野球場を核とした「街づくり」の最前線。官民連携が描く、50年の眠りから覚めた希望の地

北広島市(北海道)ーー1718ニホン探索(34/1,718)

北広島の再開発の柱「エスコンフィールド」

「ニホン探索」の旅も34カ所目を迎えた。今回私が降り立ったのは、北海道北広島市だ。

札幌市と新千歳空港の間に位置するこの街は今、日本中で最も熱い視線を浴びていると言っても過言ではない。その中心にあるのは、2023年に誕生した「エスコンフィールド HOKKAIDO」を含む「北海道ボールパークFビレッジ」だ。

実際に足を踏み入れて驚いた。そこにあるのは、単なるプロ野球のスタジアムではない。一つの「完成された街」の息吹だった。アメリカ・オクラホマでの留学時代、私は広大な土地にダイナミックに展開されるプロジェクトを数多く見てきたが、ここ北広島で起きていることは、まさにあの時感じた「フロンティア・スピリット」そのものだ。

訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。

Yo, Check it. 札幌と千歳の間、何もないなんて言わせない。
開拓の火を絶やさず、今、世界がこの街を見てる。 
It’s Kitahiroshima City! Let’s go!

広島から来た先人たちのRoots 
泥にまみれ切り拓いたこのGroundの土 
「広島村」から数えりゃ何年経つ? 
今じゃ世界基準、規格外のデカさ 
Fビレッジ 浮かぶ宇宙船のようなシルエット 
夢が現実(リアル)に変わるこのモーメント 
エルフィンロード、自転車で駆け抜け 
駅前の景色も一気に塗り替え 
昔はただのベッドタウンだなんて過去の話 
今やボールパーク中心、止まらないこの街

Namara(なまら)熱いぜ Kitahiro New Stage
書き換えていくぜ 歴史のページ 
Azumashii(あずましい)風が吹くこの丘 
夢を追いかけ、どこまでも行こうか 
エスコンフィールド、歓喜の渦 
輝く未来へ、結び直す靴 
北の大地からぶちかませ Kitahiro Pride!

三井アウトレット、買い物ならお任せ
週末の賑わい、笑顔が咲かせ 
国道36号、流れるライト 
冬の雪景色も、今夜はブライト 
「なしてこんなに変わったの?」なんて聞かないで 
進化のスピード、誰にも止められないべ? 
お年寄りから子供まで 「わや」 な盛り上がり 
地元の絆、昔から変わりゃしない 
都会の便利さと、緑豊かなフィールド 
最高にめんこい 私たちのシールド

クラーク博士の教え「Boys, be ambitious」 
その言葉通り、俺たちの志はプレシャス 
厳しい寒さも、みんなで笑えばあったかい 
この街で生きる誇り、他に代え難い 
歴史へのリスペクト、未来へのパス 
北広島の風に乗って、飛ばすバース

Namara(なまら)熱いぜ Kitahiro New Stage 
書き換えていくぜ 歴史のページ 
Azumashii(あずましい)風が吹くこの丘 
夢を追いかけ、どこまでも行こうか 
エスコンフィールド、歓喜の渦 
輝く未来へ、結び直す靴 
北の大地からぶちかませ Kitahiro Pride!

変わっていく景色。 
変わらない魂。 
これからも、この街で。 
100年先まで響かせろ。 
Peace out, Kitahiro City.


50年の沈黙を破った、官民連携の志

今回、私は北広島市役所の「ボールパーク連携推進室」を訪問した。この部署名自体が、この街の本気度を象徴している。

お話を伺うと、この広大なエリアはもともと「総合運動公園予定地」として、50年以上も手付かずのまま放置されていた土地だったという。財政的な課題もあり、行政だけでは動かせなかった巨大な空間。そこに、日本ハムファイターズという民間パートナーが現れた。

「試合日だけ人が来る場所ではダメだ」という市の考えと、「小さな街を作りたい」というファイターズの構想が、見事に共鳴した。この「志の一致」こそが、全ての始まりだった。

私がユーグレナを創業した際も、最初に直面したのは「場所」の確保だった。石垣島の八重山殖産というパートナーとの出会いがなければ、ミドリムシの屋外大量培養は実現しなかっただろう。北広島市とファイターズの出会いもまた、地域の運命を変える奇跡的なマッチングであったと感じる。

野球を「観る」から「過ごす」へ。常識を覆す体験価値

エスコンフィールドに入ってまず圧倒されるのは、その開放感だ。驚くべきことに、試合がない日は入場料が無料である。午前中には選手たちの練習風景を間近で見ることができ、土日になれば巨大なフードコートが賑わいを見せる。

私が訪れた日も、多くの人々が思い思いの時間を過ごしていた。2階の「ソラテラス」で風を感じながら球場全体を眺めたり、球場内で醸造されているクラフトビールを味わったり。さらには温泉やサウナに入りながら観戦できるという、世界でも類を見ないアイデアが形になっている。

