観光の聖地・熱海の「次なる一手」と構造改革への挑戦

熱海市(静岡県)ーー1718ニホン探索(8/1,718)

今回は馴染みのある熱海市へ訪問

日本の再生を信じ、全国1,718の市町村を巡る「1718ニホン探索」。8箇所目に訪れたのは、私にとっても馴染みのある、まさに「地元」という感覚を持っている場所、静岡県熱海市です。

新幹線で品川からわずか40分弱。かつて「おじさんの街」「社員旅行の街」と呼ばれ、バブル崩壊後に衰退の危機に瀕したこの街は、今や若い女性や家族連れ、そしてセレブ層までもが闊歩する、日本でも稀有なリブランディングの成功例として知られています。しかし、住人として、そして起業家としてこの街を見つめる時、華やかな賑わいの裏側にある「本当の課題」と、それを打破しようとする行政の熱い挑戦が見えてきました。

訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。

Yo, 135号線を南下 トンネル抜けりゃ広がるパノラマ
伊豆の玄関口、ここがどこだか知ってるだら?
坂の街、湯の街、俺らの誇り。
It's ATAMI City. Check it, Mic check.

東京から新幹線でわずか数十分
降り立てば広がる 磯の香りと気分
サンビーチを横目に 歩く親水公園
「お宮の松」の前で 交わす約束と合縁
坂道だらけの街並み まるで人生
登りきった先に 見える青は神聖
MOA(エムオーエー)でアートに浸り
熱海城から見下ろす 街の灯りと輝き
疲れりゃ「七湯(ななゆ)」で ひとっ風呂浴びて
心と体の芯まで 全部さらけだして
レトロな喫茶店 熱海プリンの列
新旧混ざり合う この街のバイブスは激烈

おいでよ熱海へ 湯けむりの向こう側 
相模湾の青と ダイダイ色の夕空 
いいだら?この街 ゆっくりしてきゃいいじゃん 
花火が夜空を 彩る瞬間(とき)を 
ATAMI, My hometown. 変わらぬ愛を 
ATAMI, My hometown. 共に歩もう

腹が減ったら まずは市場へ直行
アジの干物に 金目鯛 鮮度は最高
「うめえら?」って聞くまでもない この味
地元(ジモティー)も唸る 海の幸のオンパレードだし
来宮(きのみや)の神社 大楠(おおくす)にパワー
一周回れば 寿命が延びるっていう噂
「だもんで」みんな ここへ集まるんだ
古き良き「芸妓(げいぎ)」の文化も まだ死んじゃいねえだ
冬でも上がる花火 スタジアム状態の湾内
音の反響 鼓膜揺らす 他じゃ味わえない
昔から今へ 繋ぐこのバトン
熱海市民の誇り 鳴り響くサウンド

おいでよ熱海へ 湯けむりの向こう側 
相模湾の青と ダイダイ色の夕空 
いいだら?この街 ゆっくりしてきゃいいじゃん 
花火が夜空を 彩る瞬間(とき)を 
ATAMI, My hometown. 変わらぬ愛を 
ATAMI, My hometown. 共に歩もう

(穏やかな波の音)
夜の平和通り、仲見世、シャッターの音
でも明日の朝には また活気が戻る
一度来りゃわかる この街の良さ
また来るだら? 待ってるもんで。
Peace out, Atami City.
Keep it steaming.

観光特化型都市の宿命と「人口の壁」

今回、熱海市役所の観光経済課責任者の方とお話しし、まず突きつけられたのは「人口減少」の現実でした。熱海の人口は約3万2千人。観光客がこれだけ溢れているにもかかわらず、人口は減り続け、高齢化率は約48%に達しています。

市内のリゾートマンションやホテルから眺める海は絶景ですが、その景観を支えるのは、かつての大型旅館跡地に建った別荘型マンションです。私自身、この街が大好きで「四番目の地元」と公言していますが、行政側から見れば、私のような「二拠点居住者」は、昼間の賑わい(関係人口)には貢献できても、住民税という形での定住人口にはなり得ていない。

