「糸島ブランド」の真髄に触れる――農・水・住が調和する理想郷の形
糸島市(福岡県)ーー1718ニホン探索(19/1,718)
九州最初の訪問地は、人気の糸島市
「1718ニホン探索」の旅も、ついに九州へと駒を進めた。記念すべき19番目の訪問地は、福岡県糸島市。かねてよりその名は「福岡市周辺の人気都市」として私の耳に届いていた。何より、福岡で青春時代を過ごした私の妻が「将来は糸島に住みたい」と熱望してやまない場所でもある。私自身、愛媛県新居浜市の兼業農家の倅(せがれ)として、土の匂いや海の潮風には人一倍の愛着がある。期待に胸を膨らませ、糸島市役所の門を叩いた。
今回対応いただいたのは、情報政策課とブランド政策課のお二人だ。対話を通じて見えてきたのは、糸島が単なる「流行りの観光地」ではなく、一次産業を核とした極めて強固な経済圏と、質の高いライフスタイルを両立させているという事実だった。
訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。
Yo, Itoshima City... 202X 玄界灘の風、感じて。 Check it out, our hometown pride. 夜明けとともに 動き出す港 可也山(かやさん)の影 背負って進もう 「糸島富士」が 俺らを見守る 自然の恵み 今日もまた昂(たか)まる 二見ヶ浦 夫婦岩(めおといわ)の鳥居 サンセットロード 飛ばすこの通り 芥屋の大門(けやのおおと) 波の彫刻 都会の隣で 見つける幸福 「ばりよかとこやん?」って 胸を張って言える この街のバイブス 一生消えん It's my town, Itoshima City 青い海と緑が ぶち綺麗か It's my life, Itoshima City ばり好いとう この街が誇り 風に乗せて 歌を繋げ (Together) ずっとここで 生きていくっちゃん お腹が空いたら 伊都菜彩(いとさいさい) 新鮮な野菜 「こればり安かやん!」 糸島豚に 真鯛の旨味 食の宝庫に 溺れる楽しみ 冬が来れば 牡蠣小屋の煙 岐志(きし)に船越 みんな集まり アツアツを頬張り 笑うとよ あまおうの甘か匂い 誘うとよ 「またおいで」って あったかい言葉 根付いとるバイ この土地の心(ちから) It's my town, Itoshima City 青い海と緑が ぶち綺麗か It's my life, Itoshima City ばり好いとう この街が誇り 風に乗せて 歌を繋げ (Together) ずっとここで 生きていくっちゃん ヤシの木ブランコ 揺れる夕暮れ 帰り道 潮の香りが包むけん (Together) Itoshima... Our Sweet Home. Peace out.
圧倒的な「食」のポテンシャルと戦略的ブランディング
糸島を語る上で欠かせないのが、その豊潤な「食」だ。玄界灘に面したこの地は、かつて真鯛の漁獲量で日本一を誇ったこともあるほど、水産資源に恵まれている。 「今は統計の取り方が変わりましたが、今でもトップクラスの誇りを持っています」 担当者の方の言葉には、確かな自負が滲んでいた。冬になれば、20数軒もの「牡蠣小屋」が港を彩る。驚いたのは、その進化だ。かつてはビニールハウスのような仮設店舗が主流だったが、今では常設化が進み、一つの「冬の風物詩」として強固なブランドを確立している。
農業に目を向ければ、そこには「少量多品種」の豊かな世界が広がっていた。特定の巨大産品に依存するのではなく、多種多様な野菜や果物が、直売所「伊都菜彩(いとさいさい)」に並ぶ。ここは売上日本一を記録したこともある怪物級の直売所だ。私も以前訪れたことがあるが、あの活気と鮮度は、都心の高級スーパーでは決して真似できない。
