1300年の古代史とストリートカルチャーが交錯する街――宮城県多賀城市・深谷晃祐市長に聞く「挑戦と日々のよろこび」
多賀城市(静岡県)ーー1718ニホン探索(106/1,718)
多賀城市深谷晃祐市長(右)
再建された多賀城南門
全国1,718の市町村を自らの足で巡り、地域の隠れた価値と未来への熱量を掘り起こす「1718ニホン探索」。 記念すべき106自治体目にして、プロジェクトとして初めて足を踏み入れたのは宮城県。訪れたのは、かつて古代東北の政治・軍事・文化の中心地として栄えた歴史の街、多賀城市です。
朝の澄んだ空気の中、復元された壮大な多賀城跡の南門を仰ぎ見、駅前に広がる美しく洗練された多賀城市立図書館を歩きながら、私はこの街が放つ独特のエネルギーを肌で感じていました。仙台駅からJRでわずか20分足らずという都市の利便性を持ちながら、1,300年の重厚な歴史が色濃く残る。そして何より、現代の新しい息吹がそこかしこに芽吹いているのです。
今回対談させていただいたのは、多賀城市の舵取りを担う深谷晃祐市長。元ハウスDJ、店舗や内装を手掛ける大工、26歳で全国最年少市議として初当選という、極めてユニークな歩みを持つ若きリーダーです。
訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。
Yo, 陸奥の風吹く宮城の拠点 古代から続く俺らの原点 1300年の時を超えて 多賀城、ここから未来へ繋げてくぜ Check it out! 太宰府・平城宮と並び立つ城跡 歩けば蘇る古代の足音 政治・軍事・文化、束ねた要所 政庁跡に立てば広がるビジョン 悠久の歴史背負う誇り だが過去だけに浸るわけねぇストーリー 駅前降り立ちゃ出迎える知識の宝庫 多賀城市立図書館、開かれた方向 本を手にしてコーヒーを片手に 語り合う仲間、笑い声集めに TAGAJO CENTRAL PARK、緑が揺れる 子供たちの歓声、風に乗って響く んだっちゃ!ここが俺らの地元 暮らしやすさなら間違いねぇ拠点 産業道路、仙台港の近郊 モノづくりと物流、支える進行 汗流し働く熱いクラフトマン 夜になれば暖簾くぐるよ、いずい顔すんな 古代米の麺に、地酒をクイッと 旨いもん食って気力もピットイン スポーツで汗かき、文化で磨く 老いも若きもこの街で輝く 「日々のよろこびふくらむまち」 嘘偽りねぇ、見渡せばほら、すぐそこに! 多賀城 REP! 千年の GATE 過去から未来へ刻む UPDATE 史跡の風、いま新しく吹く よろこびが胸いっぱいにふくらむ んだがらさ! 共に歩もうぜ BROTHER この街を愛する想いは変わらねぇ 多賀城 REP! ずっと誇らしく 声高く叫べ、俺らのホームタウン! 古代の浪漫、現代の鼓動 繋いできたバトン、次世代へパス んだな、多賀城。 これからもずっと、この場所で。 TAGAJO CITY... We make history.
