空と歴史が交差する、誇り高き「炭鉱の町」福岡県志免町
志免町(福岡県)ーー1718ニホン探索(25/1,718)
旧志免鉱業所竪坑櫓
日本全国1,718の市町村を巡る「1718ニホン探索」の旅。25番目に降り立ったのは、福岡空港の目とはなの先に位置する福岡県志免町(しめまち)です。
福岡市に隣接し、都市の利便性を享受しながらも、一歩足を踏み入れれば、かつて日本の近代化を根底から支えた「黒いダイヤ」こと石炭の記憶が、強烈な存在感を放って迎えてくれました。
訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。
Yeah, Shime Town. 092 Stand up. 見上げりゃそこに 聳(そび)えるプライド わかるか? 志免の街からWe representative. Go! 俺らのシンボル 志免の竪坑櫓 日本一の高さ 誇り胸に宿る かつての炭鉱(やま)の火は 消えちゃおらん 先人たちの汗が この街の地盤(土台) 「なんしようと?」って 集まるシーメイト 放課後 公園 遊びがメインゲート ボタ山は消えても 絆は不滅 この狭い面積に 詰まった情熱 ばってん、ただの田舎と思うなよ? 人口密度は 全国でもトップクラスよ どこに行っても 誰かに会える 顔なじみの笑顔が 力を添える ここが俺らの 志免町! 櫓の下で 夢を語り合い 誰もが誇れる 志免町! 歴史と未来が 混ざり合う街 「すいとうばい」この街が一番 志免で生まれて 志免で生きる Shime Town Pride, Yeah! 腹が減ったら ドラゴンロードへ直行 ラーメンの香りに 胃袋が共鳴 天龍、工房、どこも外せんバイ 替え玉ひとつで 幸せな気分たい 買い物なら イオンもすぐそこ 志免中、志免東、仲間はどこ? 亀山八幡宮 祭りで見せる気合 伝統の神輿が 運ぶぜ期待 昔は黒ダイヤ いまは笑顔のダイヤ この街の熱気は 決して冷めんたいや 「そげんこつなか」って 笑い飛ばして 明日へ向かって また一歩踏み出して 夕暮れ時 櫓の影が伸びる 懐かしい景色に 胸が熱うなる 離れてもわかる 故郷(ふるさと)の匂い 志免の風が 俺らを呼び戻す(おかえり) ここが俺らの 志免町! 櫓の下で 夢を語り合い 誰もが誇れる 志免町! 歴史と未来が 混ざり合う街 「すいとうばい」この街が一番 志免で生まれて 志免で生きる Shime Town Pride, Yeah! 志免、須恵、粕屋、繋がるライン ばってん、中心(センター)はここ 志免バイ Peace to all my people in Shime. 見上げろ、あの櫓。俺らも高く。One.
福岡市の隣にある「暮らしやすさ」の聖地
役場を訪れてまず驚いたのは、そのアクセスの良さです。「え、もう着いたの?」と思うほど、福岡空港や博多中心部から近い。対応してくださった、まちの魅力推進課のご担当者から教えて頂いた通り、志免町はまるで福岡市に包み込まれるような便利な位置にあります。
「ここは観光地というより、『住む町』としての誇りを持っているんです」
担当者の方が誇らしげに語る通り、志免町は日本でも有数の人口密度を誇る町です。地下鉄や鉄道の駅はないものの、バス路線が住民の足を支えています。福岡市内の地価が高騰する中で、子育て世代が「ここなら理想の暮らしができる」と移り住んでくる。町内には学校や病院、保育園が凝縮されており、「どこに住んでも何かが近い」という安心感があります。まさに、ベッドタウンとしての完成形がここにありました。
志免町立町民センター。サクラみらいホールや学習室等町民生活を支える施設が揃っています。志免町の歴史を学べる展示スペースも。
空を突く「志免のプライド」:旧志免鉱業所竪坑櫓
しかし、志免町はただの「便利な住宅街」ではありません。町のどこからでも見える、あの巨大な構造物——「旧志免鉱業所竪坑櫓(たてこうやぐら)」を目にすれば、この町の魂がどこにあるかが分かります。
ご担当者の方に案内され、間近で見上げるその姿には圧倒されました。高さ47.65メートル。1943年(昭和18年)、戦時下の厳しい状況の中で建設されたこの櫓は、地下深くから石炭を運び出し、坑員を送り込むための巨大なエレベーターです。
「この櫓は、志免の誇りなんです」
その言葉が胸に響きました。同じ形式の櫓は世界に3つ、国内ではここだけにしか残っていない貴重な近代産業遺産です。かつてこの地には、国営の炭鉱があり、何千人もの「炭鉱マン」とその家族が暮らし、日本のエネルギーを支えていました。戦後の復興を支えたのは、間違いなくここにあった情熱でした。
