太宰府の「通過点」ではない、2000年の時を刻む安産と山城の聖地
宇美町(福岡県)ーー1718ニホン探索(24/1,718)
宇美八幡宮にある樹齢2000年超の大楠
「福岡市のベッドタウン」 事前のリサーチで宇美町(うみまち)について目にした言葉だ。確かに、博多から車を走らせれば30分もかからない。隣接する春日市などが「純然たるベッドタウン」としての性格を強めているのを見てきただけに、私は宇美町もまた、都市の影に隠れた静かな住宅街なのだろうと想像していた。
しかし、宇美町役場に一歩足を踏み入れ、シティプロモーション課の担当者の方とお話しした瞬間、その認識は脆くも崩れ去った。ここは単なる「寝に帰る街」ではない。日本の国家形成に関わる壮大な歴史が、今も息づく「祈りと防衛の最前線」だったのだ。
訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。
Yeah... Check it, one-two. 糟屋のディープサウス、宇美町(うみまち)Road. 神話の時代から続くこのBeat。 安産の神が宿る、俺らの誇り。 耳を澄ませりゃ聞こえるやろ? 街の産声が。 Let's get it! 安産の聖地、宇美八幡宮 一歩踏み込めば 神の呼吸 「産み」の名の由来、神功皇后 時を超え今も 俺らを鼓舞 「衣掛の森(きぬかけのもり)」 楠(くす)のざわめき 千年変わらん この街の景色 井野山(いのやま)登れば パノラマのView この街の未来を 俺らがBrew 歴史は古かばってん 心はNew 繋ぐ絆は 嘘じゃなか、True. 四王寺(しおうじ)の風が 背中を押すバイ 行こうぜ兄弟、情熱を燃やさんね! 鳴らせ UMI-BEAT 命の鼓動 神が宿る街 ここが俺らのHome 安産の願い 未来へ響け 宇美町(うみまち)最高! 叫び続け 鳴らせ UMI-BEAT 命の鼓動 神が宿る街 ここが俺らのHome 安産の願い 未来へ響け 宇美町(うみまち)最高! 叫び続け (ばり好いとうバイ! 宇美町!) (離れられんバイ! この街!) 参道歩けば 漂う香り 「子安餅(こやすもち)」焼ける 最高の隣(となり) 甘い餡が溶ける 疲れも吹き飛ぶ 地元のソウルフード マジで心躍る 「どげんしたと?」 気さくな声掛け 宇美の人情は あったかいだけやなか 工業団地 汗流すWork この街のエンジン 止まらぬSpark 昭和も平成も 令和の今も 「宇美に生まれて良かった」 言うちゃるけんの 誇りを胸に 今日も歩くバイ 俺らの根っこは この土にあるバイ! 鳴らせ UMI-BEAT 命の鼓動 神が宿る街 ここが俺らのHome 安産の願い 未来へ響け 宇美町(うみまち)最高! 叫び続け 鳴らせ UMI-BEAT 命の鼓動 神が宿る街 ここが俺らのHome 安産の願い 未来へ響け 宇美町(うみまち)最高! 叫び続け (ばり好いとうバイ! 宇美町!) (離れられんバイ! この街!) Yeah... 安産の神様、今日も見守ってくれ。 新しい命が、新しいビートが、 この宇美町から また生まれていく。 「また来んね」「待っとるけん」 そんな言葉が 一番の宝物。 UMI-BEAT goes on... Peace.