1300年の南門の前に広がる、日本屈指のスケートボードパーク
対談の中でまず深く共鳴したのが、深谷市長の「場づくり」に対する感性と哲学でした。
私が午前中に訪れて衝撃を受けたのが、「TAGAJO CENTRAL PARK」です。本格的な野球場やサッカー場に隣接して整備されているのは、屋内・屋外を備えた国内屈指のスケートボードパークや3×3コート。雨の日でも滑ることができる本格的な全天候型スケートパークは、全国的にも極めて珍しい存在です。
なぜ、古代史の象徴である多賀城の地にスケートボードパークなのか。深谷市長の答えは見事でした。
「オリンピックを見ていて強く感じたんです。スケートボードって、選手同士が本気で競い合いながらも、相手が失敗したら本気で悔しがり、素晴らしい技を決めたら敵味方関係なく全員で称え合いますよね。自分だけが勝てばいいのではなく、お互いをリスペクトし合える精神性。これを街づくりの土台に根付かせたかったんです。それに人口減少が進む中で、チームスポーツを組むのが難しくなっても、スケートボードなら個人でも始められ、すぐに仲間ができる」
レッドブルのエアレースのように「歴史的背景と現代のアーバンスポーツが掛け合わさる景観美」に着目し、再建された壮大な南門を臨む場所にパークを配置したと語ってくれました。
歴史を過去の遺産としてただ保存するのではなく、現代の若者や子どもたちが生き生きと躍動する舞台として再編集する。地方創生を志す起業家として、思わず膝を打ちたくなる鮮やかな視点でした。
TAGAJO CENTRAL PARKの屋外スケボー場(左)、PARK敷地内のカフェ(右)
「選曲」と「街づくり」――異色のキャリアが育んだリアリズム
深谷市長のキャリアは実に多彩です。高校卒業後に上京し、音楽専門学校に通いながらハウスDJとして活動。インディーズレーベルから音源をリリースした経験を持ちます。同時に大工として百貨店閉店後の夜間工事や店舗内装、イベント設営の現場で汗を流してきました。
23歳で家庭を持ち、地元へ帰郷。飲食店の現場やピアノの販売・買い取り、さらには自ら「スタッドレスキュー」という出張タイヤ交換サービスを立ち上げて自活するなど、泥臭い商売の現場をくぐり抜けてきました。
私もかつて、20代の頃にアメリカ留学から一時帰国した際、愛媛の製油所で煙突に登ってバルブ整備の危険なアルバイトをし、その後母の会社で全国を車で回って営業に奔走した泥臭い下積みがあります。だからこそ、現場の汗と痛みがわかる深谷市長の言葉には、強い実感がこもっているのを感じます。
「DJって、オーディエンスの表情や空気を感じながら選曲をして、気持ちよくお酒を飲んだり踊ったりする空間を演出する仕事なんです。街づくりも全く同じで、街には色んな年代、色んな考えの人がいる。その空気を感じながら政策をミックスしていくんです。演説だって同じ。高齢者の前で子育て政策ばかり語っても響かないし、ヒップホップが好きなフロアにハードハウスをぶち込んでも誰も踊らないですから」
飾らない笑顔でそう語る市長ですが、政治の原点は極めて誠実です。26歳で挑んだ最初の市議選では、具体的な公約をあえて並べず、「挨拶でつながる街」を掲げ、選挙カーで自分の名前すら連呼しなかったといいます。「議員には執行権がないのに、自分が何かをやると約束するのは嘘になる」。その実直さと飾らない人柄が、今の市政運営の太い幹になっています。
多賀城跡内の政庁復元模型
国宝 多賀城碑
魚を与えるのではなく、釣り方を教える――「挑戦できる街」へ
多賀城市の人口は約6万2,900人。東日本大震災で一時減少したものの、現在では震災前の水準近くまで戻り、ほぼ横ばいを保っています。特筆すべきは、高齢化率が27%弱と宮城県平均を下回り、世帯数が増加傾向にある点です。仙台に隣接する利便性に加え、駅前のTSUTAYA・スターバックスと融合した多賀市営図書館(年間70万〜80万人が利用)や、子どもが18歳まで文化・スポーツ施設を原則無料で利用できる環境など、子育て世代が惹きつけられる土壌が整っています。
しかし、深谷市長の視線は単なる福祉のバラマキには向いていません。