特に課題なのは、隣接する函南町などに若者が流出していることです。「働くのは熱海、住むのは函南」。これでは、熱海の活力が域外へ逃げてしまう。観光地としてこれ以上のキャパシティ拡大が難しい今、熱海は「いかに人を増やすか」から「いかに一人ひとりの消費額と満足度を高めるか」という、量から質への転換期に立っています。

高台(熱海城)から眺める熱海市街地

「専門家」に未来を託す、行政の覚悟

対談の中で、私が最も感銘を受けたのは、熱海市の構造改革への強い意志です。

これまで、日本の行政の弱点は「数年ごとの異動」にありました。専門的な知見が必要な観光政策でも、担当者が数年で入れ替わってしまう。熱海市はこの「官の限界」を認め、2025年4月に「熱海観光局(DMO)」を設立。トップにはJTB出身の民間人を公募で起用しました。

さらに、2026年度からは宿泊税を財源とし、予算も権限もこの観光局へ大胆に移管していくといいます。「行政は黒子に徹し、プロに任せる」。このスピード感と覚悟こそ、私が「ニホンノチカラ」で目指したい地方創生の理想形の一つです。

観光客で賑わう熱海駅

駅前商店街は食べ歩きの聖地

「まちづくり」を横展開できるリーダーを

かつて熱海復活の象徴だった「リノベーションまちづくり」や「マチモリ」の活動。これらが点から面へと広がり、銀座商店街は活気を取り戻しました。しかし、現在はその成功体験を市全体へどう「横展開」していくかが問われています。

地価の高騰で若者の起業ハードルが上がり、人手不足で旅館の運営もままならない。住宅政策の規制緩和や、若い働き手が住みたくなるような「職住接近」の環境整備など、やるべきことは山積みです。

私はかつてユーグレナで、ミドリムシという「小さな可能性」を世界に解き放つために奔走しました。今、熱海に必要なのは、バラバラに動いている「観光」「住宅」「産業」というピースを、一つの「持続可能な街」として繋ぎ直す強力なリーダーシップです。

この美しい熱海が、日本を代表する「持続可能な自立型都市」へと進化するのか。その最前線で、私も一人の「熱海人」として、見守っていきたいと強く思いました。

訪問日:2026年2月6日(金)

熱海の中心的スポット「サンビーチ」

ACAO FOREST頂上から眺める相模湾

熱海市の情報まとめ

静岡県の東端に位置し、海と山に囲まれた人口約3.2万人の温泉観光都市。古くから「徳川家康が愛した湯」として知られ、明治以降は文豪や政財界の要人の別荘地として発展しました。バブル崩壊後の衰退を乗り越え、現在はメディア露出やSNS映えを意識した戦略、女性ターゲットのプロモーションにより、若年層が訪れる街として劇的な復活を遂げました。

産業:観光業が全産業の大部分を占める三次産業特化型。工業はほぼ皆無ですが、リノベーションによる新店舗や、地域商社による独自の特産品開発が活発です。

文化・観光:熱海サンビーチ、MOA美術館、熱海城、起雲閣などの名所が点在。また、年間を通じて開催される「熱海海上花火大会」は街の象徴となっています。

グルメ:相模湾の新鮮な「地魚」や「干物」に加え、「熱海プリン」に代表される新しいスイーツ文化が融合。老舗からモダンなカフェまで多様な食が楽しめます。

今回お話を伺った方

熱海市役所 観光経済課 責任者 熱海市の観光行政を支える実務のリーダー。秘書課などを経て現職。現場主義を貫き、民間主導の観光推進体制(DMO)への移行や宿泊税の導入など、熱海の未来を見据えた大胆な構造改革を推進している。

筆者プロフィール

福本 拓元(ふくもと たくゆき) 株式会社ニホンノチカラ 代表取締役。1975年愛媛県生まれ。18歳で渡米し、異文化の中で「日本の価値」を再認識。帰国後、株式会社ユーグレナの創業に参画し、取締役として東証一部(現プライム)上場に貢献。「ミドリムシで地球を救う」活動に20年捧げた後、2025年、原点である地方創生を目指し「ニホンノチカラ」を創業。全国1,718市町村を巡り、地方の宝を発掘する「1718ニホン探索」を継続中。