震災の記憶を刻み、未来を灯すスマートコミュニティの挑戦

新地町(福島県)ーー1718ニホン探索(41/1,718)

再開発エリアの中心「新地駅」

「1718ニホン探索」プロジェクト、41番目の訪問地として私が降り立ったのは、東北エリア初となる福島県、その最北端に位置する新地町です。

新地町の再開発エリアである新地駅周辺エリアを訪問し、まず目に飛び込んできたのは、驚くほど美しく整備された駅前の街並みでした。しかし、この風景が「かつての日常」の上に、膨大な決意と年月をかけて積み上げられたものであることを、私は今回の取材を通じて改めて痛感することになります。

訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。

Yo, 福島の北の果て。始まりの場所。
国道6号、潮の香りが合図だ。
鹿狼山(かろうさん)から見る朝焼け。
みんな待ってる、ここが私たちのHome。

常磐線ぶらり、新地駅でDrop
震災(あの日)を越えて、止まらねぇぜNon stop
LNG基地、エネルギーの拠点
未来を照らす灯火、消えることねぇ
ニラにイチゴ、土の恵みは最高
食ってみろよ、飛ばすぜこの熱量(バイブス)
釣師(つるし)のパーク、スケボーの音
響くぜこの空間、復興の鼓動

好きだべ、新地。海と山のHarmony 
忘れちゃいけねぇ、ここにあるStory 
「んだんだ、新地。いいとこだべ?」 
風に吹かれて、明日へ歩き出せ 
最北の誇り、胸に刻み込め

おじいちゃん、おばあちゃん、いつも「元気だがぁ?」
道の駅で買い物、笑顔が広がる
「こでらんに」美味い、海鮮の宝庫
シラスにカレイ、心まで満たそう

元旦は鹿狼山、日本一早い登山
願いを込めて、拝むぜ黄金の太陽
「おらほの町」は、小さいけれど
どこより熱い、絆のパワースポット

苦しい時は、手を取り合って 
「まがせとけ」って、笑い合って 
流した涙も、潮風が乾かす 
この場所でずっと、鼓動を鳴らす

好きだべ、新地。海と山のHarmony 
忘れちゃいけねぇ、ここにあるStory 
「んだんだ、新地。いいとこだべ?」 
風に吹かれて、明日へ歩き出せ 
最北の誇り、胸に刻み込め

相馬の隣、でも唯一無二。 
「また来(き)せね」って、笑顔で見送る。 
SHINCHI TOWN... 0244。Peace out.


ゼロからの再出発、そして「スマートコミュニティ」へ

新地町役場の企画政策課を訪ね、復興再開発の歩みについてお話を伺いました。東日本大震災の津波により、駅周辺を含む沿岸部は壊滅的な被害を受け、一度は完全な更地となりました。そこから町が選択したのは、単なる「復旧」ではなく、エネルギーの地産地消を実現する「スマートコミュニティ」への転換でした。

特に驚いたのは、町が第三セクターとして自ら「新地スマートエナジー」という会社を設立している点です。LNG(液化天然ガス)を燃料に、電気だけでなく発電時の廃熱まで冷暖房に活用するコージェネレーションシステムを採用。駅前の公共施設や商業施設、ホテル、さらには線路向かいのフットサル場まで、エリアを限定して熱と光を供給しています。

「災害に強く、持続可能なまちづくり」を掲げる自治体は多いですが、新地町のようにエネルギーの供給主体まで自分たちで担うという姿勢には、この場所を二度と失わないという強い意志を感じました。

第3セクター「新地スマートエナジー」のエネルギーセンター

文化センター「観海ホール」

商業施設もエリア内創出エネルギーで運営

復興の痕跡と「かさ上げ」の記憶

役場の方に案内された周辺を歩いてみました。駅の近くには「津波防災緑地」が広がっています。かつてここには漁師町としての活気ある住宅地があったといいます。 歩いていると、ふと地面の高さに違和感を覚える場所がありました。 「この住宅地や駅前エリアは、盛り土をして『かさ上げ』を行っているんです」

その言葉通り、整備されていない土地がまるで窪地のように低く残っているのが見えます。本来の土地の高さと、安全のために積み上げられた高さ。その数メートルの差こそが、この15年間の格闘の跡そのものでした。盛り土の上には黒松が植えられ、いまや立派な松林となっていましたが、かつての住人の名前を刻んだ慰霊碑を前にすると、言葉を失います。

新地町は幸いにも風向きの関係で放射性物質の影響が比較的少なく、避難指示区域には指定されませんでした。しかし、距離的には福島第一原発から近く、目に見えない不安と戦いながら、この地を離れず踏ん張ってきた人々がいます。

津波被災地跡地にある「釣師防災緑地公園」

残された最後のピース「アグリ施設」

現在、スマートコミュニティ構想の中で唯一「未完」となっているのが、農業生産施設(アグリ施設)の誘致だそうです。エネルギー供給の仕組みはすでに完成しており、あとはこの施設が入れば計画は完結します。 「ここが来れば、計画としては終わりなんです」 担当者の方の言葉に、ゴールまであと一歩のところまで来た復興の重みを感じました。

アメリカ留学時代、私は「日本の価値」を再認識しましたが、ここ新地町で見たのは、逆境から立ち上がる日本人の底力でした。最先端のエネルギーマネジメントと、かつての住宅地の記憶が共生するこの町は、これからの日本の地方が目指すべき一つの形を示しているのかもしれません。

アグリ施設の誘致が決まり、このスマートコミュニティがフル稼働する日が来ることを、私は心から願っています。

鹿狼山登山口近くにある「まぁるの庭」からの風景

新地町の情報まとめ

福島県の最北端、太平洋に面した相馬地方に位置する、人口約7,400人の町。東日本大震災では全世帯の約半数が被災するという甚大な被害を受けたが、震災後は「新地町復興計画」に基づき、環境配慮型・防災型のまちづくりを推進。新地駅周辺を中心に、スマートコミュニティによる先進的なエネルギー供給体制を構築している。

  • 産業: 農業(米、イチゴ、ニラ等)や漁業が盛ん。近年はエネルギー供給事業やアグリビジネスの誘致に注力している。

  • 文化・観光: 鹿狼山(かろうさん)からの絶景や、震災の教訓を伝える「新地町キャンプ場」、震災遺構としての側面も持つ「釣師防災緑地公園」などが知られる。

  • グルメ: 特産のイチゴ、太平洋の新鮮な魚介類。特に「新地産ニラ」を使った特産品開発も進められている。

今回お話を伺った方

新地町役場 企画政策課 ご担当者様 新地町のスマートコミュニティ構想および復興再開発の推進を担う。エネルギーの地産地消を通じた持続可能なまちづくりや、アグリ施設の誘致による地域活性化に従事。震災の教訓を活かした「災害に強い町」の実現に向け、現場の最前線で調整にあたっている。

筆者プロフィール

福本 拓元(ふくもと たくゆき) 株式会社ニホンノチカラ 代表取締役。1975年愛媛県生まれ。18歳で渡米し、異文化の中で「日本の価値」を再認識。帰国後、株式会社ユーグレナの創業に参画し、取締役として東証一部(現プライム)上場に貢献。「ミドリムシで地球を救う」活動に20年捧げた後、2025年、原点である地方創生を目指し「ニホンノチカラ」を創業。全国1,718市町村を巡り、地方の宝を発掘する「1718ニホン探索」を継続中。