火山の恵みと伝統が息づく「六つの温泉郷」

東伊豆町(静岡県)ーー1718ニホン探索(4/1,718)

今回の訪問地は東伊豆町

「1718ニホン探索」の旅。今回私が訪れたのは、伊豆半島の東海岸に位置する静岡県東伊豆町です。

車を走らせ、海岸線沿いの国道を下る。窓の外には、伊豆半島の成り立ちを象徴するダイナミックなジオパークの絶景が広がります。切り立った崖と、どこまでも青い海。この美しい景観そのものが、東伊豆町の大きな財産であることを肌で感じながら、町役場へと向かいました。

訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。

「火山の贈り物」を分かち合う、六つの個性

東伊豆町の特徴を尋ねると、産業観光課のご担当者様は開口一番、「ここは六つの温泉郷から成り立っているんです」と教えてくれました。

大川、北川、熱川、片瀬、白田、稲取。一つの町の中に、これほどまでに個性豊かな温泉地が共存しているのは、全国的にも珍しいことです。ご担当者様が「南から来た火山の贈り物」と表現された通り、この地の温泉は火山性地形の恩恵そのもの。特に熱川温泉では、100度近い源泉から立ち上る湯煙が温泉やぐらを包み込む、幻想的な光景を目にすることができます。

かつては個別の村々として発展してきた歴史があるからこそ、それぞれの温泉郷には、独自の文化と「おもてなし」の精神が今も色濃く残っています。「町全体を盛り上げよう」という気運のもと、最近では台湾との交流やライトアップイベントなど、新しい観光資源の開発も活発に行われているそうです。

断崖にそびえる熱川温泉

江戸の礎を築いた「石」と、母の愛がつなぐ「雛」

東伊豆町の魅力は温泉だけではありません。歴史を紐解くと、江戸時代との深い繋がりが見えてきます。

江戸城築城の際、この地の強固な「伊豆石」が海を渡り、江戸へと運ばれました。その歴史を今に伝えるのが「お石引」というお祭りです。何十トンもの巨石を引き歩く勇壮な姿は、当時の人々のエネルギーを現代に蘇らせます。

また、稲取地区が発祥とされる「雛の吊るし飾り」も忘れてはなりません。高価な雛人形を揃えられなかった時代、娘の幸せを願って古布で縁起物を手作りした母や祖母の優しさが、この美しい伝統を生みました。私が訪れた時期、素盞鳴(すさのお)神社の118段もの階段に雛人形が並ぶ圧巻の景色を想像し、地域が守り抜いてきた文化の重みに胸が熱くなりました。

伊豆半島ジオパーク独特の海岸線

6つの温泉郷の一つ北川温泉

取材を終えて

取材後、私は教えていただいた「細野高原」へと足を運びました。 目の前に広がるのは、東京ドーム約20個分という広大なススキの原野。毎年行われる「山焼き」によって守られてきたこの景色は、まさに人と自然が共生してきた証です。

東伊豆町は、ただの「観光地」ではありません。そこには、火山の恵みに感謝し、伝統を誇り、そして新しい時代を切り拓こうとする人々の確かな営みがありました。

「次はぜひ、サフィール踊り子に乗って、ゆっくり温泉に浸かりに来てください」

別れ際のご担当者様の笑顔に、私は再訪を強く誓いました。

訪問日:2026年2月4日(水)

ススキの原野が広がる「細野高原」

東伊豆町の情報まとめ

静岡県伊豆半島の東岸中央部に位置する、人口約1万1,000人の町。相模灘に面した海岸線と天城連山の急峻な山々に挟まれた「ジオパーク」の恩恵を受ける。大川・北川・熱川・片瀬・白田・稲取の「東伊豆町六温泉郷」を有し、古くから湯治場として発展。江戸城築城石の産地としての歴史や、日本三大吊るし飾りの一つ「雛の吊るし飾り」など、豊かな伝統文化を今に伝えている。

産業: 観光業が主軸。水産業ではブランド魚「稲取金目鯛」が全国的に有名。農業ではニューサマーオレンジ、はるみ、はるか等の柑橘類栽培が盛んで、近年は特産品開発や創業支援による飲食店の活性化にも注力している。

文化・観光: 118段の石段に雛人形が並ぶ素盞鳴神社の「雛の吊るし飾り祭り」や、江戸時代の石引きを再現した「御石曳」が有名。広大な面積を誇る「細野高原」のススキや山焼き、熱川バナナワニ園などのレジャー施設も充実。

グルメ: 稲取金目鯛の煮付けや刺身は外せない逸品。また、地元で愛されるB級グルメ「肉チャーハン」や、特産の柑橘を使用したサワー、ジャム等の加工品も人気を博している。

今回お話を伺った方

東伊豆町役場 産業観光課 ご担当者様 東伊豆町の観光振興および地域活性化の最前線に立つ。町の広報・ブランディングだけでなく、地域おこし協力隊の受け入れ支援や、農協・大学・民間企業と連携した特産品PRプロジェクトなど、多岐にわたる施策を牽引。地元愛に溢れ、外部からの移住者や起業家への支援にも積極的に取り組んでいる。

筆者プロフィール

福本 拓元(ふくもと たくゆき) 株式会社ニホンノチカラ代表取締役。愛媛県新居浜市出身。株式会社ユーグレナ共同創業者として東証プライム上場を果たす。2026年より地方創生を目指す起業家として、「1718ニホン探索」プロジェクトを開始。全国1,718市町村を自ら回り、地域のリーダーとの対談を通じて、日本の可能性と課題を世界に発信している。