湧水の恵みとコンパクトな強さ―静岡県清水町で見つけた「暮らしやすさ」の真髄

清水町(静岡県)ーー1718ニホン探索(11/1,718)

湧水の町「静岡県清水町」

「ここは、本当に良い町だな……」 取材を終え、柿田川の透き通るような湧水の画像を見つめながら、私は心からそう呟いていました。

今回の「1718ニホン探索」で訪れたのは、静岡県駿東郡清水町。面積わずか8.81平方キロメートルと、静岡県で最も小さな自治体です。しかし、そこには私の想像を遥かに超える、エネルギーに満ちた「ニホンノチカラ」が凝縮されていました。

訪問先のオリジナルソングを作っています。ぜひブログと共にお楽しみください。

富士山がくれた、命の源泉

清水町を語る上で欠かせないのが、日本三大清流の一つ「柿田川」です。国道1号線という大動脈のすぐ脇に、突如として現れる深い緑と青い水。1日に約110万トンという、信じられないほどの量の水が、富士山から数十年かけて地中を旅し、ここで一気に湧き出しています。

実は今回、近隣の市町村からは「清水町の湧水を分けてもらっている」という話も聞き、熱海に拠点を持つ私自身も、実は清水町の水を口にしていたことを知りました。この水は単なる観光資源ではなく、周辺自治体を含めた生活の礎であり、そしてグローバルに展開する「臼井国際産業」や「木村鋳造所」といった力強い企業の活動を支える、産業の心臓部でもあったのです。

日本3大清流柿田川から溢れ出る湧水
*画像提供:静岡県清水町

小さな町に詰まった「利便性」という宝

企画課の担当者の方々とお話しして驚いたのは、その「人口密度の高さ」です。県内一小さな町でありながら、人口密度は県内トップ。町全体が非常にフラットで坂がほとんどなく、自転車や徒歩でどこへでも行ける。この「コンパクトさ」こそが、清水町の最大の武器だと感じました。

町内には47カ所もの医療機関があり、特に「静岡医療センター」のような大規模病院まで揃っている。さらには「サントムーン柿田川」のような大型商業施設から、地元の台所「食遊市場」まで、生活に必要なすべてが半径数キロ圏内に収まっています。

「どこに住んでも徒歩圏内でお買い物に困ることはありません」と誇らしげに語る担当者の方の言葉に、私は深く頷きました。私がかつてアメリカで生活していた頃、何をするにも車で広大な距離を移動しなければならなかった経験と比較しても、この日本の「コンパクト・シティ」の完成形のような姿は、世界に誇れる一つのモデルではないでしょうか。

丸池公園は、春は桜の名所に。
*画像提供:静岡県清水町

境界を越え、共に生きる

取材の中で、清水町の持つ「包容力」も強く感じました。この町には大企業の本社があり、古くから多くの外国人労働者の方々が地域を支えています。

ともすれば「壁」ができがちな多文化共生についても、清水町では町主体で各国文化を取り入れたフェスティバルを開催するなど、積極的に溶け込む努力を続けています。「町の産業を支えてくれている、同じ生活者ですから」という言葉には、私がアメリカで学んだ多様性の本質、そして日本人が本来持っている「和」の精神が共存しているように感じられ、胸が熱くなりました。

人口減少という波を真正面から受け入れつつ、今ある豊かさをどう持続させていくか。清水町が掲げる「暮らしやすさ」への追求は、決して派手ではありませんが、地に足のついた、最も力強い日本再生へのヒントが隠されている気がしてなりません。

帰り際、おすすめされた「食遊市場」が閉店間際で見られなかったのは残念ですが、それはまたこの美しい湧水の町を訪れるための、最高の「宿題」となりました。

柿田川公園は雨中の散策となりました。次回は晴れの日に。

清水町の情報まとめ

静岡県の東部、伊豆半島の付け根に位置する、人口約3万人の町。県内で最も面積が小さい自治体ながら、人口密度は県内一を誇る。富士山の伏流水が湧き出る「柿田川」を擁し、豊かな水資源を背景にした産業と生活が調和している。地形が極めて平坦で、医療施設や商業施設がコンパクトに集積しており、抜群の生活利便性を誇るのが特徴。

産業: 自動車部品製造で世界シェアを持つ「臼井国際産業」や、高度な鋳造技術を誇る「木村鋳造所」など、グローバル企業の本社が位置する。柿田川の豊富な湧水を利用した製造業が盛ん。

文化・観光: 国指定天然記念物「柿田川」が最大の観光名所。日本三大清流の一つに数えられ、ミシマバイカモや鮎の姿も見られる。また、サッカー王国静岡らしくサッカー熱も高く、地元企業がプロチームを支える文化が根付いている。

グルメ: 湧水を利用して作られる「豆腐」や、地元の鮮魚・農産物が集まる「食遊市場」が有名。特に湧水で仕込まれた蕎麦や和菓子は、雑味のない澄んだ味わいが楽しめる。

今回お話を伺った方

企画課 担当者の皆様 清水町の企画担当として地域活性化に尽力されています。自らの町を「暮らしやすさナンバーワン」にすることに情熱を注ぐ、郷土愛あふれる素敵なお二人でした。

筆者プロフィール

福本 拓元(ふくもと たくゆき) 株式会社ニホンノチカラ 代表取締役。1975年愛媛県生まれ。18歳で渡米し、異文化の中で「日本の価値」を再認識。帰国後、株式会社ユーグレナの創業に参画し、取締役として東証一部(現プライム)上場に貢献。「ミドリムシで地球を救う」活動に20年捧げた後、2025年、原点である地方創生を目指し「ニホンノチカラ」を創業。全国1,718市町村を巡り、地方の宝を発掘する「1718ニホン探索」を継続中。