日本海にそびえる未来の象徴――石狩市で見た「再エネ地産地活」のチャレンジ

石狩市(北海道)ーー1718ニホン探索(35/1,718)

洋上風力発電が石狩のゼロエミッション・データセンター誘致の鍵となる。

太陽光発電も平地が多く気温が低い北海道の立地を生かせる、再生エネルギーの中心的な存在。

「1718ニホン探索」の旅、34番目の訪問地として私が降り立ったのは、北海道石狩市です。札幌の中心部から車を走らせることわずか30分。そこには、私の想像を遥かに超える、日本の未来を凝縮したような光景が広がっていました。

10代の頃、私は坂本龍馬に憧れてアメリカへ渡りました。そこで多民族社会のエネルギーに触れ、同時に海外で生活する事によって逆に、日本の「四季」「ものづくり」「食文化」という宝の価値を再認識しました。しかし、同時に突きつけられたのは、国力としての圧倒的な差。その悔しさが、私の経営者としての原点であり、「株式会社ニホンノチカラ」を立ち上げた動機でもあります。

今回、石狩市役所の企業連携推進課の責任者の方からお話を伺い、私はその「悔しさ」を晴らす「光」をこの地で感じる事が出来ました。石狩には、日本が再び世界に誇りを取り戻すための、極めて具体的で力強い「解」があったからです。

訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。

Yo, 061-Area...
最北のサーバーが熱を帯びる。
風が吹けば、未来が動く。
石狩、ぶちかますべさ。Check it.

石狩の風が俺の頬を叩く、厳冬の記憶を呼び覚ます(呼び覚ます)
海明けを待つ浜、ルーツは漁師の血、だが今は違う景色を見る
石狩湾新港、14基の羽が空を切り裂く、エネルギーの鼓動
洋上から吹く力、それを掴み取る、俺たちの街は止まらねぇ(止まらねぇ)

石狩、北の果てのデータ首都、光が闇を切り裂く
風が回り、サーバーが歌う、未来の鼓動がここで鳴る
ゼロエミッション、夢じゃねぇ、世界と繋がるこの場所で
わや凄ぇ街になったべさ、進化の風が吹き抜ける(吹き抜ける)
光ファイバーが血管、鼓動はテラバイトの速さ
グリーン電力、地産地消、地球に優しい技術の粋(すい)
北の厳しさ、逆手に取る、冷涼な空気はサーバーの友
データセンターの森、ITの巨人、北海道の未来を背負って立つ

昔はなんもなかった、ただの港町……
でも、見ろよ、この光の帯を
石狩は変わった、俺たちも変わる、まだ見ぬ明日へ……
あずましい未来、自分たちの手で。
石狩、北の果てのデータ首都、光が闇を切り裂く
風が回り、サーバーが歌う、未来の鼓動がここで鳴る
ゼロエミッション、夢じゃねぇ、世界と繋がるこの場所で
わや凄ぇ街になったべさ、進化の風が吹き抜ける(吹き抜ける)
Ishikari Digital Nexus...
日本の心臓部……
まだまだこれからだべさ。
この疾風(かぜ)に乗って、どこまでも。

札幌から人が「流れ込む」異質な工業都市

まず驚かされたのは、石狩湾新港地域の圧倒的な規模感です。約3,000ヘクタールという広大な工業団地に、既に840社もの企業が集積し、2万人もの人々が働いています。特筆すべきは、その就労人口の約7割にあたる1万3,000人が、隣接する札幌市などから「流入」してきているという点です。

多くの地方都市が「昼間は中心都市へ人が流出する」という課題に悩む中、石狩は逆に周辺から人を吸い寄せる「稼ぐ拠点」として機能しています。人工的に掘り込まれた港の背後に、住宅地と切り離された広大な産業空間を創り出す。この「職住分離」の徹底が、後に述べる再エネ活用の大きな布石となっていました。

再エネを「送る」のではなく「使う」という逆転の発想

私が最も感銘を受けたのは、石狩市が掲げる「再エネの地産地活」というコンセプトです。

日本海側の強い風を受け、この地には多くの風力発電機が並んでいます。沖合約2kmに設置された洋上風力発電は、その巨大な羽根を力強く回していました。着床式の4本脚(ジャケット構造)でしっかりと海底に固定されたその姿は、荒々しい冬の日本海にも屈しない、日本の技術力の結晶のようでした。

通常、地方でつくられた電力は都市部へと送電されます。しかし、石狩市は違います。「ここで作った電気は、ここで使う」。そのために、工業団地内に「REゾーン(リニューアブルエナジーゾーン)」を設け、電力を大量に消費するデータセンター(DC)を戦略的に誘致しているのです。

