん)の志 ずっと 忘れない どこまでも行けるさ 自由な翼で 南相馬 Pride, Never forget the day. 見上げてごらんよ ロボットテストフィールド 空飛ぶクルマが 描くこのシールド イノベーションの風 街中を駆け巡る 新しい産業が この地を底上げする ドローンが舞う空 ゲートウェイの先へ 技術の粋を集め 限界を壊せ 「やってみっぺ」の精神 魂のエンジン 復興のシンボル 刻む新次元(New Engine) お米(天のつぶ)の輝き 恵みの海の幸 「食べてくなんしょ」 溢れるおもてなし 伝統の相馬流れ山 口ずさみ ハイテクな未来へ ギアを上げ進み 「さすけねぇ」って 言葉に救われた 「がんばっぺ」って 肩を叩き合った まだ道の途中 でも顔を上げて 南相馬の魂は 決して折れねぇ 南相馬 ここは再会の場所 過去と未来 繋ぐ 希望の架け橋 「わっぜ、おもしぇな」って笑い合いたい 青雲の志 ずっと 忘れない どこまでも行けるさ 自由な翼で 南相馬 Pride, Never forget the day. 野馬土手(のまどて)を越えて 新しい風に乗って 南相馬、ここが俺たちの居場所 「また、遊びに来っせ」 Peace out, Minamisoma... (Fade Out)
金属加工の伝統を「ロボット」へ。行政と現場が描いた復興のシナリオ
市役所で復興企画部の皆さんから話を伺い、まず驚いたのは、この街の「ロボット」というテーマが決して空から降ってきたものではないということです。
南相馬には、震災前から金属加工業の組合があり、職人たちの確かな技術が息づいていました。震災後、「この街をどう再生させるか」という極限の議論の中で、行政の担当者たちは「自分たちの強みである金属加工と、最も相性がいいのは何か」を考え抜いた。そこで導き出された答えが、ロボットやドローンといった次世代テクノロジーでした。
現在では、国の拠点である「福島ロボットテストフィールド」と呼応するように、市が運営するインキュベーション施設には16社もの企業が入居しています。さらに「南相馬市ロボット産業協議会」には70社を超える企業が集まり、地元の製造業とベンチャー企業が手を取り合って、新しい産業の土壌を耕しています。
行政の皆さんが「もともとあった強みを、発展的に復興のエンジンとして再定義した」というお話には、地方創生の本質を感じました。ないものをねだるのではなく、あるものを磨き上げ、そこに未来の旗を立てる。その姿勢こそが、今の南相馬に漂う「活気」の正体なのだと確信しました。
「福島ロボットテストフィールド(写真左、中央)」は、ドローンや災害対応ロボット等の開発・実証を行うロボットテクノロジーの拠点。それに連動してインキュベーションオフィス&ラボ「南相馬市産業創造センター」において、ベンチャー企業等の起業・創業を支援。
小高(おだか)地区で見つけた、ユーグレナの仲間と「100のビジネス」へのチャレンジ
今回の訪問で、もう一つの嬉しい再会と出会いがありました。小高地区で活躍する、ぷくぷく醸造の立川哲之代表です。
立川さんは、実は私が共同創業者として立ち上げたユーグレナのプロパー社員として2年間、共に汗を流した仲間でもあります。彼がユーグレナを飛び出し、全国620もの酒蔵を渡り歩いて修行を積み、ここ南相馬で自らの蔵を構えた。その挑戦を知った時、私は一人の経営者として、そしてかつての同志として、震えるほどの誇らしさを感じました。
また、彼や多くの起業家を支える「小高パイオニアヴィレッジ」の和田智行代表ともお会いすることができました。和田さんは「地域の100の課題から100のビジネスを創出する」という壮大な目標を掲げています。
驚くべきは、この小高地区が原発事故による避難指示で、約6年もの間、誰も住むことができなかった場所だということです。ゼロどころかマイナスからのスタート。そこに若者が集まり、酒を醸し、新しいビジネスを次々と立ち上げている。この事実は、日本中のどの地域にとっても大きな勇気になるはずです。