町役場に併設された歴史資料館で当時の写真や資料を見せていただくと、ただの「古い建物」が、命の鼓動が聞こえる「生きた記憶」へと変わります。当時の過酷な労働環境、そしてそれを支えた人々のコミュニティ。その歴史の重層性が、今の志免町のアイデンティティを形作っているのだと確信しました。
旧志免鉱業所竪坑櫓の敷地内にある「シーメイト」(写真左)は総合福祉施設や、なかよしパーク(写真右)、ウォーキングロード等、市民の憩いの場になっています。
「シメッチャ」と「ドラゴンロード」に込めた願い
歴史を大切にする一方で、町は新しい魅力の発信にも余念がありません。 特に面白かったのが、町の公式キャラクター「シメッチャ」です。おでこに「クロワッサン」や「オムライス」のようなものがついているデザインですが、実は地名の由来である宇美八幡宮の「しめ縄」がモチーフになっています。
「しめ縄を張った場所=志免」という歴史的な由来を、親しみやすいキャラクターに昇華させ、リブランディングを図る姿勢。これこそが、私が「ニホンノチカラ」で目指している「地域の再編集」そのものです。
さらに、食文化もユニークです。町内を通る県道沿いには「龍」のつく名前のラーメン店が多く、通称「ドラゴンロード」と呼ばれています。町民たちの胃袋を満たしてきた濃いめの豚骨ラーメンの文化が、形を変えて生き続けている。石炭をイメージした「黒いスイーツ」など、商工会を中心に進められている新しい特産品の開発も、歴史と現代を繋ぐ素敵な試みだと感じました。
通称「ドラゴンロード」と言われる県道沿いには「龍」の文字が入ったラーメン店が点在。
志免町のゆるキャラ「シメッチャ」
炭がモチーフの「スウィーツ」が町内に点在。
旅を終えて:足元にある宝物に光を
今回の訪問で、まちの魅力推進課のご担当者様には、予定にないホールや資料館の案内までしていただき、本当に感謝の念に堪えません。成人式が行われる立派なホールで、地元の「志免飛龍太鼓」が響き渡る光景を想像し、この町のコミュニティの強さを肌で感じることができました。
志免町には、都会の便利さと、誇り高い歴史が共生しています。 「1718ニホン探索」を続ける中で、私はいつも自問します。「この土地の宝は何か?」と。志免町において、それは空にそびえ立つ竪坑櫓であり、それを守り続ける人々の「志」そのものでした。
志免町の情報まとめ
福岡県の中央部、糟屋郡に位置する、人口約4万6千人の町。福岡市に隣接し、福岡空港からも至近という抜群の利便性を誇る。かつては国営の「志免炭鉱」で栄えた歴史を持ち、日本で唯一現存する「旧志免鉱業所竪坑櫓」は国の重要文化財に指定され、町のシンボルとなっている。現在は、高い人口密度と充実した教育・医療環境を備えた「暮らしやすい町」として、子育て世代を中心に支持を集めている。
産業: かつては石炭産業が主軸。現在は福岡市のベッドタウンとしての住宅需要が中心。商業も盛んで、特に飲食店やロードサイド店舗が充実している。
文化・観光: 国指定重要文化財の「旧志免鉱業所竪坑櫓」は必見。また、宇美八幡宮に由来する「しめ縄」の伝承が残る。地元の伝統芸能「志免飛龍太鼓」も有名。
グルメ: 「龍」のつくラーメン店が並ぶ「ドラゴンロード」が有名。また、石炭をモチーフにした「黒ごまスイーツ」など、炭鉱の歴史を活かした特産品開発も行われている。
今回お話を伺った方
志免町役場 まちの魅力推進課 ご担当者様 志免町の魅力を内外に発信する広報・ブランディングのプロフェッショナル。町の歴史、特に炭鉱遺産に対する深い情熱を持ち、著者に対して町独自のストーリーを丁寧に伝えてくれました。今回の取材では、単なる行政情報の提供に留まらず、現地の資料館や新設ホールまで自ら足を運んで案内してくださるなど、誠実で温かいホスピタリティが印象的でした。
筆者プロフィール
福本 拓元(ふくもと たくゆき) 株式会社ニホンノチカラ 代表取締役。1975年愛媛県生まれ。18歳で渡米し、異文化の中で「日本の価値」を再認識。帰国後、株式会社ユーグレナの創業に参画し、取締役として東証一部(現プライム)上場に貢献。「ミドリムシで地球を救う」活動に20年捧げた後、2025年、原点である地方創生を目指し「ニホンノチカラ」を創業。全国1,718市町村を巡り、地方の宝を発掘する「1718ニホン探索」を継続中。