「AIの普及で電力需要が爆発的に増える今、再エネでそれを賄うことが、企業の持続可能性に直結する」

担当者の方の言葉に、私は深く頷きました。さくらインターネット、京セラコミュニケーションシステム、東急不動産といった名だたる企業がここに集まる理由は、単なる土地の広さではありません。カーボンニュートラルという世界基準の価値が、この石狩の地には「実体」として存在しているからです。

かつて私がユーグレナの創業期に、ミドリムシという「目に見えない小さな存在」に世界の救済を賭けたように、石狩市は「風」という目に見えないエネルギーを、データという「現代の石油」に変える壮大な実験にトライしようとしているのです。

REゾーンは「ゼロエミッション・データセンター」の集積地を目指し、誘致を推し進めている。

「教育旅行」が変える地域のブランド

さらに驚くべきは、この産業インフラが新たな「観光」の形を生んでいることです。昨年、都内の高校生が「環境×IT」をテーマに、修学旅行で丸一日石狩に滞在したといいます。かつての物見遊山の観光ではなく、日本の課題と解決策を学ぶ「教育旅行」。これこそが、私が目指す「地方の宝の再編集」そのものです。

年間1,000人を超える視察者が訪れ、スーパーホテルや「旅のホテル」といった宿泊施設も整備され始めています。札幌のベッドタウンとしての顔を持ちつつ、先端産業のメッカとして自立し始めた石狩市。そこには、地価の高騰する札幌を離れ、自然と先端技術が共存するこの地で子育てをしようと考える若い世代の姿も見え始めています。

「地方発!日本再生」

石狩で見せてもらったパワーポイントの資料の一枚一枚に、その情熱が宿っていました。漁業者との共生という課題、さらなる洋上風力拡大への挑戦。道のりは平坦ではないでしょう。しかし、石狩湾を背景に回る風車の群れは、間違いなく新しい時代の幕開けを告げていました。

私もまた、ニホンノチカラを信じ、各地に埋もれた「石狩」のような可能性を掘り起こし、世に放っていく決意を新たにしました。

有名な「佐藤水産」も石狩の会社

市の北部には広大な自然も

恋人の聖地(厚田展望台)

石狩市の情報まとめ

北海道の中央部に位置し、石狩湾に面した人口約5.8万人の都市。かつては鮭漁で栄えた歴史を持ち、現在は札幌市に隣接する利便性を活かしつつ、道内屈指の物流拠点・工業都市として発展を遂げています。特に「石狩湾新港地域」は、再エネとデジタルを掛け合わせた先端産業の集積地として全国から注目を浴びています。

産業:札幌圏の物流を支える「石狩湾新港」を核とした物流・製造業が盛ん。近年は風力・太陽光・バイオマス等の再生可能エネルギーを基盤としたデータセンター誘致に注力し、「再エネ地産地活」のモデルを構築しています。

文化・観光:江戸時代からの鮭漁の歴史を伝える「石狩弁天社」などの史跡が点在。広大な石狩浜は海水浴やキャンプのメッカであり、近年は「環境・IT」をテーマにした学習型・視察型観光(教育旅行)の受け入れも活発です。

グルメ:鮭一匹を余すことなく使う「石狩鍋」の発祥の地として知られ、旬の鮭やイクラ、地元の広大な大地で育つ農産物が豊富。工業団地エリアにはコストコなどの大型商業施設も立地し、周辺自治体からも多くの食客が訪れます。

今回お話を伺った方

石狩市 企画経済部 企業連携推進課 責任者 石狩湾新港地域の工業団地管理および企業誘致を担うスペシャリスト。洋上風力発電とデータセンターの連携による「再エネ地産地活」のスキーム構築に尽力し、行政の枠を超えたスピード感で民間企業との協定締結やプロジェクトを推進。石狩を「再エネの聖地」へと押し上げた立役者の一人。

筆者プロフィール

福本 拓元(ふくもと たくゆき) 株式会社ニホンノチカラ 代表取締役。1975年愛媛県生まれ。18歳で渡米し、異文化の中で「日本の価値」を再認識。帰国後、株式会社ユーグレナの創業に参画し、取締役として東証一部(現プライム)上場に貢献。「ミドリムシで地球を救う」活動に20年捧げた後、2025年、原点である地方創生を目指し「ニホンノチカラ」を創業。全国1,718市町村を巡り、地方の宝を発掘する「1718ニホン探索」を継続中。