埋め立てから28年、結実するサンポート再開発。「あなぶきアリーナ香川」が拓く四国の玄関口の未来
高松市(香川県)ーー1718ニホン探索(88/1,718)
サンポート高松にある「あなぶきアリーナ香川」
特別名勝 栗林公園
全国1,718すべての市町村を巡り、現場の熱気や地域を動かすリーダーたちの声から日本の可能性を発掘する「1718ニホン探索」。香川県で最初の訪問地となったのは、県庁所在地である高松市です。
実は高松は、私にとって非常に深いゆかりのある街です。高校卒業後、坂本龍馬に憧れてアメリカ留学を目指していた10代の終わり、渡米前の準備期間として約半年間を過ごしたのがこの地でした。当時はことでん瓦町駅の周辺が若者や商業の中心で、私も浅野方面からよく瓦町へと通っていた記憶が鮮明に残っています。
それから年月が経ち、久しぶりに降り立った高松の街は、私の記憶を遥かに超える進化を遂げていました。特にJR高松駅から瀬戸内海へと広がるベイエリア「サンポート高松」の変貌ぶりには、強い衝撃を受けました。今回は、この大規模な再開発を牽引する高松市役所都市計画課のご担当者様を訪ね、街づくりの歩みと今後の展望を伺いました。
訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。
瀬戸の潮風、変わる街並み 新しい風が吹き抜けるサンポート ほな行こか、高松City! 朝の一杯、まずはかけうどん いりこ出汁の香りでスイッチをオン JR高松駅、降り立ちゃ広がるベイサイド 昔ながらの情緒と未来がリサイズ 屋島を背にして見渡す港町 変わらん良さと、変わりゆく形 「なんしょんな?」仲間と交わす合言葉 歩き出せば響く、新しい鼓動が 大名庭園、緑の栗林(りつりん) 一歩一景、心ほどけてくシーン だけど静けさだけやない今のタカマツ サンポートエリア、熱気が湧き立つ あなぶきアリーナ、万人の歓声 海沿いに響き渡る最高のアンセム 遠くの街から人が集まって この港からまた夢が広がってく 青い瀬戸内、輝くマリーナ 揺れるオリーブ、響くアリーナ おいでまい、ここが高松 ほっこりする間もなくアツく沸かす 歴史を背負うて未来を拓く 讃岐の風に乗ってどこまでも行く TAKAMATSU Town, We rep this place! 有名アーティストもここでシャウト 1万人で埋め尽くすフロアはドープ 「ごっつい景色やな」って見上げるタワー 海風に乗って届く街のパワー 商店街を抜けて中央通り 夜になればまた違うストーリー 骨付鳥片手に語り合う未来 「うまげな街になったな」って笑いたい 波の音と重なるベースライン 伝統と進化が描くサイン いつでも帰っておいでよここに 暖かく迎えるよ、讃岐の街に 青い瀬戸内、輝くマリーナ 揺れるオリーブ、響くアリーナ おいでまい、ここが高松 ほっこりする間もなくアツく沸かす 歴史を背負うて未来を拓く 讃岐の風に乗ってどこまでも行く TAKAMATSU Town, We rep this place! 高松、まだまだ止まらんけんの ずっと輝き続けるベイエリア This is our home, TAKAMATSU City.
埋め立て完了から28年。段階的に進められてきたウォーターフロントの全体設計
瀬戸内海の穏やかな海と島々を望むサンポート地区。現在広がる美しい景観は、決して短期間で出来上がったものではありません。
都市計画課の方のお話によると、現在のサンポートの広大な敷地は大規模な埋め立て事業によって生まれたもので、埋め立て自体が完了したのは平成10年(1998年)、今から約28年前のことでした。もともと内陸寄りにあった旧JR高松駅を海側へと移転させ、県と市が綿密に連携しながら道路網や区画利用の設計を推進。更地の状態からおよそ30年近い歳月をかけ、一歩ずつ着実に開発が進められてきました。
四国一の高さ(約151m)を誇る「高松シンボルタワー」をはじめ、合同庁舎、フェリーターミナル、緑豊かな広場などが一体的に整備されています。行政が全体の都市軸をしっかりとデザインしながら、地元の民間企業やJRを巻き込んできた公民連携の確かな足跡がそこにありました。
高松シンボルタワー
JR高松駅
シンボルタワーの展望スペースからの景観
1万人収容の「あなぶきアリーナ香川」が開いた新たな扉
この息の長いサンポート開発が、いま大きな「完成形」へと近づいています。その決定打となったのが、2025年2月に開館した四国最大級の施設「あなぶきアリーナ香川(香川県立アリーナ)」です。