「老子の言葉に『魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えよ』とありますよね。行政の役割は保護することではなく、自立を促すことであるべきです。給食費の無償化といった支援だけでなく、子どもたちが自分の可能性を信じて何かにチャレンジできる機会を圧倒的につくりたい。『多賀城なら挑戦できる』と感じて若い世代が住み続けてくれれば、結果として高齢者への福祉も持続可能になります」
現在、多賀城市では創業支援として、起業後3年間にわたる金融機関との伴走支援や補助金制度を展開し、すでに30社以上の事業者が活動を続けています。
深谷市長は現在、自治体と地域金融機関が連携して組成するスタートアップ支援ファンドの導入など、次のステージを見据えています。私もユーグレナでゼロから事業を立ち上げ、上場まで駆け抜けた経験から、地方創生におけるリスクマネーと伴走型支援の重要性を痛感しています。「ぜひ、先行する自治体ファンドの事例やネットワークをお繋ぎします」とお伝えし、熱い議論が交わされました。
古代、東北のフロンティアを切り拓く拠点だった多賀城。1,300年の時を超えた今、この街は「日々のよろこびがふくらみ、誰もが新しい一歩を踏み出せる街」として、力強く未来へ向かって歩みを進めています。
取材日:10月27日(火)
多賀城市営図書館
仙台駅から約20分の多賀城駅
さんみらい多賀城イベントプラザSTEP
多賀城市の情報まとめ
宮城県の中央部に位置する、人口約6万2,900人の都市。奈良時代に東北地方の政治・軍事・文化の拠点として「多賀城」が置かれ、平城京跡や太宰府跡と並び「日本三大史跡」の一つに数えられる1,300年の歴史を誇る。仙台市に隣接し、市内にはJR東北本線・仙石線の2路線4駅を有するため、交通アクセスの良さからベッドタウンとしても発展している。近年は駅前の一体型複合図書館や、南門を臨む多賀城セントラルパークなど、歴史・文化・スポーツが調和した街づくりが進む。
産業:仙台港に隣接する臨海部を中心に仙台塩釜港背後地として工業・流通機能が集積する一方、豊かな都市近郊型農業も営まれる。
文化・観光:日本三大史跡の「多賀城跡」や重要文化財「多賀城碑」、東北歴史博物館が立地し、古代東北の歴史遺産が色濃く残る。
グルメ:古代米(黒米)を用いた特産品や地酒「おもわくトマト」、近隣の三陸・仙台湾の新鮮な海の幸を活かした食文化が親しまれている。
今回お話を伺った方
深谷 晃祐(ふかや・こうすけ)氏/多賀城市長 1980年生まれ、多賀城市出身。音楽専門学校卒業後、ハウスDJや大工、飲食店、自営業などを経て、2007年に当時全国最年少(26歳)で多賀城市議会議員に初当選(2期)。その後、宮城県議会議員を経て、2020年10月の多賀城市長選挙にて初当選し、現在2期目を務める。「日々のよろこびふくらむまち」を掲げ、歴史遺産の継承とアーバンスポーツ・文化交流を融合させた新しいまちづくりを推進している。
筆者プロフィール
福本 拓元(ふくもと たくゆき) 株式会社ニホンノチカラ 代表取締役。1975年愛媛県新居浜市生まれ。高校卒業後に渡米し、University of Central Oklahoma へ入学。帰国後、株式会社ハイクロレラ(現エポラ)専務取締役として西日本を中心に営業活動に従事し、地方の課題と可能性を肌で知る。2005年8月、株式会社ユーグレナに共同創業者3人の一人として参画。取締役事業統括責任者として事業の立ち上げとマーケティング全般を管掌し、東証マザーズ・東証一部(現プライム)上場を果たす。創業20年・自身50歳の節目となる2025年11月、「地方発、日本再生!」をミッションに株式会社ニホンノチカラを設立し、全国1,718市町村を自らの足で巡る「1718ニホン探索」を開始。現在、株式会社ユーグレナ共同創業者/顧問、愛媛県新居浜市戦略アドバイザーなども務める。日本マーケティング大賞 第7回奨励賞受賞。
YouTube :@nihonnochikara1718
X(旧Twitter):@nihonnochika












