戦跡の記憶と海人の活気が交差する街。

糸満市(沖縄県)ーー1718ニホン探索(38/1,718)

ひめゆりの塔

平和記念公園

沖縄本島の最南端、糸満市。エメラルドグリーンの海に囲まれたこの美しい街は、同時に「沖縄戦終焉の地」という、日本人として決して忘れてはならない重い歴史を背負っています。私は今回、この地を訪れ、糸満市役所観光・スポーツ課の方々と対談してきました。かつての激戦地を歩き、そして地域の未来を見据える職員の方々の想いに触れた時、私の心に去来したのは「凄惨な過去をいかに語り継ぎ、それを地域の再生へと繋げていくか」という強い使命感でした。

訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。

Haisai! Itoman City...
海人(うみんちゅ)の風が吹く
平和の祈り、未来へ繋ぐ
Are you ready? Let's go.

南(ふぇー)の果て 潮の香りが合図
白銀堂(はくぎんどう)に手合わせ 誓うMy life
糸満の男(いきが)は 荒波も味方
サバニを漕ぎ出し 突き進む彼方へ
ハーリーの銅鑼の音 魂(まぶい)が震える
旧暦(きゅうれき)の暦で 時代(とき)を数える
「あがいやー!」って叫ぶ 大漁の予感
港に響く笑い声 これが糸満(いとまん)!

響け 海人の誇り(ITOMAN PRIDE!)
碧い海に 愛を込めて(Kanasa!)
繋げ 伝統の糸(ITOMAN PRIDE!)
平和の光 明日を照らして
にふぇーでーびる この街に
誇り高く 歌い続ける

摩文仁(まぶに)の丘から 届ける祈り
「忘(わし)りてーないびらん」 悲しみを超え 光を灯り
平和祈念公園 静かな風が吹く
命(ぬち)どぅ宝 その意味を今、胸に刻む
お腹が空いたら 道の駅(うまんちゅ市場)へ
新鮮な「魚(いゆ)」 カチャーシー踊る手
おばぁの「かめーかめー」 愛情が溢れる
ちゅらさんの心 この街で育まれる

喜屋武岬(きゃんみさき) 荒波打つ 断崖絶壁
美(ちゅ)ら海水が 語りかける 悠久の奇跡
十五夜の綱引き みんなで「ハーイヤ!」
心一つに カリーをつけよう
ここが俺たちの、私たちの 帰る場所!

響け 海人の誇り(ITOMAN PRIDE!)
碧い海に 愛を込めて(Kanasa!)
繋げ 伝統の糸(ITOMAN PRIDE!)
平和の光 明日を照らして
にふぇーでーびる この街に
誇り高く 歌い続ける
Itoman... City of Sea and Peace.
いつまでも、変わらない青さで。
変わらん魂(たましー) いとまんチュ!
にふぇーでーびる


悲劇の記憶を、未来を創る「教育」の種に

今回、私は改めて「ひめゆりの塔」や「平和祈念公園」を真剣に見学しました。中学生の頃や以前の仕事で訪れた時とは違い、50歳になり、一人の起業家として、そして親としてこの地を訪れた私には、刻まれた犠牲者の名前の多さ、そして若くして命を散らした方々の無念さが、胸を締め付けるほどの重みを持って迫ってきました。

対談の中で職員の方が仰った「平和祈念公園やひめゆりの塔は有名だが、『糸満市』という名称と結びつかず、素通りされてしまうのが課題」という言葉が印象的でした。点としての知名度はあっても、それが市全体の「回遊」に繋がっていない。また、今なお民家の下から遺骨が見つかり、不発弾の処理が続くという現実は、外側から見るだけでは分からない、この土地が抱え続ける「痛み」そのものです。

しかし、資料館で真剣に展示に見入る海外の方々の姿を見て、私は確信しました。ここは単なる観光地ではない。人類が学ぶべき「最高の教育の場」なのです。私はアメリカ留学時代、多民族社会の中で日本の価値を再認識しましたが、同時に日本の国力の低下に悔しさを感じました。その悔しさの根底にあるのは、こうした歴史の上に今の平和があるという認識の希薄さかもしれません。私自身、12歳になる娘に、この現実を早いうちに見せたいと強く思いました。悲劇を悲劇で終わらせるのではなく、平和の尊さを世界に発信する拠点として、糸満はもっと誇り高くあるべきです。