「小高」地区には、避難エリアであったハンディを感じさせない力強い活動を行う起業家が集積しつつある。(写真左、中央:ぷくぷく醸造 写真右:小高パイオニアヴィレッジ)
「ものづくり日本」の旗印を、ここから再び
私は長年、ミドリムシというバイオテクノロジーで世界を変えようと挑んできました。領域は違えど、南相馬で進んでいるロボティクスやフィジカルAI、ドローンの社会実装は、間違いなく「日本復活」の鍵を握っています。
近年、日本の製造業は勢いを失っていると言われますが、私はそうは思いません。アメリカで感じた、あの日本特有のきめ細やかさ、おもてなしの心、そして真摯にものと向き合う精神性は、必ず最先端技術と融合し、世界を驚かせるはずです。
南相馬が「ロボットの聖地」として、研究開発だけでなく、大きな工場が立ち並ぶ「産業の集積地」へと発展していく。その未来は、もうすぐそこまで来ています。
ピンチをチャンスに変え、失われた約6年を乗り越えて新しい価値を創造する南相馬の皆さんに、私自身が大きな元気をもらった一日でした。
「相馬野馬追」は全国的にも著名な伝統行事
南相馬市の情報まとめ
福島県の浜通り北部に位置する、人口約5.4万人の都市。2006年に小高町、原町市、鹿島町が合併して誕生しました。東日本大震災と原発事故により甚大な被害を受けましたが、現在は「ロボットのまち」として世界中から注目を集める復興のフロントランナーです。毎年5月に開催される伝統行事「相馬野馬追(そうまのまおい)」は、1,000年以上の歴史を受け継ぐ祭りで重要無形民俗文化財であり、地域住民の誇りとなっています。
産業: 伝統的な農業・漁業に加え、古くからの金属加工技術を基盤とした製造業が盛んです。現在は「福島イノベーションコースト構想」の重点分野の1つである、ロボット、ドローン、宇宙産業の育成・誘致に注力しており、多くのベンチャー企業が集結しています。
文化・観光: 「相馬野馬追」は、数百騎の騎馬武者が居並ぶ勇壮な神事で、地域の絆の象徴です。また、サーフィンの聖地として知られる北泉海岸や、建築家・妹島和世氏が設計した小高交流センターなど、新旧の文化が共存しています。
グルメ: 小高地区で新たに始まった日本酒造り、地元の新鮮な魚介類が楽しめます。また、道の駅南相馬で食べれる「南相馬野馬追カレー」では、地元の食材を使ったカレーを味わえます。
今回お話を伺った方
南相馬市役所 復興企画部 イノベーション政策室:南相馬市の復興事業推進の要として、福島イノベーション・コースト構想
関連事業の促進を担う。産学官の架け橋として、復興とその先を見据えた新たな価値の創出を手掛けています。
立川 哲之氏: ぷくぷく醸造代表。株式会社ユーグレナでの勤務を経て、全国の酒蔵を巡り修行。南相馬市小高区にて、地元の米や素材を活かしたクラフトサケを醸造し、日本酒の新しい価値を世界に発信している起業家。
和田 智行氏: OWB株式会社代表取締役。「小高パイオニアヴィレッジ」を運営し、地域の課題をビジネスで解決する「ローカルベンチャー」の育成に尽力。避難指示解除後の小高区で、ゼロからコミュニティと産業を再生させた立役者。
筆者プロフィール
福本 拓元(ふくもと たくゆき) 株式会社ニホンノチカラ 代表取締役。1975年愛媛県生まれ。18歳で渡米し、異文化の中で「日本の価値」を再認識。帰国後、株式会社ユーグレナの創業に参画し、取締役として東証一部(現プライム)上場に貢献。「ミドリムシで地球を救う」活動に20年捧げた後、2025年、原点である地方創生を目指し「ニホンノチカラ」を創業。全国1,718市町村を巡り、地方の宝を発掘する「1718ニホン探索」を継続中。













