プロ野球二軍誘致から始まる「ウォーカブルな街づくり」と、製鉄・大自然が織りなす君津の総合力

君津市(千葉県)ーー1718ニホン探索(53/1,718)

ロッテマリーンズファーム本拠地移転が決定。今は田んぼが広がっている予定地には、29年末にボールパークが完成予定。

日本の未来を切り拓くヒントを求めて、全国1,718の市町村を巡る「1718ニホン探索」の旅。53番目の訪問地として私が向かったのは、千葉県中西部に位置する君津市です。

君津市といえば、京葉工業地帯の一翼を担い、沿岸部に広がる壮大な製鉄業の街という印象を強く持たれる方も多いかもしれません。あるいは、内陸部に一歩足を踏み入れれば、濃溝の滝(亀岩の洞窟)や鹿野山といった雄大な自然が広がる、非常に多様な顔を持った地域でもあります。

しかし今、この君津市で、人の流れをガラリと変える歴史的な一大プロジェクトが動き出しています。それが、千葉ロッテマリーンズのファーム(二軍)本拠地移転プロジェクトです。

今回は、役所のボールパーク推進課のご担当者様にお話を伺い、未来の君津の核となる「ボールパーク整備計画」の全貌、そしてこのプロジェクトがもたらす地方創生の可能性について深く掘り下げました。

訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。

都会の喧騒、アクアライン抜けたらすぐそこ 
うちんがた(私たちの場所)へ、ようおいで。

房総の心臓、ここが君津市
おらが街のプライド、誰もが信じ
まずは重工業、歴史をビルド
日本製鉄が築いたフィールド
火花散る現場、汗と鉄の匂い
日本を支えた、この街の偉い
だけどそれだけじゃねぇ、見上げりゃグリーン
久留里の城下町、歴史がスピン
平成の名水、乾いた喉に注ぐ
自然の恵みが、俺たちの血に宿る

(Yeah)ちょっと待って、うちの番じゃん?
君津の魅力、もっと語らしてんべ(語らせてよ)
インスタでバズった「濃溝の滝」
ジブリの世界、光が差し込み
亀山湖でボート、紅葉に染まる
四季の美しさに、誰もが立ち止まる
ねぇ、「あじょ(どう)?」って聞かれたら
「いんじゃね(いいんじゃない)?」って返す
この街の空気、まじで癒やされる

どこまでも続くよ 君津のこの道 
(Yeah, どこまでも) 
寂しくなったら いつでもけぇってこ(帰ってきなよ) 
(いつでも、Welcome back) 
青い空と、深い緑が交わる場所 
君津の風に吹かれて 僕らは踊る 
世代を超えて繋ぐ この街のメロディ

夜になったら「鹿野山」の頂上へ 
九十九谷(くじゅうくたに)の雲海、まるで幻想の世界 
腹が減ったら、小櫃(おびつ)の恵み 
美味しいお米と、新鮮な卵 
地元を愛する気持ちは「がっぱ(一生懸命)」 
嘘じゃない、これがウチらのラッパー 
「のっぺ(のんびり)」いこうぜ、焦るこたぁねぇ 
君津の夜空、星が綺麗だっぺ?

アクアラインを渡れば、すぐ東京だけど
私はここを離れたくないよ
湧き水のように、止めどない愛
君津で生きる、それがアンサー

どこまでも続くよ 君津のこの道 
(Yeah, どこまでも) 
寂しくなったら いつでもけぇってこ 
(忘れるなよ、ホームタウン) 
青い空と、深い緑が交わる場所 
君津の風に吹かれて 僕らは踊る 
世代を超えて繋ぐ この街のメロディ

鉄の強さと、自然の優しさ。 
忘れちゃいねぇ、ウチらの誇り。 
君津市、ここが俺たちのレペゼン。 
またおいでね。 (Yeah... KIMITSU, Peace out.)

2030年開業、田んぼから立ち上がる「市民に開かれたボールパーク」

現在、千葉ロッテマリーンズの二軍拠点は埼玉県の浦和にありますが、これが君津市へと全面移転することが決定しました。完成を目指すのは2030年(2029年末〜2030年始)。まさにこれからの数年間で、街の景色が変わっていくダイナミズムを体感できるフェーズです。

驚いたのは、その建設予定地です。君津駅の南側に位置する広大なエリアなのですが、私が現地に実際に足を運んでみると、現時点では見渡す限りの美しい田んぼが広がっていました。

「今はまだ一面の平地ですが、ここに公式戦を行うメインスタジアムだけでなく、市民が日常的に集まれる複合的な公園を整備する基本計画を進めています」

ご担当者様が熱く語るその計画には、単なる「プロ野球の本拠地」に留まらない、地域密着型のビジョンが明確に組み込まれていました。

市が掲げる基本方針は、次の5つです。

①交流をはぐくむ、②魅力をむすび・ひろげる、③次世代をはぐくむ、④健康をはぐくむ、⑤まちをまもる

試合がある日だけ盛り上がる施設ではなく、試合がない日も市民が訪れたくなる場所にする。例えば、新設されるクラブハウスには一般の人も利用できるカフェや会議室、コミュニティ機能を設置。さらに、屋内練習場やトレーニングゾーンは、プロが使用しない時間帯に市民の草野球やスポーツの場として一般開放される調整が進んでいるそうです。

また、私の目を引いたのは「街を守る」という防災の視点です。施設内に備蓄倉庫を設け、災害時には広域避難所として機能するよう設計されているとのこと。エンターテインメント、市民の健康増進、そして地域の安全網。これらが一体となった、次世代型のボールパークがこの君津の地に誕生しようとしています。