喜屋武(きやん)岬

活気あふれる「道の駅」と、地域資源の再編集

一方で、現在の糸満には凄まじい生命力も共存しています。「道の駅いとまん」を訪れた際、その賑わいに圧倒されました。新鮮な魚介が並ぶ「お魚センター」や地元の農産物。私も食事を済ませてから行ったことを後悔するほど、豊かな食文化がそこにはありました。まさに「海人のまち」としての誇りが息づいています。

職員の方との話で出たのは、「1次産業の強さはあるが、独自のヒット加工品がまだ少ない」という点です。その土地ならではのストーリーを纏ったプロダクト。例えば、糸満の豊かな海産物を、琉球ガラス工芸と組み合わせた新しいブランドギフトなど、地域資源を「再編集」する余地は多分に残されています。伝統的な「かまぼこ」文化なども、見せ方一つで世界に通用するブランドになるはずです。

「道の駅いとまん」には、「お魚センター」「うまんちゅ市場」等の食のマーケットが集積しており、観光客だけではなく地元の方々の食の台所にもなっています。

土地に眠る物語を繋ぎ合わせる

対談では、糸満が「ジョン・万次郎が帰国時に上陸した地」であるという歴史的一面も伺いました。2028年のNHK大河ドラマに向けて地元でも機運が高まっているそうですが、こうした「歴史の結節点」としての物語もまた、糸満の深みを作っています。鎖国の時代、異国の文化を持ち帰った万次郎を受け入れた糸満の懐の深さ。こうした歴史の断片を戦跡巡りと繋ぎ合わせることで、重層的な観光ルートが描けるはずです。

「点」として存在するスポットを「線」にし、さらには「面」としての地域ブランドへ。これは糸満市だけでなく、日本中の地方が抱える課題でもあります。

結びに

激戦地としての「静」の記憶と、水産業や道の駅に代表される「動」の活力。この二つを分断するのではなく、一つの「糸満の物語」として繋ぎ合わせることこそが、これからの地域ブランディングに必要だと感じました。

こうした土地の歴史と可能性を掘り起こし、現代の価値観で再編集することが正に地方創生に繋がっていきます。糸満の深い歴史を、明日を生きるエネルギーに変えていく。この地から日本の未来を夢見た先人たちに恥じぬよう、私もまた、「地方発!日本再生」の歩みを加速させていこうと決意を新たにしました。

ジョン万次郎再上陸の地にある記念碑

琉球ガラス村

糸満漁港

糸満市の情報まとめ

沖縄本島の最南端に位置する、人口約6万人の都市。第二次世界大戦における沖縄戦最後の激戦地として知られ、平和祈念公園やひめゆりの塔など、多くの戦跡が点在する平和学習の拠点です。かつて「海人のまち(うみんちゅのまち)」として栄え、伝統的な「糸満ハーレー」などの行事が今も大切に受け継がれる、歴史と活気が共存する街です。

産業: 古くから水産業が盛んで、現在は沖縄県内最大級の道の駅を拠点とした農水産物の直売が大きな経済柱です。また、冬場の温暖な気候を活かした野菜栽培などの農業も活発に行われています。

文化・観光: 平和祈念公園やひめゆりの塔などの平和学習施設のほか、琉球ガラスの制作体験ができる「琉球ガラス村」が人気。2028年に注目が集まるジョン・万次郎の上陸地など、歴史的ロマンに溢れるスポットも点在します。

グルメ: 「お魚センター」で味わえる新鮮な海鮮丼や生牡蠣、伝統的な「糸満かまぼこ」が絶品。また、沖縄そばの激戦区でもあり、地元客に愛される名店が数多く存在します。

今回お話を伺った方

糸満市役所 観光・スポーツ課 担当者様 糸満市の観光振興とスポーツイベントの誘致を担う。平和学習を主軸とした従来の観光に加え、道の駅や1次産業を活かした地域ブランディング、さらには歴史的価値の再発掘による新たな回遊ルートの構築に尽力されている。

筆者プロフィール

福本 拓元(ふくもと たくゆき) 株式会社ニホンノチカラ 代表取締役。1975年愛媛県生まれ。18歳で渡米し、異文化の中で「日本の価値」を再認識。帰国後、株式会社ユーグレナの創業に参画し、取締役として東証一部(現プライム)上場に貢献。「ミドリムシで地球を救う」活動に20年捧げた後、2025年、原点である地方創生を目指し「ニホンノチカラ」を創業。全国1,718市町村を巡り、地方の宝を発掘する「1718ニホン探索」を継続中。