北のウォール街・小樽。歴史を「保存」から「活用」へ、夜の静寂を賑わいに変える挑戦
小樽市(北海道)ーー1718ニホン探索(33/1,718)
小樽の栄枯盛衰の象徴「小樽運河」
かつて「北のウォール街」と呼ばれ、大正から昭和初期にかけて北海道の金融の心臓部として栄えた街、小樽。運河沿いに並ぶ石造りの倉庫群、そして重厚な銀行建築。一歩足を踏み入れると、そこには百年前の活気と熱量が今も静かに息づいているのを感じます。
今回、私は「1718ニホン探索」の旅路で、北海道でも有数の観光都市である小樽市を訪れました。お話を伺ったのは、小樽市役所の観光振興室の担当者の方です。
訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。
かつて「北のウォール街」 銀行並ぶ街角 石造りの倉庫 刻む歴史の跡 鰊(にしん)御殿が語る 黄金の時代 波濤を越え 拓いたこの未来 (Say!)小樽運河 ゆるやかに流れる ガス灯の火が 揺れては重なる 「なまら、しばれるね」って笑い合いながら 手を取り歩いた 浅草橋のたもとでさ 北一硝子の煌めき 揺れるランプ 堺町通り 誘(いざな)うステップ 五感で感じる 潮の香りと 積み上げた時間が 誇りになるの なまら好きだべ! 小樽の街(My Town) 運河に映る 星の光(So Bright) 時を越えて 繋ぐこの手と手 私たちのHome, ここがOtaru (Don't stop)雪あかりの路 照らして (Keep on)坂の街を 駆け上がって いつまでも 変わらない愛を この街に 誓うよ ずっと 寿司屋通り 暖簾(のれん)をくぐれば 港直送 旬が躍るよ ほら (Delicious!)甘エビ、ウニ、とろける幸せ 「これ、食べさ!」って おばちゃんが笑わせる ルタオのフロマージュ 甘い誘惑 なるとの半身揚げ パリッと贅沢 かま栄のパンロール 片手に歩こう 天狗山から 夜景を見下ろそう (Look up!)宝石箱を ひっくり返したみたいだね 冬になれば 街は真っ白に染まる 「あずましくない」日も たまにはあるけど 「こわい」なんて言わずに 坂道登れば 誰かが「おつかれさま」って 言ってくれる この街で生まれ この街で育ち 「めんこい」って言われた あの頃の記憶も 全部 宝物。 なまら好きだべ! 小樽の街(My Town) 運河に映る 星の光(So Bright) 時を越えて 繋ぐこの手と手 私たちのHome, ここがOtaru (Don't stop)雪あかりの路 照らして (Keep on)坂の街を 駆け上がって いつまでも 変わらない愛を この街に 誓うよ ずっと 運河の水面に 夢を浮かべて 硝子のベルが 響くこの街で 「また明日ね」って 手を振る帰り道 (Otaru... We love Otaru...) したっけ、また明日。
年間800万人が訪れる観光都市
まず驚かされたのは、その集客力の凄まじさです。直近の年間観光入込客数は約810万人。札幌市に次いで道内2位という、日本を代表する観光地としての地位を揺るぎないものにしています。
面白いのは、その季節性です。小樽には夏と冬、二つの大きな波があります。特に12月から2月、春節の時期にかけては台湾を中心としたインバウンド客が押し寄せ、街は活気に包まれます。私が訪れた4月中旬は、ちょうどロープウェイの運行開始前という「閑散期」にあたるとのことでしたが、それでも堺町通りには多くの外国人観光客の姿があり、その熱気は十分すぎるほど伝わってきました。
私は早朝に小樽に到着し、まずは街の象徴である旧日本銀行小樽支店などの歴史的建造物を巡りました。アメリカ留学時代、ニューヨークの古い街並みを見て「日本にも誇れる歴史があるはずだ」と悔しさを感じたあの頃を思い出します。小樽の街並みは、まさにその答えの一つでした。
かつて「北のウォール街」と呼ばれた小樽の繁栄を象徴する銀行の建物群
「通過型観光」という長年の壁
しかし、華やかな数字の裏側には、地方都市が共通して抱える深い悩みもありました。担当者の方が強調されていたのは「宿泊」と「夜」の課題です。
「小樽は札幌から電車で約50分というアクセスの良さが強みですが、それゆえに『日帰り』で済んでしまう。宿泊が札幌に集中し、小樽が通過点になってしまうのが長年の課題なんです」