最大1万人を収容できるこのアリーナの誕生により、四国のエンタメと交流人口の流れは劇的に変化しました。こけら落とし公演のサザンオールスターズを皮切りに、MISIAやMrs. GREEN APPLEといったトップアーティストの大規模ツアーが次々と実現しています。これまで四国では会場の規模や大型機材車の搬入動線の制約から誘致が難しかったクラスの公演が、高松に集約されるようになったのです。
メインアリーナは大型トラックが直接乗り入れて設営できるセメント仕様となっており、プロバスケットボールBリーグ・香川ファイブアローズの試合時には専用の床板を敷くなど、実用性に優れた設計がなされています。私が訪れた日も、イベントの有無に関わらず、海風を感じられるカフェで寛ぐ市民や、アリーナを背景に記念撮影を楽しむ若者の姿が多く見られ、日常的な賑わい拠点としても定着していました。
常に一般解放されている「あなぶきアリーナ香川」の内部
アリーナ隣にある噴水公園から見える「女木島」
首長のリーダーシップと行政のコーディネート力が生む「街の推進力」
私は愛媛県新居浜市の出身で、現在も新居浜市のアドバイザーを務めるなど瀬戸内エリアの動向を注視していますが、他の都市と比較しても、高松市と香川県が一体となった推進力には目を見張るものがあります。
松山でもアリーナ構想などの議論もありますが、まだ形にはなっておりません。一方の高松では、県と市が役割分担を明確にし、主要駅の目の前という一等地に1万人規模のアリーナを見事に実現させました。地方において、首長や行政組織が議会や関係機関と連携し、明確なリーダーシップを発揮して物事をやり切ることが、どれほど街の未来を左右するかを実感します。
さらにサンポート地区では、四国初進出となる最高級外資系ホテル「マンダリン オリエンタル 瀬戸内」の建設も進んでおり(2027年夏開業予定)、国際水準の宿泊インフラが整うことで、富裕層インバウンドの誘致にも弾みがつきます。
一方で、都市計画課の方との対話で見えてきた今後の大きな課題が「回遊性の創出」です。
サンポート地区という圧倒的な拠点が完成しつつある今、アリーナや港を訪れた数千・数万の人流を、日本屈指の長さを誇る高松中央商店街(丸亀町・瓦町エリア)などの既存市街地へといかに自然に引き込むか。駅前ベイエリアと歴史ある商店街をシームレスにつなぐ動線づくりと情報発信が、街全体の経済循環を生む鍵となります。
埋め立てから28年、行政と民間が粘り強く描き続けてきた高松のグランドデザインは、地方都市が自らの力で新たな可能性を切り拓く素晴らしいモデルケースを示していました。
商店街の再生で話題の「丸亀町商店街」
サンポート隣にある「高松城跡 玉藻公園」
屋島の展望台からの景観
高松市の情報まとめ
香川県の中央部に位置する県庁所在地で、人口約41万人の四国の中核都市。古くから讃岐高松藩12万石の城下町、そして本州と四国を結ぶ「四国の玄関口」として発展してきました。風光明媚な瀬戸内海に面し、特別名勝・栗林公園などの豊かな歴史資産と、サンポート高松を中心とする近代的なウォーターフロントが見事に融合した国際観光都市です。
産業: 四国の経済・行政機能を牽引する第三次産業や商業が集積するほか、沿岸部の工業地帯、世界最高峰の花崗岩として名高い「庵治石(あじいし)」の採石・加工業、香川漆器などの伝統工芸が盛んです。
文化・観光: 国の特別名勝に指定されている大名庭園「栗林公園」、日本三大水城の一つ「高松城跡(玉藻公園)」、四国最高峰の高さを誇る「高松シンボルタワー」、瀬戸内国際芸術祭の玄関口となる島々など、多彩な魅力を有します。
グルメ: 全国的に有名な「讃岐うどん」の本場であり、スパイシーな「骨付鳥」、瀬戸内海の新鮮な魚介類(ハマチ、サワラなど)、オリーブ牛やオリーブ豚といった豊かな食文化が根付いています。
今回お話を伺った方
高松市役所 都市計画課 ご担当者様 高松市全体の都市計画マスタープランの策定や土地利用の適正化、幹線道路・交通ネットワークの整備を統括する中枢部門。県や民間事業者と連携しながら、サンポート高松をはじめとする重要拠点の開発や、都市の持続的な回遊性向上を推進している。
筆者プロフィール
福本 拓元(ふくもと たくゆき) 株式会社ニホンノチカラ 代表取締役。1975年愛媛県生まれ。18歳で渡米し、異文化の中で「日本の価値」を再認識。帰国後、株式会社ユーグレナの創業に参画し、取締役として東証一部(現プライム)上場に貢献。「ミドリムシで地球を救う」活動に20年捧げた後、2025年、原点である地方創生を目指し「ニホンノチカラ」を創業。全国1,718市町村を巡り、地方の宝を発掘する「1718ニホン探索」を継続中。