「温泉に入りながら試合を見たい」という突飛なアイデアに対し、「じゃあ掘ってみよう」と実行に移し、本当に掘り当ててしまう。この「爆速」で変化を恐れないベンチャー魂に、私は強く共鳴した。

球場の外に目を向ければ、農業学習施設「クボタアグリフロント」がある。子供たちが食の循環を学べるこの施設は、次世代への投資そのものだ。単なる娯楽施設ではなく、教育やライフスタイルが融合した「持続可能な街」がここにはある。

試合を見ながら「サウナ」に入るという新しい体験

試合後のグラウンドウォークをオプションで体験

センター後ろには「カフェ」が。

「ファイターズだけが儲かってもダメ」という、行政の司令塔

ボールパーク連携推進室の役割は明確だ。「ボールパークによる利益をどう市民に還元するか」という一点に集約されている。

例えば、新小学1年生に配られる黄色い交通安全帽子。ファイターズ側の提案で、キャラクターをあしらった洗練されたデザインに刷新されたという。また、試合終了後の帰宅ラッシュによる周辺道路の渋滞を防ぐため、球場内で「アフターゲームショー」を開催し、滞在時間を分散させる配慮もなされている。

「民間が儲かることは、市民の幸せにどう繋がるのか」。この問いに、行政が司令塔として向き合い、ファイターズというリソースを市民のために使い倒す。市民アンケートで「ボールパークを訪れたことがある」という回答が87%を超えているという数字は、この取り組みが「自分たちの街の誇り」として市民に深く浸透している証左だ。

「地方発!日本再生」への見本のようなプロジェクト

私は今、故郷である愛媛県新居浜市の「にいはま営業本部」で戦略アドバイザーを務めている。住友グループの企業城下町として発展してきた新居浜は、安定している一方で、新たな産業やベンチャーが育ちにくいという課題を抱えている。

北広島市で見せてもらった、行政と民間が対等なパートナーとして、互いの強みを引き出し合う姿は、日本中の自治体にとっての希望の光だ。

2028年には新駅が開業し、大学やオフィスビル、さらには分譲のタワーマンションや高級リゾートホテルが誕生する予定だという。50年の眠りから覚めた土地は、今や北海道、いや日本の未来を牽引するエンジンになろうとしている。

北広島の地で感じたのは、人が集まり、熱狂し、新しい何かが生まれる瞬間のエネルギーだった。このエネルギーこそが、停滞する日本を再生させる原動力になる。

北広島市の挑戦は、まだフェーズ1、2の途上だという。私もまた、この34カ所目の訪問で得た刺激を胸に、1,718市町村を巡る「ニホン探索」の旅をさらに加速させていきたい。

「クラーク博士記念碑」がある「旧島松駅逓所」

ベーコン、ソーセージが有名な「エーデルワイスファーム」

北広島には三井アウトレットパークも。

北広島市の情報まとめ

北海道の石狩地方に位置する、人口約5.7万人の都市。1884年に広島県からの移住者によって開拓された歴史を持ち、1996年の市制施行時に現在の名称となった。札幌市と新千歳空港の中間に位置するアクセスの良さを活かし、住宅都市・産業拠点として発展してきた。2023年にはプロ野球・北海道日本ハムファイターズの本拠地「エスコンフィールド HOKKAIDO」を含む「北海道ボールパークFビレッジ」が開業し、世界的な注目を集めている。

産業:札幌近郊の好立地を活かした製造業、物流業が盛ん。また、豊かな自然環境を背景にした農業も行われており、米や野菜の生産が続く。

文化・観光:「北海道ボールパークFビレッジ」が最大の観光拠点。野球観戦のみならず、温泉、サウナ、グランピングなど、通年で楽しめるエンターテインメント施設が充実している。

グルメ:地元産の農産物を使った料理のほか、Fビレッジ内には北海道の名店が集まるフードコートや、世界初となる球場内クラフトビール醸造所があり、食の魅力も非常に高い。

今回お話を伺った方

北広島市役所 ボールパーク連携推進室 ご担当者様 北海道日本ハムファイターズの北広島市への移転・新球場構想の具体化に伴い設置された専門部門。ボールパークを核とした街づくりを推進し、球団と行政、地域企業、市民を繋ぐディレクターとしての役割を担う。「ボールパークの成果をいかに市民に還元するか」をミッションに、教育、産業、インフラ整備など多岐にわたる連携事業をマネジメントしている。

筆者プロフィール

福本 拓元(ふくもと たくゆき) 株式会社ニホンノチカラ 代表取締役。1975年愛媛県生まれ。18歳で渡米し、異文化の中で「日本の価値」を再認識。帰国後、株式会社ユーグレナの創業に参画し、取締役として東証一部(現プライム)上場に貢献。「ミドリムシで地球を救う」活動に20年捧げた後、2025年、原点である地方創生を目指し「ニホンノチカラ」を創業。全国1,718市町村を巡り、地方の宝を発掘する「1718ニホン探索」を継続中。