さらに「糸島豚」や乳製品の「伊都物語」といった畜産ブランドも、徹底した品質管理のもと、福岡市内のみならず首都圏の物産展でも高い評価を得ているという。糸島という名前が付くだけで、消費者の信頼を勝ち取ることができる。これは一朝一夕にできたものではなく、生産者と行政が二人三脚で積み上げてきた「信頼」という名の資産なのだ。
糸島の新鮮な食材が並ぶ「伊都菜彩」
「志摩の四季」の「いとしま海鮮丼」
糸島の冬の風物詩「牡蠣小屋」
「ベッドタウン」と「パラダイス」の絶妙な境界線
糸島のもう一つの強みは、福岡市中心部から電車や車で20〜30分という圧倒的なアクセスの良さだ。 「30代から40代の現役世代が家を建て、人口が微増しています」 という言葉通り、ここは単なる観光地ではなく、血の通った「暮らしの場」である。
都会の利便性を享受しながら、週末には庭で土をいじり、朝獲れの魚を捌く。そんな「豊かな日常」を求めて移住してくる若い世代が後を絶たない。古民家をリフォームして住みこなす人、民泊を経営しながらクリエイティブな仕事に従事する人。糸島には、画一的な都市生活から抜け出した「新しい日本人の生き方」の雛形がある。
実際に海岸沿いの高台を走ってみると、その価値が理解できる。私が最近聞いた話によると、海が見える景観の良い土地は、今や奪い合いの状態だという。
糸島の青く輝く海
訪問を終えて
私はかつて、ユーグレナの創業期に全国を駆け回り、地方の疲弊を目の当たりにしてきた。しかし同時に、そこには磨けば光るダイヤモンドの原石が埋もれていることも知っている。 糸島で感じたのは、一次産業が「守るべき伝統」としてだけでなく、「攻めるべきビジネス」として機能している強さだ。
私たちが「株式会社ニホンノチカラ」を通じて実現したいのは、まさにこうした地方の「隠れた宝」の再編集である。糸島のように、自らの価値を再定義し、ブランドとして世に解き放つ地域を日本中に増やしたい。そう強く感じさせる「九州最初の訪問地」となった。
二見ヶ浦の夫婦岩
芥屋の大門
「糸島のトトロの森」と言われる芥屋の大門付近の林道
糸島市の情報まとめ
福岡県の西北部、糸島半島に位置する、人口約10万人の都市。福岡市中心部からのアクセスが非常に良く、豊かな自然と都市機能が調和したエリアとして移住先・観光地ともに絶大な人気を誇る。古くは「魏志倭人伝」に記された「伊都国(いとこく)」の比定地とされ、歴史的背景も深い。
産業:農業・漁業の一次産業が極めて盛ん。日本有数の売上を誇る直売所「伊都菜彩」を核とした「地産地消」のビジネスモデルが確立されている。
文化・観光:冬の風物詩である「牡蠣小屋」は全国的に有名。また、美しい海岸線(二見ヶ浦の夫婦岩など)を活かしたカフェや民泊施設が点在し、若年層や外国人観光客も多く訪れる。
グルメ:玄界灘の新鮮な魚介(真鯛、牡蠣、サワラ)、ブランド豚「糸島豚」、濃厚な味わいで知られる飲むヨーグルト「伊都物語」など、食のブランド力は全国屈指である。
今回お話を伺った方
糸島市役所 ブランド政策課・情報政策課の皆様 糸島市の最大の強みである「食」と「住」の融合を推進する糸島のブランド政策、広報を担う方々。一次産業のブランド化(糸島ブランドの推進)だけでなく、移住促進や観光DXなど、多角的な視点から市の価値向上に取り組んでいる。今回の対談では、地域に対する深い愛情と糸島ブランドへの自信を感じさせる姿勢が、非常に印象的であった。
筆者プロフィール
福本 拓元(ふくもと たくゆき) 株式会社ニホンノチカラ 代表取締役。1975年愛媛県生まれ。18歳で渡米し、異文化の中で「日本の価値」を再認識。帰国後、株式会社ユーグレナの創業に参画し、取締役として東証一部(現プライム)上場に貢献。「ミドリムシで地球を救う」活動に20年捧げた後、2025年、原点である地方創生を目指し「ニホンノチカラ」を創業。全国1,718市町村を巡り、地方の宝を発掘する「1718ニホン探索」を継続中。