まさに「通過型観光」。夜に開いている店が少なく、飲み屋街が観光の中心地から少し離れているため、夜の滞在に繋がりにくい。結果として、消費単価が伸び悩む。これは私が以前、福岡の太宰府を訪れた際にも感じた構造的な課題と同じです。
私は今回、人力車に揺られながら車夫さんとお話をしました。彼は「最近は星野リゾートなどのホテルも増え、少しずつ街の夜が変わろうとしている」と教えてくれました。小樽には人を引き付ける魅力が沢山詰まっているのです。
人力車で町を散策
堺町通り商店街
旭展望台から眺める小樽の街
歴史的建築物を「稼ぐ資産」へ再定義する
小樽の強みは、何と言っても「歴史的建築物の密度」です。街を歩けば、至る所に指定の看板が掲げられた石造りの建物が並んでいます。これを単なる保存の対象ではなく、いかに現代のビジネスに組み込むか。その最前線が、人気スイーツブランド「ルタオ(LeTAO)」の入る施設です。
実は、この建物は元々市の観光案内所だった市有施設です。案内所の移転に伴い、市が民間活用を公募し、ルタオがそれを引き継ぎました。私はここで「ハスカップチーズパフェ」を頂きましたが、古い建物の情緒が、ブランドの価値を何倍にも高めているのを肌で感じました。
「古い建物を使って、夜の営業も含めたナイトタイムエコノミーを推進してほしい」という市の狙い。こうした「保存」から「活用」へのシフトこそが、地方再生の鍵を握ります。例えば、大規模なホテルが建てられないエリアでも、古民家や歴史的建物をリノベーションした宿泊施設を点在させれば、小樽のノスタルジックな夜をゆったりと楽しむ「滞在型観光」のモデルが作れるはずです。
現存する歴史的建造物をリニューアル活用して街づくりに
胃袋を満たし、心に刻む小樽のチカラ
取材の合間に、三角市場で頂いた「ウニ丼」の味は格別でした。あの口の中でとろける甘みは、まさに「ニホンのチカラ」そのもの。旭展望台から見下ろした小樽の街並みと青い海は、かつての繁栄とこれからの可能性を同時に映し出しているようでした。
小樽には、世界を惹きつける「物語」が埋まっています。銀行建築の重厚さ、ガラス工芸の繊細さ、そして海の幸。これらを単に「見せる」だけでなく、宿泊や体験という形で「深く味わう」仕組みをどうデザインするか。
「地方発!日本再生」を目指す私にとって、小樽の挑戦は多くの示唆を与えてくれました。歴史という土壌の上に、いかに新しい息吹を吹き込むか。小樽の街が夜の灯りで満たされる未来を、私は確信しています。
小樽は海産物を中心に食も豊か
小樽市の情報まとめ
北海道の後志地方に位置する、人口約10.6万人の都市。かつては北海道開拓の玄関口として、また「北のウォール街」と呼ばれる金融の拠点として栄えた。運河沿いに並ぶ石造り倉庫群や、歴史的建造物が織りなすノスタルジックな街並みは、国内外から年間約800万人の観光客を惹きつける。
産業:観光業が主軸であるが、古くから港湾都市として栄えた歴史から、水産加工業や物流業も盛ん。また、かつての漁業用浮き玉製造から発展した「ガラス工芸」も主要な産業の一つとなっている。
文化・観光:小樽運河、堺町通り商店街、旧日本銀行小樽支店など、歴史的遺産の宝庫。毎年夏に開催される「おたる潮まつり」は、海への感謝を込めて3,000人以上が練り歩く市民最大の行事。
グルメ:近海で獲れる新鮮な「海鮮丼」や「寿司」のほか、「あんかけ焼きそば」が市民のソウルフード。スイーツでは「ルタオ」をはじめ、ハスカップを使用したお菓子や、名物の「若鶏半身揚げ」も高い人気を誇る。
今回お話を伺った方
小樽市 産業港湾部 観光振興室 担当者様 小樽市の観光戦略の立案・実行を担う部署の担当者。直近の観光入込客数の分析や、インバウンド対応、そして長年の課題である「通過型観光」から「滞在型観光」へのシフトに向けた施策検討を行っている。
筆者プロフィール
福本 拓元(ふくもと たくゆき) 株式会社ニホンノチカラ 代表取締役。1975年愛媛県生まれ。18歳で渡米し、異文化の中で「日本の価値」を再認識。帰国後、株式会社ユーグレナの創業に参画し、取締役として東証一部(現プライム)上場に貢献。「ミドリムシで地球を救う」活動に20年捧げた後、2025年、原点である地方創生を目指し「ニホンノチカラ」を創業。全国1,718市町村を巡り、地方の宝を発掘する「1718ニホン探索」を継続中。
