市の沿岸部には製鉄工場が

里見氏が建てた「久留里城址」

すでに始まっている地ならしと「コミュニティの形成」

2030年の開業に向け、行政と球団はすでに数年前から「未来のファン・関係性づくり」に着手しています。

一例として、昨年の6月からは「ベースボールアカデミー(野球教室)」をスタートさせ、地域の保育園や小学校の子どもたちに野球やボール遊びの楽しさを伝える取り組みを行っています。さらに、地域の「ふれあい祭り」にはロッテのコーチや公式ダンスチーム「M☆Splash!!」を招聘。スタジアムができる前から、君津市民の中に「自分たちの街にマリーンズがやってくるんだ」という当事者意識と熱量が、少しずつ、しかし確実に育まれているのを感じました。

これは、私がこれまでのビジネス経験や地方行脚の中で痛感してきた「コミュニティづくりの重要性」そのものです。ハードウェアとしての施設を建てるだけでなく、ソフトウェアとしての人の繋がりを先に作っておく。この緻密な地ならしこそが、プロジェクトを成功に導く最大の鍵となります。

濃溝の滝・亀岩の洞窟

亀山湖

駅からの1キロを「歩きたくなる空間(ウォーカブル)」に

さらに興味深かったのが、君津駅からボールパークへと至る約1キロのアプローチを一体的に開発する、街づくりの計画です。

市は2024年1月に京葉銀行と協定を結び、このストリートを「ウォーカブル(歩きたくなる)」な空間にする取り組みを推進しています。これまでの地方都市に多かった「自動車中心」の設計から脱却し、スポーツの爽やかなイメージを取り入れながら、人々が健康的に、楽しく歩いて移動できる通りを目指しています。

行政がこうした明確な「街づくりの軸」を打ち出すことで、今後は民間の商業施設や飲食店の進出、新たな企業の参入など、経済のポジティブな連鎖反応が期待されます。駅からボールパークまでの1キロが、君津の新しいカルチャーの発信地となり、人の流れを大きく変える導線になる――その未来図が、私の頭の中にも鮮明に浮かび上がりました。

一次産業も豊かな君津では、特に養鶏が盛んで「卵」は特産品として有名。

取材を終えて:君津市の総合力が魅せる「地方発!日本再生」

今回の取材を通じて、君津市が持つポテンシャルの高さ、いわば「総合力の高さ」を改めて強く実感しました。

沿岸部で日本の経済成長を文字通り支えてきた屈強な製鉄業があり、内陸部には人々の心を癒やす豊かな大自然と観光資源がある。そこに、今回の「プロ野球ファーム誘致」という強力なコンテンツが加わります。将来的には、このボールパークをハブとして、南房総全体の観光資源や内陸部の魅力と連携していく構想もあるそうです。

円安やインバウンドの波が押し寄せる現代日本において、海外からの旅行客が求めているのは、こうした「地域ならではの生の体験」であり、ローカルな物語です。君津市が推進するスポーツを軸とした新しい街づくりは、まさに国内外の人々を惹きつける強力なフックになるでしょう。

田んぼの中にこれから描かれる、無限の可能性。2030年の完成に向け、この街がどのように進化していくのか。一人の起業家として、そしてニホン探索者として、これからも君津市の挑戦を追い続けていきたいと思います。

君津市の情報まとめ

千葉県の南房総地域・上総地方に位置する、人口約8万人の都市。東京湾に面した沿岸部から内陸の房総山丘へと広がる広大な市域を持ち、都市機能、一大工業地帯、そして豊かな大自然が調和した総合力の高い街である。

産業:沿岸部の埋立地には日本製鉄東日本製鉄所君津地区などの大規模な製鉄所が立地し、日本屈指の「鉄の街」として京葉工業地帯の中核を担う。一方、内陸部では農業やのり養殖、名水を活かした酒造りも盛ん。

文化・観光:SNSで話題となった「濃溝の滝(亀岩の洞窟)」や、房総の山々を見渡す大パノラマが広がる「鹿野山・九十九谷展望公園」など、美しい自然景勝地が豊富。2030年に向けて、千葉ロッテマリーンズのファーム本拠地となるボールパーク整備計画が進行中。

グルメ:豊かな自然が育む「久留里の名水」を使用した地酒、新鮮な「江戸前海苔」、自然豊かな山間部でもたらされる「ジビエ料理」や、地元産の卵やはちみつを使ったスイーツなどが名物。

今回お話を伺った方

君津市役所  ボールパーク推進課 ご担当者様 千葉ロッテマリーンズの二軍拠点誘致に伴い策定された「整備基本計画」の推進役。2030年のボールパーク開業に向け、メインスタジアムの基盤整備だけでなく、市民が日常的にスポーツや交流を楽しめる公園づくり、防災拠点としての機能確保、さらには君津駅からのストリートのウォーカブル化など、スポーツを核とした先進的な街づくりの舵取りを担っている。

筆者プロフィール

福本 拓元(ふくもと たくゆき) 株式会社ニホンノチカラ 代表取締役。1975年愛媛県生まれ。18歳で渡米し、異文化の中で「日本の価値」を再認識。帰国後、株式会社ユーグレナの創業に参画し、取締役として東証一部(現プライム)上場に貢献。「ミドリムシで地球を救う」活動に20年捧げた後、2025年、原点である地方創生を目指し「ニホンノチカラ」を創業。全国1,718市町村を巡り、地方の宝を発掘する「1718ニホン探索」を継続中。