樹齢2000年のクスノキが語る、生命の連鎖
まず私が訪れたのは、町の象徴である「宇美八幡宮」だ。一歩境内に足を踏み入れると、圧倒的な生命力に気圧される。視線の先にあるのは、樹齢2000年以上とされる巨大な「クスノキ」だ。
2000年。それは日本がまだ「倭」と呼ばれ、弥生時代から古墳時代へと移り変わる激動の時代から、この木がここに立っていたことを意味する。神功皇后が応神天皇を出産された地という伝説があり、今も「安産の守護神」として全国から参拝客が絶えない。
私はアメリカでの学生生活時代、日本の「古さ」や「文化の厚み」を誇らしく感じていたが、ここにあるのはその究極の形だ。50歳を機に「ニホンノチカラ」を立ち上げた私にとって、この2000年の時を超えて生き続ける生命の象徴は、日本再生への強い活力を与えてくれるものだった。
神功皇后が応神天皇を出産した地と伝えられる、安産・育児の信仰が極めて厚い神社
太宰府を守る「最古の要塞」の誇り
インタビューの中で、担当者の方が熱を込めて語ってくれたのが「大野城跡」だ。多くの人は「大野城」と聞けば隣の大野城市を思い浮かべるだろう。しかし、実はこの国指定特別史跡である古代山城の面積の半分以上は、ここ宇美町に位置しているのだ。
「山城は天守閣がないので、ただの山に見えてしまいがちなんです。その価値をどう伝えるかが課題です」
担当者の言葉に、私は深く頷いた。白村江の戦いで敗れた後、唐や新羅の侵攻に備えて築かれた、日本最古の山城。それは太宰府を守るための巨大な「防衛線」だった。実際に車で山を登り「焼米ヶ原」へと向かうと、そこからは福岡を一望する絶景が広がっていた。かつての防衛の要は、今や最高の展望スポットだ。
天守閣という目に見えるシンボルがないからこそ、そこにある土塁や石垣に刻まれた「守るための意志」を感じ取ることができる。この「目に見えにくい宝」をどう編集し、世に解き放つか。これこそが私がニホンノチカラで成し遂げたい仕事そのものだと確信した。
大野城の百間石垣
3世紀中頃~後半に築造されたとされる「光正寺古墳(こうしょうじこふん)」
伝統と革新、宇美町の「地力」
宇美町の魅力は歴史だけではない。私は町の中心部にある「博多織」の工房を併設したショップを訪ねた。ガラス越しに伝統の技が見えるその空間には、野菜なども売られており、不思議な活気があった。また、江戸時代から続く酒蔵「萬代」の歴史にも驚かされた。
宇美町は、太宰府天満宮へ向かう観光客にとって、今は「通過点」に過ぎないかもしれない。しかし、2000年の森があり、古代の要塞があり、伝統を繋ぐ人々がいる。ここには、わざわざ立ち寄るべき、深い「日本」が埋もれている。
私がこれから全国を回る中でやりたいのは、こうした「通過されてしまう宝」に光を当て、多くの人を呼び戻すことだ。宇美町の山々から見た景色のように、日本の地方にはまだまだ明るい未来が広がっている。
230年の歴史を持つ酒蔵「萬代」
マルトしょうゆ
食の特産品と博多織の販売所「織りあぐり」
宇美町の情報まとめ
福岡県の中央部、糟屋郡に位置する人口約3.8万人の町。福岡市のベッドタウンとして発展しつつ、背後に三郡連山を控え、豊かな自然と深い歴史が共存している。特に聖母・神功皇后ゆかりの「安産信仰」の地として知られ、町の名前も「産み」に由来すると言われている。
産業: 交通の利便性を活かした物流拠点や工場が集積しており、製造・物流業が盛ん。農業は減少傾向にあるが、伝統産業として博多織の工房や江戸時代から続く醤油醸造など、歴史ある地場産業が今も息づいている。
文化・観光: 安産祈願で有名な「宇美八幡宮」は、国指定天然記念物の大楠が鎮座するパワースポット。また、日本最古の古代山城「大野城跡」の大部分を有し、興聖寺古墳など古代からの遺構が数多く残る。冬季には「難所ヶ滝」の巨大なつらら(氷瀑)が見られるなど、登山客にも人気。
グルメ: 「宇美八幡宮」にちなんだ「子安餅」が参拝客の名物。
今回お話を伺った方
宇美町役場 シティプロモーション課 ご担当者様 2年前の組織改革により新設された「シティプロモーション課」にて、観光、広報、そして文化財保護を一体的に推進。埋もれている歴史的資産の発信や、太宰府天満宮からの観光客誘致など、町の認知度向上と魅力発信のために日々奔走されている。
筆者プロフィール
福本 拓元(ふくもと たくゆき) 株式会社ニホンノチカラ 代表取締役。1975年愛媛県生まれ。18歳で渡米し、異文化の中で「日本の価値」を再認識。帰国後、株式会社ユーグレナの創業に参画し、取締役として東証一部(現プライム)上場に貢献。「ミドリムシで地球を救う」活動に20年捧げた後、2025年、原点である地方創生を目指し「ニホンノチカラ」を創業。全国1,718市町村を巡り、地方の宝を発掘する「1718ニホン探索」を継続中。











